2024-10-04

インターネット存在で、世界不思議払拭されて寂しい

インターネットができて、世界はすごく便利になった。

どこにいても、スマホパソコンさえあれば何だって調べられる。

行ったこともない場所、見たこともない景色、食べたこともない料理。何だって画像付きで詳細に知ることができる。

まるで世界のすべてにアクセスできるように。知らないことがなくなるって、すごく楽だ。

この街ってどんな感じ?」とか、「あの国に行くにはどんなルートがある?」とか、ネットで調べればすぐに分かる。

現地の口コミレビューまで見られるんだし、安心して旅行計画も立てられる。まあ、便利だよ。そりゃあ、便利だ。

でもさ、なんだろう。俺、時々思うんだよ。

インターネットがない時代、あの時代しかなかった「世界不思議」って、もう今じゃ味わえないのかって。

なんていうか、未知のものに触れたときのワクワク感というか、あれがどんどん薄れていくのがちょっと寂しいんだ。

昔はさ、世界のどこかに本当にドラゴンいるかもしれないとか、空を自由に飛べる方法があるかもしれないとか、そんな空想が当たり前のように頭に浮かんだんだ。

昔は学校帰りの道端でかめはめ波練習を本気でしてたし、「世界に一人くらいはかめはめ波を打てるやつがいるに違いない!」って心の底から信じてたんだよ。

でもさ、今じゃネット検索すればすぐにわかる。

かめはめ波を打つ方法」なんて検索しても、出てくるのは『かめはめ波ポーズ完璧再現する方法』みたいな動画で、誰も本物を打てない。

そりゃそうだって分かっちゃいるんだけど、でも、なんだろうな、ネットのせいで夢が壊された感じがするんだ。

そんなふうにちょっとしょんぼりしてたんだ。そう、先週までは。

先週の夜のことだ。

あの日仕事がやたら長引いて、会社を出たのは22時を軽く超えてた。

疲れてクタクタになりながら、俺は自宅に向かって歩いてたんだよ。

静かな住宅街、周りには誰もいない。しーんとした夜の空気が心地いいんだか、逆にちょっと不気味なんだか、よく分からない雰囲気

家まであともう少しってとこで、俺、ふと後ろから声をかけられたんだ。

すみません、少しお時間をいただけますか?」

ぎょっとして振り返ると、そこには驚くほど美しい女性が立ってた。

顔立ちは整っていて、長い黒髪が夜風にふわっと揺れてる。

正直、こんな時間にこんな人がいるなんて思わなくて、俺は一瞬固まった。

でも、彼女の目を見ると、何か引き込まれるような、不思議感覚に襲われたんだ。

「あの……?」

あなた、少し血を分けていただけませんか?」

「……は?」

いきなり何を言ってるんだ?と俺は思った。血?何言ってんの、この人?でも、彼女はいたって真剣な顔で俺を見つめている。

「私は吸血鬼です。今夜は少し血が必要なんです。ほんの少しだけ、痛くはしません。お願いできませんか?」

吸血鬼だって?俺の頭の中で、いくつかの疑問符が浮かんだが、同時にその言葉は妙にしっくりきた。

なんでだろう?ありえない話だろ?吸血鬼なんて。

でも、その瞬間、俺は「そういうこともあるのかもしれない」って思ってしまった。

ネットがなかった頃なら、俺は確実に「なんかヤバい奴だ」と思って逃げてたかもしれない。

でも今は違う。ネットのおかげで知りすぎてしまったせいで、逆に「未知」が目の前に現れると、どこかで期待してしま自分がいたんだ。

俺は彼女の顔を見て、「ああ、なんだ、ついに本物に会えたのか」と妙な納得をしてしまった。

そして吸血鬼という言葉の重みに押されるように、ポケットから財布を取り出し、身分証明書確認しようとした――

「え、ちょ、吸血鬼って証明書とかあんの?」

「……いいえ、そんなものはありません。私は信用していただけるだけで十分です。あなたが私に少しだけ信じてくれればそれでいいんです。」

なんだよその設定、って思ったんだけど、彼女の目は真剣のものだ。俺は、まさかと思いつつ腕を差し出した。

「ちょ、ま、まじで噛むなよ……?」

彼女は静かに俺の手首を持ち上げ、そっとその冷たい唇を近づけてきた。次の瞬間、鋭い痛みが走る――かと思ったら、

「え、ちょ、なにしてんの?」

俺の目の前で、彼女スマホを取り出して、俺の手首にかざし始めた。何してんだ、と思って画面を覗き込むと、「吸血アプリ」とかい名前が表示されてるじゃないか

「え、アプリ?」

「ええ、最近は便利になったものでして、直接噛む必要がなくなったんです。これであなたの血のエネルギーを頂戴します。ご安心を、痛くはしません」

いやいやいや、吸血鬼の最新技術なんて知らねぇよ!って思いながら、俺はその吸血アプリとやらが動作するのをただ見つめていた。

まさか、俺がこの時代に吸血されるとは思ってもみなかったけど、時代は変わったもんだなぁ、と妙に感心してしまったよ。

吸血が終わった後、彼女は深々とお辞儀をして、静かに去って行った。その背中見送りながら、俺はなんだか不思議気持ちになった。

「結局、世界にはまだまだ未知のことがあるんだなぁ」って、なんか安心したんだよ。

かめはめ波は打てないけど、吸血鬼スマホで吸血する時代。いや、こういう未来も、悪くないのかもしれない。

――そして翌日、ふと気になって「吸血アプリ」を検索したんだけど、そんなアプリどこにもなかった。

あの夜の出来事現実だったのか、それともただの夢だったのか……でも、まあ、世界はまだまだ不思議なことだらけだってことだけは確かだ。

  • この感じ、星新一で読んだことある流れ

  • うわぁ、くだらねえ。万人受けを狙った いかにもな導入からして、元増田は小説家のワナ ビーってとこだろ。女が身分証明書を見せようとする 意味不明な動作とか、何の説明もなく腕...

  • さみしい人たちはみんな異世界を楽しんでるよ

  • クジラのダンス 北の国のオーロラ ありんこの涙

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん