切込隊長のまとめが的確。
"smartnews"なるアプリがコンテンツ泥棒と批判された件で
SmartNewsは、ニュースのタイトルがタップされたときに、アプリ内Webブラウザでニュースサイトを開きます。その後、スマートフォンの接続環境上の理由でニュースサイトの読み込みに時間がかかる場合などのために、「Smartモード」としてキャッシュを表示できるようにしております。
公式サイトの記事では「キャッシュ」という言葉でぼかされているが、ではこの「キャッシュ」とは何か。
SmartNewsのSmartモードでは、圏外の際にも記事の内容を読むことが出来る。ネットワークにも繋がっていない、スタンドアロンの状態で記事が読めるということは、記事の全文は、各ニュースサイトのサーバでも、ゴクロのキャッシュサーバでもなく、手許にあるスマートフォンのデータベースに格納されていることになる。
SmartNewsとは、つまり以下のような仕組みで出来ている。
つまり、各ニュースサイトの記事を自サーバから配信しているだけではなく、各ユーザのスマートフォンの中に挿入しているのである。これは新聞をポストに投函するのに近い。著作権的にはアウトな気がするが(詳しくないので詳しい人に解説を譲る)、ゴクロ社の言い分では「きちんと元サイトに誘導する導線を作ってますから、許してね、ね」という感じか。
著作権とユーザの利益というのは、本質的にぶつかりやすい。全ての小説家が書いた小説を全部無料で読めれば、ユーザにとっては利益があるが、作者の収益はなくなってしまう。その綱引きのバランス調整を行うツールの一つが著作権なわけだけれど、少なくともwebにおける著作権の線引きって、多分にパワーゲームで決まることが多い。
Youtubeが出てきた時、「こんな著作権無視の無法サイトはすぐに潰れる」という声が多く上がった。だがYoutubeは莫大な訴訟を抱えつつ、多くの企業と折衝しながらルールを確立し、未だなお多くの違法性を抱えながら現在は社会的な認知を得ている。Googleのページキャッシュなども同様。
ゴクロ社も、今後同じように、訴訟を起こされながら、各社と粘り強く折衝をし、線を引いていくという段階を辿ることになる。マネタイズは更にその先の話。ただSmartNewsが侵害している著作権の対象は、CGMであるYoutubeや、Botが収集し続けるGoogleのページキャッシュなどとは異なり、限定されている。故に訴訟の件数は抑えられるし、ミッションの難易度も低いのではないかと思う。ただしそれらは華やかな成功とは程遠い、汗臭いドブさらいのようなフェーズであって、一介のベンチャー企業にとってはしんどい道のりになるかもしれない。
サービスの企画会議なんかをやってると、この手の著作権侵害型サービスって思いつく人は多いのだが、大体「それやばいでしょ」と一笑に付されて没になる。要は「そんなうんこにまみれるような仕事はやりたくないよね」ということだ。
ただ「やりたくない」と書くのはかっこつけすぎて、普通の会社や普通の人だと「出来ない」というのが正確だ。なぜなら、訴訟を起こされ、Twitterや2chでは犯罪者と罵倒され、無料アプリなので金は入ってこない、こういう仕事はしんどすぎるからだ。この手の仕事は「それ儲かりそうっすね」的な軽いノリで成し遂げられるものではなくて、なんともしてもこのミッションをやり遂げるという信念や欲望がないと、途中で折れてサービス自体が終わりを迎える。
なのでこのフェーズを乗り越えるには、CEOやプロデューサーの覚悟と使命感、体力と気力が必要になる。ここから先は小器用なだけでは乗り越えられない。ゴクロはもう肥溜めに足を突っ込んでしまったわけで、ここから死にものぐるいで戦って線を引き、コンテンツ事業者とユーザに新しい価値を提供できるようになってほしいと思う。