10代で発症したその男は、警察沙汰を繰り返し、住んでいた団地を追い出されて田舎に帰ってきた。
夜、隣近所の玄関の戸を叩く、大声を出す。外に向けてラジオを大音量で流す。他人の井戸水を使って、道で汚物を洗う。ほとんど裸で徘徊する。迷惑行為は何年も続いていたが、田舎なのでみんな我慢していたのだ。
そしてその日、いきなり大声で「殺してやる~」と飛び出してきて、その男の家の前の道を歩いていた母の首を絞め、拳骨で頭を数回殴った。隣の家の戸を開ける音がしなければ、そのまま母はどうなっていたかわからない。
それでも、その男は不起訴になった。被害者の事情聴取も全くなく、検事は、わざわざ謝罪文をかかせ、「錯覚をおこさせたことを反省して・・・」などと事実とは異なる許しがたい文章を書かせて検事名で送ってきた。怒りとショックに身を震わせながら検察庁に突き返しに行くと、「殴ったというか、叩いたというかそういうことは、表現の仕方がいろいろあるので、左手が顔に触れたということは認めているが、首を絞めたことについては否認している。認定できたのは、両手が鎖骨に当たったことと顔を拳骨でこすったということである。本人は自分のことを真実だと思っているので、そのことに不当なところはない。したがって事実認定ができない。」せせら笑うように言った。世間では、拳骨でこすったということは殴ったと同義なのだが、法の世界では、このような解釈になってしまうのか・・・・・・。
その男は、今もゴミ屋敷に雨戸をしめて引きこもり、実家の井戸水を黙って汲み、自分の汚物でまみれた紙おむつを水に浸し、汚物とおむつのゼリー状の中身を道にぶちまけながら積み上げる。何年も前からガスも止まっているので風呂にも入っていない。
恐怖とゴミ屋敷の異臭で住めなくなった実家。母は引っ越しをし、ショックから体調を崩した。私が母のために建て替えた家なのだ。最初で最後の親孝行として設備も充実させたのに・・・。喜んでくれた母の笑顔をもう一度見ることはできないだろう。
あの男は、今も時々奇声を発しながら徘徊している。
精神科の医師は、生活実態が破綻しているのに、どうして放置しているのか。
この状況をどうして放置しているのだ。
それにしても、あの男は自分のペースで生きることができ、人権を120%守られて快適だろうなあ。
私たちの人生は、あの男にめちゃくちゃにされ平和な日常の暮らしは戻らない。
精神障害者を支援する相談機関は増える一方だが、周囲の被害者が迷惑行為を訴えるところはない。
相談したら、ただ話を聞くだけというのはあるが、被害者はカウンセリングを希望しているのではない。
どうして現状を変えないで我慢するスキルを押し付けるのか。相談ではなく、愚痴ではなく、解決したいのだ。
現状を解決してほしいのだ。電話口で「そうですかあ、そうですか・・・、」と延々ただ聞くだけで、何の専門的知識もなく、「では、・・センターをご紹介しましょう・・・」とたらい回しにする機関がいかに多いことか・・・。もううんざりだ。
親族に訴えようにも、守秘義務があるからと連絡先は教えてもらえない。
絞殺されない限り、いやたとえ絞殺されたとしても、あの男の生活は守られるだろう。
一人の加害者の回りには、迷惑行為で人権を踏みにじられている被害者が何十人もいる。
で、そいつの住所はどこ?
うーん、、、夏休みまでにまた一つ考えてリベンジしにきてください。