現実世界を個別科学の立場から切りとるのではなく社会の期待と要請に応えて既 存の学問領域を超えて新しい学の創造をはかり未知の地平を切り拓く…(中略)…この5つの理念にもとづき革新的な研究と教育を行い創造と実践を通して“知の 再構成”を試みます。
「環境」は、白然環境、社会環境、人工環境など、さまざ まな人間生活の場を含む、現代社会の基本概念の1つです。 「環境」の中心となるのは、あくまでも自分自身です。みず からの決定と行為が「環境」に影響し、結果として自分に戻 ってくる原理を理解し、その上でいかに行為すべきかを考え る、これが環境間題を問う根底にある発想です。傍観者では なく、あくまでも当事者としての立場から問題を立て、み ずからの行為を通じて解決していく実践的能力が要求されています。
「情報」は、20世紀が生みだした最も重要な概念だと言わ れています。21世紀は、あらゆる事象を、物質とエネルギー に替わる「情報」という概念に基づい見直すことによって、 世界観の転換が期待される時代です。人間は道具をつくり、 使いこなすことによって、独自の進化をとげてきました。今 日では、コンピュータをはじめ、多くの情報機器を使いこな すことによって、われわれはイメージの世界を大きく広げよ うとしています。人間を、物質・エネルギー系として捉える のではなく、信号や記号を生成・処理する存在として理解することによって、はじめて人間の全体像を描きだすことができるのです。
現実の選択や決定は、それがいかなるものであれ、諸科学 横断的な総合的視点と判断を必要とします。とくに、政策の立案、検討、実行にあたっては、物事を多面的に解釈し、総合的に評価する能力が問われます。意見の対立を解消し、利害を調整するためには、一方において、同意を得るためのミ ニマムな共通項を見いだすとともに、他方、構成メンバーの要求に見合った、柔軟で多様なメニューをつくりだし、異質 性をむしろ積極的にとり込んでいくことが不可欠となります。
交通・通信技術の発展にともなう地球規模での相互依存関 係が一段と深化するなかで、国家間の相互理解、異文化間の交流は、21世紀にむけての最大の課題となっています。とりわけ世界のさまざまな大学・研究機関・個人を結ぶネットワーク化がすすむなかでは、多様な文化についての知識と言語運 用能力を基礎とするコミュニケーション能力が一段と要求さ れることになります。グローバルな発想と視野を身につけた 受信・発信の能力を養うことが何よりも必要となります。
創造性の重視
従来の教育では、知識の伝達、継承、与えられ問題の解決技法の習得に重点がおかれていました。これからの社会では、みずから問題を発見し、解決する能力、さまざまな情報 をひとつの知識へと体系化する能力をもつ、創造型の人間が期侍されています。そのため、あらゆる研究に共通な知的基 本動作の習熟、自然言語と人工言語の運用能力を前提として、 多様な発想と討論の場をつくることが必要です。既成概念の束縛から解きはなされた自由な発想と知的好奇心にもとづい た“創造の愉しみ”、それがSFC教育の基本姿勢です。