2015-04-26

バビロンのキマシタワー進化論

はじめに、百合の花が咲いていた。

そしてこの世界人類が生まれた。

人類は皆、姉妹であった。

長い年月が過ぎ、天変地異地殻変動の後に、人類の住まう地に大きな塔が聳え立った。

この塔はなんとも不吉であった。

今後も天災を巻き起こし、この世界を滅ぼすのではないか?

姉妹たちは皆、この聳え立つ塔に恐怖した。

そんな姉妹たちを見かねて戦士セーナは立ち上がり

勇敢にもその塔へと登って行った。

塔はまばゆい光に包まれ、セーナはこの世に生きる喜びを知った。

これは私の住んでいるこの世界神話『キマシタワー物語』の一説である


小さい頃おばあちゃんによく聞かされたが、当時から好きではなかった。

今では学校の授業でもさんざん聞かされるこの話はネィロ教であるこの町の住人なら殆どが知っている。

塔の中でセーナに生きる喜びを与え、人類救世主として現れたのが

ネィロ教の始祖シコッテ・ネィロ様なのだそうだ。これが町の歴史

現在、奇間市の中心には町のシンボルである奇間市タワーが立っている。

この塔は教団の本部でもある。

とても大昔の地殻変動で出来上がったには見えない、おそらく神話に因んで建造された塔。

この時まで私はあの物語をただのお伽噺だと思っていたのだ。


私の家族構成は祖母と母、私の三人暮らしだ。

母は教団関係の経理事務をしている。

父親は物心つく頃にはいなかった。ちなみに祖母は父の母親で、母とは血のつながりはない。

複雑な事情があるのかわからないが、家でそういう話はなんとなくタブーになっていた。

祖母はネィロ教団の元幹部で、今でもご意見番として影響力をもっている。

それが直接の原因ではないが、私に対して同年代の風当たりはキツく、

ぶっちゃけていえば学校はいじめにあっている。

クラスのみんなは無視。お弁当トイレで食べている。

不登校ぎみで家に籠ることが多い。

そんな私の楽しみはインターネットで知り合った友達とのチャットネットゲームだった。

同じように不登校で悩みを打ち明けあって仲良くなった小豆ちゃんとは3年ほどの付き合いになる。

お互い男性に対しての免疫がなく、同年代男子ともろくに会話をしたことがない。

しかし、アバターを通してならなんとか男子とも会話ができるのだ。

ちなみに私のHNは「セーナ」である


小豆ちゃんとは自撮り写真を送りあったり、ビデオチャットもたまにする。

小豆ちゃんはかわいい

不登校になったのも、男子から人気だった小豆ちゃんにクラス女子集団陰湿いじめをしたのが原因らしかった。

いつものようにビデオチャットしていると、小豆ちゃんの後ろに映る部屋の本棚が気になった。

「シコッテ・ネィロ著/この街真実」という本があったのだ。

著者は珍しくもない、うちの本棚にも経典がたくさんある。

しかし、そこに写るその本は見たことのない本だった。

「ねえ、あずにゃん。後ろの本なんだけど・・・

「どうしたの、セーナちん」

「その右端のネィロ様の本…」

「えっ!??」

・・・え?」

「あぁ、ごめんごめん。セーナちんが『ネィロ様』なんて言うからwwwそりゃあ好きなんだろうけど」

「え?どういうこと?」

だってセーナちんもネィロ先生小説好きなんだよね?だってHNもセーナだし・・・・」

「ん?・・う~ん??」

なんだか微妙に会話が成り立たない。

「セーナちん、先生サイン会とか握手会に行ったりする?」

「へ???

だってネィロ様って言うくらいだからw」

あずにゃん?何言ってるの?ネィロ様は大昔の人だよね?」

「wwwそりゃあけっこうご高齢だけど、大昔ってwひどすぎww」

さらに話がわからなくなってきた。

「え~と、ゥイキにも年齢は載ってないみたいねぇ。『この街真実シリーズ』で人気になった作家...→(URL)」

この時、小豆ちゃんはネィロ様についての詳細が書かれたゥイキのURLを貼ったらしいが私にはアクセスできなかった。

「ん?どうしたのぉ~?セーナちん。」

「さっきの本、どこで買ったの?」

「どこで、っていうか普通に書店でも推してたし、あ○ぞんでも売ってるじゃん。レビュー凄い数だし、→(URL)」

これもアクセスできず。

・・・

小豆ちゃんはふざけて言ってるわけではなさそうだ。

「ごめん、ちょっとはしゃぎすぎた?何だかセーナちゃんと好きな本の話できて嬉しかたから…」

「ううん。そうじゃないの。なんか今日は疲れてるのかも、もう寝るね」

「そっかぁ。おやすみ~ノシ」

「おやすっみ~ノシ」

混乱していた。

自分を取り巻く世界が、ガラス細工のように音を立てて壊れていくような、なんとも言えない気分だった。

つづく

バビロンのキマシタワー進化論2

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