2022-04-06

たわわが燃えたのは、「私を無視しないで」、という怒り

 日経新聞4月4日号に、ヤングジャンプ連載中の漫画月曜日のたわわ」の全面広告掲載された。その1日後の4月5日に、その広告が「女性性的消費している」「新聞広告にはふさわしくない」と燃えている。

 この問題で気になるのは、掲載の翌日の4月5日炎上したこと掲載された広告イラスト制服姿の少女のものだが、漫画の最大の売りである彼女の大きな胸がほとんど隠れていることである

 もし4月4日掲載日にこの問題炎上したとすると、新聞を読んでいた人が電車内や会社で大きな胸も露わなイラストを見て「これはよろしくない」と騒いでいることになるが、炎上までに1日の誤差がある上、イラストは振り向きショット、腕で胸がほとんど隠れておりパッと見ただけでは彼女の胸が大きいことはわからない。となると別の理由炎上している可能性が高い。

 4月4日の昼に、webメディアの「コミックナタリー」が広告掲載意図について編集部コメントを載せている。

4月4日今年の新入社員最初に迎える月曜日です。不安を吹き飛ばし、元気になってもらうために全面広告を出しました。」

 なるほど、掲載意図としては、4月1日入社新入社員を元気づけたい、と言うものだったと言う。そう言う意味では、可愛らしい少女のさわやかなイラストや「今週も、素敵な一週間になりますように」は、一定程度意味があるように思える(若干アイキャッチ的に女性を使ってるともいえるが、まあ漫画ヒロインなので、そこは置いておく)。ただ、なぜこの漫画が、「月曜日の憂鬱」を吹き飛ばし、元気になるに値するのか。ナタリー編集部がご丁寧にも説明している。

「「月曜日のたわわ」は、月曜日憂鬱社会人に向け、豊満な体型をした女子を中心に描かれるショート作品。」

 月曜日憂鬱なのは社会人に限らず、学生主婦、みんなそうである休み明けは力が入らない。なんとなく憂鬱だ。そんな人を元気付けるために用意されるのは、さわやかな青空でも綺麗な花でもおいしい朝食でもなく、「豊満な体型をした女子であるという。

 一般論的に、豊満な体型の女性を見て「元気が出る」のは異性愛者の男性かと思われる。ただ、月曜日憂鬱社会人には、異性愛者の女性もいれば、セクシャルマイノリティ男女もいる。そうなると、この理論は極めて限定的な人へのエールであるともいえる。そんな思い切り異性愛者の男性だけに向けた広告を、「新社会人へのエールとして」日経新聞掲載されると、日経新聞読者のうちの何割(異性愛者の女性同性愛者の男性など)かはムッとするのではないか。おまけに、女性に至っては、自分が「月曜が憂鬱男性を元気付けるための属性」というレッテルを貼られてしまうため、よりイラッとする可能性がある。男性には月曜日を元気に迎えてもらうために手当が用意されてるのに、同じ思いをしている女性特に豊満な体型の女性)は、自分の感じる月曜日不安憂鬱無視される上、己が属する性が逆に男性を元気づけるために「利用」されるを目の当たりにしなくてはならない。これでは女性が怒るのも当たり前である

 今回の広告は例えば「宇崎ちゃんは遊びたい!」の献血ポスターに比べると、胸元がほぼ見えず、絵だけを持って性的表象としていると訴えるのは無理筋だと思う(まあアイキャッチ的ではあるが、漫画新刊宣伝なのでヒロインが描かれるのは当然である。)。また、この広告漫画新刊宣伝でもあるので、広告掲載していけない理由はない。ただ、この漫画の成り立ちや訴えたいもの広告掲載意図インタビューで語られた途端、この広告、この漫画は極めて限定的な人に向けた情報であり、女性を含めたいくつかの属性の人は無視され、また女性に関してはある種「自分属性レッテル貼り」されるのを目撃している状況になってしまった。

 個人的には漫画は好きなので、月曜日のたわわが悪いとは思わない。新刊宣伝もしていいと思う。ただ、講談社は本当に新入社員へのエールとこの漫画宣伝を掛け合わせる必要があったのか、コミックナタリーは、「「月曜日のたわわ」は、月曜日憂鬱社会人に向け、豊満な体型をした女子を中心に描かれるショート作品。」という文を書く必要があったのか。誰かのことを無視して、広告掲載擁護する人は「日経新聞なんて男しか読まないんだからマーケティング的には合っていた」などと言うのが正しいのか。もう一度考えた方がいいと思う。

 

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