2015-06-16

(ヘ) 労働基準法は、非現業公務員に対しては準用されるにとどまる(国家公務

員法附則第一六条改正附則昭和二三年一二月三日法第二二二号第三条)けれども、

債権者林野庁所属するいわゆる現業公務員には、労働基準法全面的適用

れている。(公労法第四〇条第一項により国家公務員には労働基準法適用除外を定

めた前記国家公務員法附則第一六条、準用を定めた改正附則第三条がいずれも適用

排除されている。)

 したがつて、債権者らの労働関係については労働基準法により就業場所従事

すべき業務等をはじめ、賃金労働時間、その他の労働条件を明示して労働契約

締結すべきことが定められているのである。(同法第二条、第一三条、第一五条

施行規則五条

 このことは、国家公務員法債権者ら公労法適用者についてはその労働条件は労

使対等で決すべきこととし(労働基準法二条第一項)、団体交渉による私的自治

に委ねているものであり、その関係が私法的労働関係であることを明らかにしたも

のとみるべきである

(七) 以上の次第で、公労法の適用される五現業公務員労働関係実定法上か

らも、労働関係実定法からも私的自治の支配する分野であつて、本件配置換命

令は行政処分執行停止によるべきでなく仮処分に親しむ法律関係と解すべきであ

る。

第四、訴訟要件に関する答弁

一、本件仮処分申請は不適法であるから却下さるべきである

 債権者らが挙げる本件配置換命令は、行政事件訴訟法第四四条にいう「行政庁

処分」に当り、民事訴訟法上の仮処分により、その効力の停止を求めることは許さ

れない。

 債権者林野庁職員の勤務関係は、実定法公法関係として規制されているの

で、同じく公労法の適用をうけるとはいえ、三公社の職員の勤務関係とはその実体

も、実定法の定めも本質的な差違がある。すなわち、 林野庁とその職員間の法律

関係を考える場合、同じく公労法の適用をうける三公社独立企業体として制度

化され、その企業公益的、社会的および独占的性格から特に公社として私企業

との中間に位置せしめられているのとは異り、五現業においては公労法の適用をう

けるとはいえ、国家機関が直接その業務を行うものとして林野庁等の行政機関を設

けて国家自らその業務を執行し、その職員は国家公務員であるので、この差異は無

視されるべきではなく、次に述べるとおり、林野庁職員と三公社職員との勤務関係

には本質的差異が認められ、実定法は、林野庁職員を含む五現業公務員の勤務関

係を公法関係とし、勤務関係における配置換命令行政処分規律している。以下

項を分けて詳述する。

二、公労法や国家公務員法上、林野庁職員の勤務関係が具体的にどのようなもの

あるかは、立法政策上どのように規律されているかによるのであるから、これを詳

細に検討することなく、その勤務関係直ちに私法関係であるとすることは、林野

庁職員の勤務関係についての実定法の定めを無視するものであつて正当でない。

 周知のとおり、一般公務員についての任免、分限、服務および懲戒等の勤務関係

は、すべて法律および人事院規則によつて規律されており、任命された特定個人と

しての公務員は、このような法関係の下に立たしめられるものであり、またこのよ

うな公務員に対する任免、分限、服務および懲戒等に関する行政庁行為が国の行

機関として有する行政権行使であり、行政処分であることは、現在多くの判例

および学説の認めるところであつて異論をみない。

 ところで公労法第四〇条は、林野庁職員を含む五現業関係の職員について、国家

公務員法の規定のうち、一定範囲のもの適用除外しているが、一般職公務員であ

るこれら職員の勤務関係の基本をなす任免、分限、懲戒保障および服務の関係

ついては、極く限られた一部の規定がその適用を除外されているだけで、国家公務

員法第三章第三節の試験および任免に関する規定(第三三条~第六一条)、第六節

の分限、懲戒および保障に関する規定(第七四条~第九五条)、第七節の服務に関

する規定(第九六条~第一〇五条)の殆んどは、一般公務員場合と同様に林野庁

職員にも適用され、またこれらの規定にもとづく「職員の任免」に関する人事院

則八-一二、「職員の身分保障」に関する人事院規則一一-四、「職員の懲戒」に

関する人事院規則一二-○、「不利益処分についての不服申立て」に関する人事院

規則一三-一、「営利企業への就職」に関する人事院規則一四-四、「政治的

為」に関する人事院規則一四-七、「営利企業役員等との兼業」に関する人事院

規則一四-八等も同様に適用●れているのである。もつとも、林野庁職員について

は、公労法第八条一定団体交渉の範囲を法定し、その限度において当事者自治

の支配を認めているが、そのことから直ちに林野庁職員の勤務関係の法的性格を一

般的に確定しうるものではなく、右のような国家公務員法および人事院規則の詳細

規定が、右勤務関係実体をどのようにとらえて法的規制をしているか検討

れなければならないのであるしかして、右規律をうける林野庁職員の勤務関係

は、公労法第四〇条によつて適用除外されているものを除き、一般公務員と同様の

公法規制をうけた勤務関係というほかはないのである

三、林野庁職員の勤務関係公法上の勤務関係であることは、一般に私法関係であ

るとされている三公社の職員の勤務関係と対比することにより、更に明らかとな

る。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん