「ハゲタカジャーナル」という言葉がアカデミアに現れて数年が経つ。
「査読あり論文」を「国際英文誌」にどのくらい出版したかが研究者の「業績」で最も重要視されるものであり、競争的資金の獲得も、大学や研究所でのポジションの獲得も、一にも二にもどのくらい業績を持っているかが左右する。
競争が苛烈だという問題はあるものの、研究という活動に、競争的要素がある以上、競争があるのはやむを得ない面もある。
しかしながら、10年程前よりこの業績評価の穴を突くような商売が現れた。
それが Predatory journal、通称『ハゲタカジャーナル』と呼ばれる粗悪学術雑誌である。
身もふたもない言い方をすれば「金さえ払えばお前の論文を『査読付き国際英文誌』に載せてやるよ」という商売である。
オンライン上にしか存在しない「国際誌」を創刊し、「査読がある」と謳う。
投稿された論文は、実際には査読などされない。内容にかかわらず規定の金額を支払えば、雑誌に掲載される。掲載料は数万円から20万円くらいと聞く。
研究者は研究費(そのかなりの割合は公的機関から出ている。つまり原資は税金である)から掲載料を支払えばいいので、自分の懐は痛まない。
対価として得られるのは、「査読付きの国際誌に論文が出版された」という業績である。
上手いことを考えたもので、「業績が欲しい研究者」と「金が欲しい業者」の思惑はピタリと一致し、この商売は流行りに流行っている。
日本では2018年ごろに新聞で問題が報じられたことで学界においても良く知られることになり、ハゲタカジャーナルへ出版することは悪だという認識が広まった。
もしかしたら、多くの研究者はそんな問題は過去のものだと思っているかもしれない。
しかし、未だに数多くの日本人研究者がハゲタカジャーナルとおぼしき雑誌に論文を掲載し続けている。
(ここでは具体的に雑誌や個人名に言及することはしない。実際、普通のオンライン雑誌とハゲタカ雑誌の境界はあいまいである)
どのような研究者が未だに論文をハゲタカジャーナルに掲載しているかは、簡単に調べることができる。
恐らく多くの研究者は、怪しい雑誌からの論文投稿勧誘メールを受け取った経験があるだろう。
試しに、そのメールに記載されている雑誌のサイトを見てみよう。
多くの場合、そのような雑誌のサイトには、膨大な数の姉妹雑誌も掲載されている。
試しに「Japan」と入れてみよう。
思ったより多くの日本人著者の論文が出てくるだろう。もちろん2020年出版のモノもゴロゴロ出てくる。
その論文PDFを開いてみよう。もちろん著者名が載っているし、著者の所属が明記されている。
ほとんどの場合、著者はちゃんとした大学や研究所や病院に所属している。
どれどれ、著者の名前でResearchmapで検索してみよう…おお!ちゃんと出てくるではないか、確かに実在の研究者だ。
研究室を主催している人間のようだ・・・当たり前のように科研費取得の経験もある。
業績欄を見ても、見知った雑誌名が並んでいる。…あぁ!そんな中に先ほどPDFを見たハゲタカ雑誌に載った論文もあるぞ…「査読あり」と明記してある…。
…そのようなことが当たり前に起こっている。
粗悪雑誌から距離を置き、誠実に業績を積んでいる研究者も、競争的資金やポジションの獲得で競争相手が、このような粗悪雑誌を利用して業績を水増しした研究者である可能性がある。
邪アナルって事か!?
非研究者にとっては、どの雑誌がまともかハゲタカかなんて分からないから、まともな業績なんだろうとスルーしてしまう。 あるいは研究者自身も無知で、まともな雑誌と思って投稿し...