2016-06-02

女装しておじさんに援交した18歳の春

その男と私の関係はその日の夜の30分だけだった。援助交際というジャンルで動いたその30分で、その関係は終わる。

LGBT流行語になるように、世の中には様々な性的指向/嗜好を持った人々が存在する。いわゆる男女交際を指す「シスヘテ」の世界援助交際があるように、例えばLGBT世界にも援助交際存在する。出会い系サイトに「割り切り」の分野があるのも、もちろんシスヘテの世界だけではない。LGBT同士で、またはトラニチェイサーと呼ばれるトランスジェンダー好きな人向けの出合い系サイトもあり、「割り切り」も当然ある。むしろ法制度や社会的偏見により多くが結婚ができないLGBT世界において、多くの出会い結婚目的としたものではなく、身体だけを目的としたものだ。

大学図書館をくたびれ果てた身体で出て、吉祥寺徘徊して夜0時15分。待ち合わせ場所にした市街地近郊にあるバス停ガードレールで目印のヘッドフォンを首から下げて、私はこれから何をしようとしているのか考えようとした。でもそれはできなかった。これから車で来る30代の男に、自分の、18歳の、女性ホルモン剤を注射した身体を売る。トランスジェンダー向けの出合い系サイトに「舐めることくらいならできます」と書き込んだら、10時間くらいのあいだに200件くらいメールが来た。そのなかにお小遣いありでフェラお願いしたいなぁ。プロフとか写真交換したりできますか?」と書かれたメールを見つけ、今からお会いできますか? と返信した。それがその、これから車で来る30代の男だった。

「今は家にいるのー? どこら辺に住んでるのかな?」

「××××××」

「今中野。30分くらいで着くよ」

私には恋人もいるし、性に飢えているわけではなかった。

好きでもない人間性的関係を持つほどビッチではない。

ただ自分の春を買う人がいるということを、確かめたかった。

バス停に滑り込んでくる日産ワンボックスカーワンボックスカー前後には、タイムズカーシェア黄色ステッカーが貼られている。車はバス停で停まる。車内を伺うと、男が頭をヘコヘコと下げていた。私が助手席のドアの前に立ち、ドアノブを指で指すと、男はやはり頭を下げた。

車に乗り込むと、やはりレンタカーしかった。男は「この近所で目立たないところないかなあ」と言う。黄色看板タイムズ駐車場を見つけては「ここは明るいなあ」などと言って通り過ぎる。男は目ざとく一本入った先に利用者の少ない駐車場を見つけると、そこの奥に車をおいた。

「じゃあ、はじめようか。荷物前置いて。後ろ行く?」

男は前席のシートを倒し、後部座席へと移動した。私も移動する。

キスしていい?」私は頷く。

舌を早く出し入れするだけの雑なディープキス。私の口に、男の髭が刺さる。

「興奮してるの? じゃあはじめようか」

男は私のジーンズを脱がせて、自分ボトムズも脱がせにかかる。男のそれはすでに大きくなっていて、私はそれを咥えて、舐める。口に含んで転がす。今まで恋人にされて気持ちよかったように、男のそれを刺激する。カーセックス

「はあ、すごいなあ。本当にこれがはじめて?」

男のそれを口に咥えた状態で「うん」と言う(やればわかるが、口に入れた状態で「はい」と言うのはとても難しい)。

女の子より上手いねちょっと手を離して」

男はそれを私の喉にあたるような場所まで押し込もうとして、思わず吐きそうになる。

「玉もアナルも舐めてよ、綺麗にしてるから

男は携帯電話懐中時計機能を使い私の顔を照らす。

「暗くて顔が見えないなあ。今度から髪を縛るためのゴム持ってきてよ」

正直、録画されていても気が付かないと思った。

「おちんちんおいしい?」

口に咥えたまま「うん」と言うと男は

「ほーら、返事は? これが舐めたくて仕方がないんでしょ?」

 

はいっ。おちんちんだいすきっ」

 

駐車場に停めてから30分後。

車をバス停につけて、男はバス停に車を停めて、2千円を「今日のご褒美」といい私に渡す。「また連絡するね」。私が車を降り、ドアを閉めると車はバス停から去っていった。

次の日、私はその2千円を国会図書館科研費報告書コピーであっという間に使い果たした。今まで好きな人、本当に好きな人しか使ったことがなかった口を2千円で売った事実は私にとても重くのしかかってしょうがない。

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