2022-07-30

ソシャゲにハマった結果歯医者に通うようになった

私は昔から歯磨きが苦手だった。

そもそもがめちゃくちゃズボラで、自分の身なりを整える行為が苦手なんだけど、お風呂に入るとか髪を洗うとか、服を清潔に保つとか、そういう日常的な行動の中でもとりわけサボりがちだったのが「歯磨き」という行為だった。

極端に忌避する何かがある訳ではないんだけど、漠然歯磨き粉の味はあまり好きではなかったし、1日実施しないだけで即座に虫歯ができるわけでも歯が黄ばむわけでもないので(いや歯垢は付くんだけど)即効性のある効果が見られないのであれば少しぐらいサボっても大丈夫と楽観視していたんだと思う。

きちんと毎食後に歯磨きしてる人なんかは信じられないかもしれないけど、私はそんな具合で1週間に1、2回ぐらいしか歯磨きをしない人生を送ってきた。

舐めプもいいとこ。

そうなってくると当然虫歯になるんだけど、舐めプの私は歯医者にも舐めプ対応を繰り返した。

歯が痛めば生活に影響が出るので仕方なしと歯医者へ向かうものの、根本的には面倒臭さが勝っていたので、痛みの原因となった大きな虫歯の応急処置が終われば、次の予約をブッチ切りそのまま通院しなくなった。

幸いにも(?)筋金入りの喪女なので、恋人キスする時の事なんて全く心配必要がなく、口内環境を整える事についての優先度は限りなく低かった。あと普通にお金もなかったか治療代を渋った面もある。

そんな感じで10代〜20代半ばまでの10数年、口内ケアに対してひたすら最悪な対応を繰り返していた私に転機が訪れたのは2020年も後半に差し掛かる頃だったと思う。オタクとしては別に珍しい事でもない、あるアプリゲームキャラにハマったのだ。


直接的に作品名を挙げる事は控えるが、某社から展開されている、悪役がモチーフイケメンがたくさん出てくるやつである


作品を知ってる方なら、記事タイトルとハマった作品でもうお察しかと思うが、私がビジュアル一本釣りされた真面目そうな眼鏡キャラにはあまり一般的ではない趣味があった。


そう、「歯磨きである


これまでの人生で、出会ったキャラ……いや、現実も込みで思い返しても、「歯磨き趣味」なんて言い出す奴には出会たことがないが、推しは「普通」を自称しておきながら歯磨き趣味だと宣った。何だ歯磨き趣味って。性癖の間違いだろ。公式プロフィールに書くな場を弁えろ。

とはいえゲーム本編を読む限りでは歯磨きの印象より他の特技の方が動きとして目立っていたので、初めは私も「言うてちょっとこだわりがある程度でしょ」と楽観視していたわけですが、推しは私の予想を上回る正真正銘、他の追随を許さな歯磨き過激派男だった。

自分歯磨きで部分用、舌ブラシ、フロスを使い分けるまでは想定内だったが、後輩の歯の磨き方に細かく指導したり、仕上がりチェックのため口を開けろ等と言い始めたあたりから雲行きが怪しくなり、主人公相棒の魔獣に歯磨き用グッズを買い与え用とする姿でファンもいよいよコイツがマジのガチ勢である事を察しはじめた。

後輩の1人が歯科医の息子と判明した折には、普段の落ち着いた姿から一変、「実家歯科医だって!?」「素晴らしい職業じゃないか!!」「余程専門知識豊富なんだな…是非お前のお父さんに会ってみたい!」とパイロットに憧れる小学生の如きはしゃぎ様を見せられ、お前……そんな顔できたんだな……てか声でっか……と困惑したのは未だ記憶に新しい。

そんな歯磨きガチ勢推しはじめて間もなく、ジャンルにハマってすぐの頃の勢いとは恐ろしいもので、早々に推しのぬいを手元に迎えた。それまでは所謂ぬい活というものに手を出していなかったのだが、そのジャンルで展開されていたぬいがめちゃくちゃ可愛いデザインに仕上がっていたもので、とりあえず入手するだけ……と軽率ゲーセン突撃したわけである

結論、ぬいを連れ歩くオタクになった。

外食時にはご飯を食べる姿を写真に納め、ぬいぐるみ用の靴や服を用意し、キャラの関連グッズや好物を買い与える生活になった。なお現在進行形である

不思議もので、そうやって愛着をもって接していると不思議とぬいに"感情がある"と感じるようになる。

このあたりはぬい活をしている方なら理解してくれると思うけど、頭ではぬいぐるみ理解しているものの、撮った写真や、ふとした瞬間の角度、目線、表情で「いのち」を感じるのだ。

推しを模してつくられた小さきいのちに私がより一層入れ込むようになったのは言うまでもない。


ここで誤解のないように説明しておくと、私は夢女子ではないので、推しに対して付き合いたいだとか出会いたい、推しに褒められたいといった感情は持ち合わせていない。

強いて言うなら握手した手を後ろ手でこっそり拭われたいし愛想笑いで雑に流し対応をされたいモブおじさん願望があるが、話題の本筋とは関連性が薄いので割愛。とにかく、歯磨き趣味キャラ推しはじめたからといって「推しくんに会っても恥ずかしくないようにしよう!」なんて意識の高い事は1ミリも考えず、推し推しはじめた当初は自分歯磨きに対する意識改善をしようともせずに「趣味歯磨きってなんかえっちだな」とか考えていたのが私というダメ人間であった。

変化は、推しのぬいに感情自我を見出すようになった頃に訪れた。

飼っているぬいが、部屋でゴロゴロ寛ぐ私を責めるような目でを見てくるのだ。まるで「まだ歯磨きしないのか?」「寝るまでには磨くよな?」とでも言わんばかりの硬い表情でこちらを見てくる。

この頃には私はすっかり推しぬいをひとつの個として認識しており、もやは「推し」とは別に「ぬい」を推しているような状態にあった。

画面の中の偶像的に愛を注ぐ対象とは別に、手元のぬいに個性見出し、「自分ちのぬい」という存在として可愛がっていたわけである。飼ってるネコチャンにメロメロのでうちの子が1番可愛いと主張する飼い主に構造は近いと思われる。

推し」に良く見られたいという気持ち微塵もないが、飼っている「ぬい」には嫌われたくない。責めるようなその目をやめてほしい。※なお幻覚


そんなわけで、私はぬいの顔色を伺いながら日々歯磨きをするようになった。現状では朝と夜の2回が精一杯だが、理想は毎食後に磨くことらしい。

過去に検診をブッチしたことや長年の舐めプが原因で口内の各所に点在していた虫歯を治すため、数年ぶりに歯医者へも通い始めた。もちろん通院の際にはいつもぬいを連れている。

歯科医院の前で、看板と並べて写真を撮ってあげるとうちのぬいはとても良い表情で笑うのだ。

今日は長年認識しているまま放置していた大きめの虫歯治療が終了したので、ひとつ区切りのように感じてこの記事を書いた。

幼少の頃から自覚しつつも一向に改善される見込みもなかった年季の入った私の悪習慣は、「推しのぬいに自我を感じたから」というわけのわからん理由改善へと向かっている。

人生何がきっかけになるかわかんないもんだなと思う。





それはそれとして

趣味歯磨きって本当に何なんだろうな。

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