2019-09-12

締切を守らない相方漫画を描いた話

少し愚痴を言わせてくれ。

特定は怖いので、時期とか数字かにフェイクを入れて話していく。

2年前の冬。私の所属する漫研で部誌を出すことになった。部員が2~3人ずつのグループに分かれて作る、グループごとに何を描いても自由な合同誌だ。

私はそのグループ分けの日は病院に行く用事があったため、要望だけ伝えて欠席した。

グループ分けにおいて、部員それぞれが己のスペック希望を伝えて話し合ったらしい。「背景苦手」とか「普段は物書き」とか。私の要望は「漫画を描きたい。原作担当でも作画担当でもいい」と伝えた。

おそらくそれを加味してくれたのだと思う。結果、私はとある部員(Aとしておく)と2人組で漫画を描くことになった。Aは漫画を描いたことがなく、イラストを描くのが得意だと言った。ほぼ初対面なほどあまりしたことが無かったが、私がネーム、Aが作画というのが二つ返事で決まった。

その後、漫研の部室で、私が頭の中で練っていた大体の流れをAに説明し、Aはそれに賛同してくれた。私は自宅に帰り、ウキウキしながらネームに取り掛かった。10ページほどの短編だが、Aと相談したその日のうちにネームを完成させてLINEで送った。

Aは翌日、私のネームにOKを出してくれた。セリフの調整や服装などのやり取りも終わり、これで私の仕事は終わった………と、思っていた。

私はもっとAのことを知るべきだったのかもしれない。Aが時間ルーズなことを全然知らなかったのだ。

Aも私もあまり漫研の部室に顔を出すタイプではなく、互いに顔を合わせることは殆どなかった。

なので、今私たち漫画の進捗がどうなっているのか把握出来なかった。そのうえ、Aはネーム確認した日以降、LINEを全く見ない。未読無視されるのはあまりいい気分ではなかったが、そういうタイプなのだろうと思って放っておいた。ネームに書かれていること以外の質問提案も無いし、順調に進んでいるものだと思っていた。

そんなある日、私はたまたまAのTwitterアカウントを見つけた。そこでAは毎日どころか毎時のように呟いていた。

LINE無視Twitterは常時運転かよ、と少しイラついたが、それよりも驚いたのはアップしているイラストだ。Aはかなり筆が早いことが分かった。ラフアナログも多かったが、結構な頻度でオリキャラや、私の知らないゲームキャラの絵を描いていたのだ。

そのイラストの中には、私と合同で作る漫画の一部分もあった。かなり序盤のシーンだったが、確かに作業を進めてくれているみたいだな、とこのとき私は安心していた。

だが、事件(?)が起きたのは、漫研全体で決めている部誌の提出締切日。同じ漫研特に仲が良い私の友人(Bとしておく)から連絡が来た。

内容は、意訳すると『Aが締切に間に合わなかった』『締切は5日間延長』『○○ちゃん(=私)もAを手伝ってあげた方がいい』『漫研の部室内で○○ちゃん(=私)が嫌われかけている』といったようなことだった。

Aが締切に間に合わなかったのは衝撃的だったが、それよりも、私が漫研部員から嫌われかけているというのに驚いた。

Bの話によると、グループ内でネーム/作画役割分担したのは私たちだけらしく、他のグループではそれぞれが数枚ずつ作品を作って15ページ前後のものに仕上げるのだとか。

私たち役割分担を知った漫研部員たちが「Aの負担が多すぎる」「Aが可哀想」「Aはネーム担当(=私)に文句言うべき」などと話しているのを、Bが聞いて私に忠告してくれたということだ。

色々と信じ難いことだらけだったが、私はその日は特にやることも無かったので、急いでAにLINEで連絡した。

「Aさん、何か手伝えることあるベタとかトーンとか、なんでもいいから言って!」と。

すると、この時ばかりはAはすぐに返信した。「部室に居るから来て欲しい」と。幸い私は学校の近くに寮を借りていたのですぐに向かうと、Aは人物の線画をようやく終えた状態だった。

Aはデジタル派で、液タブを用いてクリスタ作業をしていた。私は板タブで無料ソフトしか持っていなかったため、Aに合わせてクリスタ期間限定無料版をインストールし、原稿airdropで受信して、セリフ打ち込みやトーン貼りを手伝った。使い慣れていないソフトに難航したが、それでも適宜使い方を調べながらなんとか作業を進めた。

Aは思ったよりも自由奔放な人間で、締切を過ぎているにも関わらず、作業中にも別のイラスト落書きしたり、Twitterを覗いたりと好きに過ごしていた。私は昔からビビりな性格で、課題宿題は締切日よりかなり余裕を持って提出しなければ落ち着かないタイプだったので、Aの行動が理解できなかった。

Aが自虐的に「私の絵はココがダメだ……」などと言う度に、「そんなことない!私はすごくいいと思う」などと言って励ましていた。今なら言えるが、私はAの絵のタッチが嫌いだった。そのうえ、そんなやり取りがその日の作業中頻繁に行われた。八方美人とは程遠い私にとって、この日は苦痛だった。

しかし、この日の頑張りあってか、作業はかなり進んだ。セリフも入れたし、トーンもベタも大体貼った。Aも背景やらその他の線画を描き終えた。あとは私の担当した部分のレイヤーを繋げればめでたく完成──と、思われた。パソコン上でAのメールアドレスを教えて貰い、その場でデータ送信した。そしてAと別れた。

その日の夜も私は家で残りの作業をし、終えた分をまたメール送信した。延長した締切日のうち、私はこの日以外はバイト漬けでAの作業に付き合えない。私が手伝える部分は今日中に終わらせたかった。

しかし、Aからの返信は一向に来なかった。

表紙にペンネームを入れないといけないので、「私のペンネームは□□でお願いね」ともLINEで伝えておいたが、返信無し。

次の日にAのTwitterを覗くと、Aは友人と遊びに出かけていたらしい。その次の日は、また別のところに遊びに行っていたのだとか。

私は本当にAの行動が理解出来なかった。部員みんなで作る部誌の締切に遅れ、部長に締切を延長してもらったうえで、まだ完成していない作品を残してよくそんな所にいけるものだなと。

断っておくが、私は最初ネーム内容の相談をしたその日のうちにネームをAに渡した。その日から締切日までは2ヶ月以上もあったのだ。なのにAは原稿を提出できず、負担が大きいと他部員に思われ、私が嫌われる。こんな理不尽なことがあってたまるか。

結局、Aは締切日の午前三時頃に提出できた……らしい。Twitterでその呟きを見つけた。

一応一段落したみたい。と安心していたのも束の間。数日後、AからLINEが来た。

「○○さん(=私)のペンネームって何?表紙に何も書かなかったか部長に指摘された」

…………は?

あなた、一段上の私のメッセージが見れていないの???

私は一応もう一度「私のペンネームは□□だよ」と伝えた。LINE画面上では、

私:私のペンネームは□□でお願いね

A:○○さん(=私)のペンネームって何?表紙に何も書かなかったか部長に指摘された

私:私のペンネームは□□だよ

こんな感じだ。本当に訳が分からない。

そして最も訳が分からなかったのは、出来上がって刷られた部誌を見たときだ。

かに原作は私の漫画だが、セリフは所どころ違うし、トーンも私の貼ったものではなかった。──つまり、Aは私の送ったデータを使っていなかったのだ。いや、もはや見てすらいないのかもしれない。

メールが届かなかったかもしれないと思われるが、それは絶対にありえない。A自身が私のパソコンに直接メールアドレスを打ち込んだし、1回テストとして送ったのを、その場でAは確認して受け取った。

まり、私のやった作業は全て使われずに無視されたということ。そして、Aは私の手助け無しに5日たらずで原稿を完成できたということだ。2ヶ月間もの締切を守れずに、その後のたった5日間で仕上げたのだ。

つらつら書き連ねて思い返すことはあったが、どうせもう過去のことだ。漫研の人数は非常に多く、出入りも活発だった。私がAと特別に仲良く接することはこれ以降無かった。

ああ、漫研で私が嫌われていた件についてだが──漫研は人数が多く、人の顔と名前が一致していないことがよくある。悪口を言っていた部員は、本人が目の前に居るにも関わらず、「Aにあんなに仕事押し付けネームの人ひどくない?!」と私に言ってきた。ネームの人=私だと思っていなかったらしい。

あはは、本当にそうだよね」

私は乾いた笑いしか出て来なかった。

これが、私の2年前の冬の苦い出来事

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