「プリーモ・レーヴィ」を含む日記 RSS

はてなキーワード: プリーモ・レーヴィとは

2021-07-05

いかわが子どものころの思い出したくない体験を呼び覚ます

https://twitter.com/ngnchiikawa/status/1410894748928253960

https://twitter.com/ngnchiikawa/status/1411681395492102147

いかわ、一部読者が勝手深読みして面白がってるだけ、という向きもあるのかもしれないけど、私は全然そうは思えない。

最新の二回、ちいか世界モブが怪鳥にさらわれ、着ていたパジャマけがから落ちてきて、友達のなかで一人取り残されたモブが泣き叫んでいる。

これを読んで、ある日突然さらわれてしまって、命のある姿で二度とかえってはこなかった自分友達のことを思い出して、ほんとうにほんとうに苦しくなったし泣き叫びたくなった。

私のことは特定されてもいいが事件のことを特定されたくないので時期は書かないが、友達もちいさくてかわいかった。

いかわの世界で、きたるべき日のために一生懸命ダンス練習をしていたモブたちみたいに、本当になんの罪もなかった。

実は、怪鳥にかっさわられてしまった回ではむしろもう、

・今までさんざん繰り返されてきた「ウワ・ワ・ウワ」という歌詞が、さらわれた時の「ウワーッ」という叫び伏線だったこ

不憫かわいさ

モブたちが出演するフェスの成否が主眼になるかと思いきや、練習中に謎の鳥にさらわれるという作者以外誰も思いつかないような唐突な展開

が相まり、読んだ瞬間爆笑してしまったくらいで、特に自分のむかしのことを思い出したりはしなかった。

けど、これ書いてる時点での最新回、さらわれたモブたちが着ていたパジャマけがからふってくる、それをだきしめ大泣きする取り残されたモブをみたら、昔の自分友達自分のことがその瞬間にかさなってしまい、苦しくて苦しくてたまらなくなった。

そしてちいかわ、こころからすごいと思った。

描かれてることはド直球の誘拐と、それにともなう残された側の心境だ。

前触れなく奪われる楽しかった普通の日々。でも最初絶対にもどってくると信じていた、この取り残されたモブみたいに。

しばらくたつと、いつか、どこかで折り合いをつけないと生きていけない苦しさがじわじわと現れる。

それから、もう普通の日々じゃないのに、友達が戻ってこないこと以外は全部ふつうの日々。

いかわの今回の展開は、(トラウマだとは簡単に言いたくないけど)人の、リアルにふたをしていたい、というかふたをしていなければやりすごせないようなつらい記憶容赦なく呼び覚ます

いかにもかわいらしく、キャッチーだけど唯一無二の絵柄と書き文字で釣って読み手の参入ハードルを下げに下げ、(ついでに集金にも成功しながら)その実ものすごい劇物を読ませている。

もぐらコロッケの共食いだって、書いてることは武田泰淳の『ひかりごけ』程度にはヘビーでハードなのに、みんなつるつると読まされてしまう。

https://kai-you.net/article/74589

ナガノ先生は、上のリンクの中で「何かメッセージを伝えたかったり、重いテーマを描いているというよりは、何かが起こった時の反応や表情を描きたいという気持ちの方が強い」と語っているけど、「何かが起こった時の反応や表情を描きたい」気持ち彼女いちばんの『ちい虐』にしているし、逆説的に、そこまで意図してないメッセージを伝えることにも、重いテーマもつながっていると思った。

今回の話を読んだ時、授業の課題になっていたからいやいや読んだプリーモ・レーヴィの『溺れるものと救われるもの』を読んだときくらいにはしんどくなったし、授業の課題になってたからいやいや観た『ルワンダの涙』を観たときくらいには呆然としてしまったし、いろいろなことを思い出して苦しくなり、今もまだうつうつとしている。

こんなかわいらしい絵がらで、ここまで人の心をえぐることができる、救いのなさを描けるってほんとうにナガノ先生しかできないことだと思うし、自覚的にやってるにせよそうでないにせよ、間違いなく天才なのでこのまま突き進んでほしい。

重たい文学を読みとおすのも映画を見とおすのも大変なことだが、そこまで大変な思いをせずに、Twitter上でうっかりつるっと同じくらいのしんどい体験ができてしまうのはある意味コスパがいいのかもしれない。

辛いフィクションこそが読み手の心を救ってくれることもあるのを経験として知っているのでなおのことそう思う。

(今回比較で出した作品はどれもノンフィクションだったりモデル事件あるけど…)

最後に、「絶対に」戻ってこないことがあるのを知っているから、鳥につれていかれたモブたちには「絶対に」戻ってきてほしいし、そういう展開になることを心の底から祈っている。

 
ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん