はてなキーワード: 突き出しとは
若干違うけれども、似たような経験をした。
私の場合、実際に電車で痴漢され、警察に突き出して逮捕してもらい、裁判もした。
警察に突き出した翌日から、怖くて電車に乗れず、学校行かず。鬱。
同じように友達に事情を話して、夏休み後に登校すると、私の場合は「痴漢が怖いって理由で遊びほうけてるんだって」との理由で何故か無視されまくり。
今でもなぜ事実が歪んで「遊びほうけてる」ということになったのか、わからない。私が悪いのか、友人が私のことを嫌いだったのかも分からない。
多感な思春期だったから、事実と私が勝手にした解釈もまた違ってるだろうし。
けどこれだけは自信を持って言える!
絶対にまた人を信用できるし、セックスだってできるし、愛する人もできる。
事件から9年経った今、私は何もかも乗り越えて幸せだって断言できる。
人が滅多にできない経験をしたらこそ、人の痛みも辛さもわかるし、精神的にも強くなった。
思い出したくもない経験だけれども、今ではその事件のおかげで知り合えた人達、出来事に感謝している。
今は辛いかもしれないけれど、これを乗り越えれば、絶対に絶対に強くなって人の何倍も幸せを感じられる。
だから負けないで、今を精一杯生きてください。
幼稚園の息子に買ってやったサッカーボールを同じマンションに住む小学生の男の子がよく借りに来る。で、最後にはほったらかし。
息子が不在の時にも遠慮なしにボールだけ貸して、とやって来る。でも返しには来ない。
今日も最初は何人かで一緒に遊んでいたみたいだが、息子は先に帰ってきた。晩飯前になって「ボールは?」と聞くと「知らない」と言うので表に出て探してみるが見つからない。
もう飯はとっくに出来上がってるのに嫁と息子と3人でボール捜索。使ってたよその子らはすでにいなくなっている。10分後にようやく植え込みの中で発見。
こういうことを余りに何度も繰り返すので、まず息子に説教。「返してって言えないなら貸すな。自分の物ほったらかしにされてて何も思わないような奴にはこれから何も買ってやらない。」
冷静に話そうと思ったが頭に血が上り財布から千円札突き出して「これじゃ大したの買えないかもしれないけど、○○君にボール買ってあげて下さい。うちにはもう借りに来ないでほしいので。」と挑発。相手は平謝りだが、嫁に「やめなさいよ」とたしなめられ帰宅。
冷静に考えると俺の方が大人げない近所のクレーマーということになるのかも知れないが、いまだに怒りは収まらない。
こんなことで近所づきあいが気まずくなるのは嫌なのだが、一方で、借りたもの返す程度の常識も教育できないような家と付き合う必要なんかない、と考えている自分もいる。
どうしたものか。
行動力に溢れていて尚且つ喋りが面白いという、
そして俺のようなクズにも屈託無く話しかけてくれるという人格者で、
眼の輝きからして俺みたいな底辺とは比べ物にならない、
そんな同級生に久しぶりに会った。
別人かと思うぐらいに変わっていた。
頭髪は手入れが全くされておらず、髭は生えるままに任せ、
腹は前に突き出し、手足の肌はやけに白く、服装はよれよれのスウェット。
かつてクラスメイトを楽しませるジョークを連発していた口からは、
排泄物のような臭いが漂っていた。
快活な雰囲気は完全に失われていて、代わりに周囲を陰鬱にさせるような気配を纏っていた。
何よりも眼が違う。
あの気力が充溢し、本当に輝きを発しているかのように思えたあの眼。
実家に帰省し、お使いを頼まれて訪れた先のスーパーで偶然見かけたのだ。
俺は信じられない思いだった。あの彼が? 嘘だろ、と思った。
確かめるべく近づくと饐えた汗の臭いが鼻をついた。何日も風呂に入っていない臭いだ。
名前を呼んで、話しかけた。
びくんと身体が過剰に反応し、ばっと振り向いた。その途端に、荒い息が口臭を伴って俺の鼻に届いた。一歩引いてしまう酷い臭い。
再度声をかけると、彼も俺が分かったようだ。
そして「それじゃ」と言って小走りで去ってしまった。
長い髪が背中で左右に揺れているのを眺めながら、俺を呆然と彼を見送った。
あれが、あの彼? あんな風な人間になれたらなぁと羨望と時には嫉妬を抱きながら憧れたクラスメイト?
何があったのかは分からない。学校を卒業した後では連絡などとっていなかったからだ。
でもなんとなく、クラスの階級ピラミッドの上の方にいた連中はその後もそれなりに上手くやっているものだと思っていた。
自分のような底辺を這いずり回るゴミ虫とは比較にならない輝かしい人生を歩んでいるものだと。
切ないような寂しいような、複雑な気持ちのまま買い物を終えてスーパーを出ると、駐輪場に彼が居た。
ママチャリの籠に買い物袋を詰め込んで、走り出したところだ。
呼び止めようとしたが、やめた。きっと無視されていただろう。
俺も自分の家に向かって歩き出した。
・・・偶然とはいえ、彼と会いたくなかったなと思う。
といっても衣服の知識も化粧の技術も皆無なので、
ネットで購入したパチモンのセーラー服を着ただけのお粗末な女装だが。
自分の姿を鏡で見てみた。
我ながら驚愕を禁じえない・・・。
でも何となく切ない気分になった。
スカートの端をつまんで持ち上げて、足を交差させ、ぺこりとお辞儀をし、
「ご機嫌麗しゅう」と呟いてみれば、ぞくぞくと震えるような快感があった。
容姿の美醜、女装の技術の巧拙でいえば最悪の部類に入るだろうが、
他人がみればあまりの滑稽さに腹筋を断裂させかねないだろうが、
それでも自分にとっては恐れと憧れの混じった未知の領域に足を踏み入れた達成感があった。
しかしそこから先に更に進んでいけば、戻れない場所にまで行ってしまうのはないかとも考えてしまう。
その臆病さは真っ当さという観点でいえば至極正常なものであろうが、しかし真っ当さに何の価値があるというのだ。
見よ、鏡の中の己を。
心に湧いた感情に、哀切や感動などという既存の名前をつける必要はないのだ・・・。
そして私は愛らしく微笑んで、スカートの裾が浮くようにくるりと回転してから、Vサインを鏡の中の自分に向かって突き出したのだった・・・。
ttp://mi-te.jp/contents/cafe/portal_archivecontents.php?c=1&b=1&e=343
絵本というのは、アニメーションと違って、全部は描かれていません。たとえばアンパンマンが「アンパーンチ!」と言うとき、アニメーションなら実際にパンチして相手が倒れるところまで描かれているけれど、絵本の場合、こぶしを突き出したところしか描かれていなかったりします。つまり、自分の想像するシーンがあるわけですね。
ですから、絵本の読み聞かせの場合、大事なのは「間」をとることです。たとえば「バイキンマンが現れた!」と読んだとき、バイキンマンは一体どんな風に現れたのか、聞いている子どもは頭の中で想像するんですね。なので、そこでちょっと待ってあげる。そこで間をとらずにどんどん読み進めてしまうと、聞いている側はわかんなくなってしまいますからね
暇つぶしに増田にゃんねるを見ていたら、前に俺が投稿したのが載ってた。
付き合ってるのかなぁ?
http://masuda.livedoor.biz/archives/51381140.html
もう一年近く前になるんだなあ。時の流れって早いや。
ちなみにその後、ちゃんと俺から告白しました。といっても一ヶ月くらい経ってからだけど・・・。
やっぱり「勘違いかも」って勇気がでなくてすぐに告白できなかったんだけど、
彼女から来たメールを三日くらい放置してたら「嫌わないでください」みたいな
文面見ただけで涙目になってるのがわかるメールがきて、「ああ本気なんだ」って確信してコクった。
その次に会ったときに「嫌いになるわけないじゃん。好きだよ、好き!」って言ったら
面食らった顔で静止しちゃったから「あれ、やっぱり勘違い?」ってかなり焦った。
声震わせて「どういう意味でですか?」って聞くから「俺の彼女になってよ!」って言ったらうつむいちゃって・・・。
焦って「迷惑?」って聞いたら、やっと顔上げて「う、嬉しい」って泣き出しちゃったからビックリした。
それから二人は・・・今も付き合ってるよ。この前、一緒にハルヒ見に行きました。
付き合いだしてから何度か、上でリンクした日記に書いてあることが作戦なのか何なのか聞いたことがある。
でも、何度聞いても彼女は否定する。「増田が好きになって告白してきたんだよ」って言う。
さらには「最初に声かけてきたのもそっちだし、しつこくデート誘ったよね」だって。そうだっけ?
覚えてない・・・誘うのは彼女からが多かったような気がするけど・・・俺なら先に男の友達を誘うはず。
まぁ、「彼氏」発言をした人に聞いたらあっさり認めたんだけどね。悩んでたから、提案したって。
付き合い始めてからの彼女は、それまでとかなり変わったような気がする。明るくなった。
前は笑うときはうつむきがちに声出さずに口だけで笑ってたけど、今は普通に声出して笑う。
よく喋るようにもなった。冗談も言うし、たまに嫌味も言う。前はこっちが話の8割喋っていた。
付き合う前とは変わっちゃった。彼女が変わっちゃって俺は・・・・もっと好きになった。
彼女がストレートに「好き」って言うようになって、抱きつかれて甘えられて・・・もう、アレすぎる。
二人でいま、マンガを描いてる。主に俺が話を考えて、彼女が絵を描く。二人で次描くマンガのことを話してる時が幸せ。
最後に一応言っておくけど「肉体関係ない」って書いたけど、もちろん今はある。
「「就活くたばれデモ」は、惜しいけどすごく間違っている」というエントリがかなりブクマされてて、
http://d.hatena.ne.jp/kanedo/20100118/1263822404
読んでみたらひどい詭弁の塊であまりにあんまりだと思ってスルーしていたんだけど、id:kanedoが新しく上げたエントリを見るに、当人には詭弁のつもりはなかったらしい。
http://d.hatena.ne.jp/kanedo/20100120/1263925401
そうですか。語句の意味がわかってないお子様ですか。おうちに帰ってあったかいコタツでみかん食ってればいいんじゃないでしょうか。
というわけで、元エントリのどこを詭弁だと思ったかとか新エントリがやっぱりひどいとか、そういう事を書いておこう。
まずは元エントリの話。
デモというのは、非常に「重い」抗議行動です。このようなデモを本気でやるのであれば、この「就活ゲーム」には誰がどのような利害を持って参加しているのかを分析した上で、どういう経路でプレイヤーの利得やゲームのルールを変えるかを考え抜き、その上で誰に何を訴えるべきか綿密に戦略を練り、メディアを通じれば「具体的な」交渉力が出る位の人数をあらゆる手段で集めた上で、決死の覚悟を持ってやるべきです。
そんな俺定義知らねーよ。デモってそんなに重いもんじゃない。辞書を引けばわかるよ。「俺たちを見ろ! 苦しんでるんだ!」でもいいんだよ。
自分の周りしか見えてないとわからないかもしれないけど、就活の大変さ自体が全然認知されてないんだから、とにかく「俺たちを見ろ」にものすごく価値があるんだよ。残念なことだけど。
デモを主催するかどうか、デモに参加するかどうか、というテーマだったはずが、「もしあなただけ就活を遅らせたら」という話に誘導されている。それ、関係あるの? デモか就活かの二択なの?
これは本筋と関係ないけど。
一度全体が悪い均衡に陥ってしまうと、そこから一人逸脱するのはその個人にとって損なので、本当は学生と企業の双方にとってもっと良い均衡が可能性として存在するのに、移ることが難しくなるのですね。経済学の一分野であるゲーム理論では有名な問題で、「囚人のジレンマ」と言われています。
いやいや、囚人のジレンマというのは、そんなものじゃない。もっとひどい。
最適なのに均衡でない。プレイヤーが合理的である限りたどり着けない最適解。そういうおそろしいもの。単なる活性化エネルギーの問題と混同すんな。
合理性を信奉するid:kanedoがこの文脈で例示すべきものじゃない。むしろ、disる立場から言及されるべき現象ですよ?
ブクマコメとかコメ欄とかで指摘されるんだけど(id:y_arimって真面目だよなー)、基本的に、デモの意味がわかってないまんま。
ブックマークコメント等でだいぶ論点が出揃ったように思います。反論の比較的多くに対しては、「だから『デモやるな。禁止』って主張じゃないんだってば」というので足りるでしょう。
いや、お前の書いたのは、「ぼくのかんがえたすばらしいデモ」以外のすべてのデモに対するdisだから。被害者面すんな。
応答の後に上げられたエントリがまたひどいわけで、、、
また烈海王風に言うと「我々が2000年前に通過した地点」の議論をどや顔で突き出してくる人が無限に供給され、相手すると非常に疲れるが、言われっぱなしもなんかスッキリしないと言う圧倒的に損なゲームだったように感じます。
それはお前のことだよ。お前がデモのなんたるかを知らなかったせいで皆様が混乱したんだってば。「早めに就活しないとほかの学生に比べて損だよねー」とか「デモに参加するとマークされるかも」とか「だれが悪いんだろう」とか、我々が二千年前に通過してるんだよ。
http://anond.hatelabo.jp/20091130015620から続き
一度口を開けば毒を吐きまくるために、美樹は今までにいろいろと嫌な思いを経験してきた。自業自得だと言えなくはないにしても、積み重なった日々は紛れもなく大きな傷跡となって記憶の奥底に刻み込まれてしまっていた。
美樹は、自らの悪癖に辟易しているきらいがあった。みんなと同じように会話することができない。したとしても、すぐに嫌な空気を作り出してしまう。誰かを傷つけてしまう。そのことに対して、美樹は激しく己を恥じていたし、憤っていた。どうしてこんなに嫌な奴なんだろうと自己嫌悪に苛まれたことも一度や二度ではなかった。
だから口を噤むようにしたのだ。誰とも話さないようにすることで、他人を傷つけることからも自分を嫌いになることからも逃げていた。そうすることが、美樹が思いついた唯一の解決策だったのだ。そもそもが、意識して簡単に直せるようなものではなかったのだ。できたらやっているし、何度も試みたのだと彼女は言った。
「でも駄目だったの」
彼女は悲しそうな目をしてそう言っていた。どうしようもなかったのだと。以来、美樹は生来の口の悪さを内に秘めながら、ずっと付き合っていくしかないのだと諦めるようになっていた。話さなければいいのだ。口を開かなければ問題は起きないのだから。そう自らに言い聞かせながら。
けれども、周りはそんな美樹を認めてはくれなかった。持ち前の美貌も相まって、なにをしていようとも美樹は際立って目立ってしまっていたのだった。
彼女が望もうが望まざるが、周囲の人たちは美樹に話しかけてきた。一人を好んでいた美樹に対して、女子生徒は持ち前のお節介やどろどろとした縄張り意識から、男子生徒は猛烈に尻尾を振りたくりながら、関わりたくないのに自ら近づいてきた。話しかけて、口を開かせて、真正面から針に手を突き出していった。
次第に美樹は影で悪口を囁かれるようになる。そうならないようにしたつもりだったのに、誰かを傷つけて恨まれてしまっていた。言われもない噂をいくつも立てられ、見ず知らずの人たちからも嫌われるようになってしまった。距離を置かれ、興味本位や嫌悪感から不躾な視線を向けられるようになった。その結果、美樹はどんどん口数の少ない女の子になっていく。
「あの頃、亮太が側に現われてくれなかったら私は潰れてしまっていたと思う」
真剣な目の色で過去を告白されたのは、つい先日のことだったのに。
高校時代、とりわけ僕と知り合ってからの一年半、美樹は僕の前でだけああやって気兼ねなく話すことができたのだ。ありのままの自分でいられた。考えてみれば、他の人よりも僕に対する口の悪さは際立っていたような気がするのだ。彼女にとって僕は、追い詰められながらも掴むことができた最後の救いに違いなかった。
美樹はまだ周りの人に対する怯えを拭いきれていないのだろう。おそらくは他人との距離感も的確に掴めないでいる。他人と普通にコミュニケーションが交わせない孤独感、心細さを、そしてどうしたって傷つけてしまうことへの罪の意識を、はち切れんばかりに膨れ上がった自己嫌悪を、今日に至るまでずっと抱き続けてきているのだった。
だからこそ、僕は美樹を攻めるべきではなかった。僕が攻めてはならなかったのだ。確かに腹の立つことが多いけれど、それでも僕は受け止めるべきだったのだし、受け止めてあげられたはずだったのだから。
しばらく町中を走り回って息が上がってきた頃に、僕はようやくとある公園のベンチに座る美樹の姿を見つけた。手にはハンカチを握り締め、ぼんやりとうな垂れている。様子から泣いていたのかもしれないと思った。僕の中の後悔が罪悪感へとその姿を変え始める。そして同時に、しみじみとした暖かな愛おしさが沸き起こってくるのも感じていた。その温もりは急速に僕の中を駆け巡ると、圧倒的な奔流となって僕の気持ちを覆い尽くしてしまった。
彼女は腹立たしくも可愛らしい、そして何があっても僕には憎みきれない奴なんだと、ついつい頬が緩んでしまう。
まるで長く我慢して、ようやくおいしく食べられるようになる渋柿みたいに、美樹と付き合っていくことには辛抱が必要なのだ。
「やっ」
俯く美樹に近づいて、できるだけ明るく声をかける。びくりと肩が飛び上がった。声だけで、彼女は僕の存在に気がついてくれる。まあそれでも顔は上げてくれないのだけれどもさ。
しばらく前に立って待ってはみたけれど、美樹は頑なに僕の顔を見るつもりはないようだった。ため息が出そうになる。でも、何とか堪えた。
そっと隣に腰掛ける。広がる公園を眺めることにした。枯れ草のような芝生の先に桜の木々が立ち並んでいて、その上に青く淡い空が広がっている。白いのんびりとした雲がゆっくりと浮かんでいた。これからどこへ行くのかぼんやりと想像してみたけれど、どれだけ考えてもどこへも飛んで行きそうにはなかった。
「さっきはごめん。ちょっと熱くなっちゃったんだ。ほんと、ごめん」
そう、雲を見ていたら自然と言葉がこぼれ出た。どこからか小鳥の伸びやかの声が聴こえてくる。軽やかに透き通ったその音色は、風に乗ってどこまでも響いていくような気がした。どこまでもどこまでも。今日という一日を祝福するかのようだと感じた。心地よい賛歌は、遠く恋人に語りかけるかのように青空を駆けていく。
ふと、柔らかな温もりを左に感じた。見れば美樹の頭が僕の肩に寄りかかっていた。顔は未だに下を向いたままだ。でも微かにのぞくことのできた唇は、小さく言葉を紡いで動いていた。
ごめんね。多分美樹はそう言ったのだろうと思う。
――素直じゃないんだから。
多分僕は美樹のことがかなり苦手なんだと思う。でも、だからと言って美樹のことが嫌いだったりするわけじゃない。美樹にとって僕が思う存分話すことができる相手であるように、僕にとっても美樹は大切な人なのだから。
だから、寄りかかる美樹の肩にそっと腕を回してみたんだ。
吹いた風は、もうすぐ暖かな春を連れて来てくれるのだろう。
そうしてまた一年。
僕たちはこうして一緒にすごしていくのだと思った。
(おわり)
ぱがん、と、乾いた音が耳を突いた。まどろみに埋もれていたわたしの意識が、急速に引き上げられていく。気だるげに開いた眼は、薄暗く静寂に沈んだログハウスの天井を視界に捉えていた。
ぱがん、と、乾いた音が再び聞こえてくる。のっそりと上体を起こしたわたしは二段ベッドの上から室内を見渡し、まだサークル仲間の誰も彼もが目を閉じたまま微動だにしない様子を確認すると、がりがりと寝癖のついた頭を掻いてしまった。
もう一度眠ろうかと考えた。予定では、今日は引率している野獣の如き子ども達を宥めてオリエンテーリングに向かわせなければならなかった。下手に寝不足のまま参加してしまえば足手まといになってしまうだろうし、やつれて無駄に疲れてしまうことが目に見えて明らかだった。
やっぱり眠ろう。決めて身体を横たえて瞳を閉じる。小さく、仲間達の呼吸が小さく聞こえてきていた。意識はじゅんぐりと眠りの海に沈み始める。布団を引き寄せて、身体を小さく抱え込んだ。温もりが再度まどろみに沈んだ身体にとても心地いい。
ぱがん、と、三度あの音が鼓膜を振動させた。瞬間、わたしの瞼は何者かに支配されたかのように勢いよく見開かれる。まだ浅いところで引き上げられてしまったせいで、とうとう完璧に目が冴えてしまった。こんな朝っぱらからうるさいなあと少し腹が立ったわたしは、仲間達を起こさないよう静かにベッドから降りると、懐中電灯を持ってひとりログハウスの外へと足を向けてみることにした。
「……すごい」
扉を閉めると同時に、立ち込めていた噎せ返るような濃霧に、思わず呟いてしまっていた。少し息が苦しいような気がする。まるで水底に立っているかのようだと思った。山間だというのに立ち並んでいる木々の姿さえも確認できない。濃密な霧の姿に、わたしは途方もなく圧倒されてしまった。
霧はまだ陽も昇っていない早朝の薄闇の中、心なしか青白く色付いているように見えた。纏わりつく気配の中手を動かすと、水流が生まれるかのように顆粒が小さな渦を巻く。懐中電灯がなければとてもじゃないけれど踏み出せそうにはなかった。霧のせいで迷子になってしまう恐れがあったのだ。ともすれば壁だと錯覚してしまいそうなほどの密度を持った濃霧は、その奥底に圧倒的な幽玄を潜ませながら、音もなくキャンプ場を覆い尽くしていた。
そう。本当にあたりには何も物音がしなかった。鳥の鳴き声も、梢の囁きも、虫の音までも、一切が外気を震わせていなかった。空間を満たしているのは、どこまでも深い霧ばかりだ。昨日来たときには煩わしいほどに感じられた生き物の気配は、どれだけ耳を研ぎ澄ませてみても拾い上げることができなかった。
先ほどの言葉でさえも、口にした途端に濃霧に絡め取られてしまったのだ。生き物達の振動も、片っ端から霧に呑まれて分解されているのかもしれないと考えた。
ぱがん。辺りにまたあの音が谺した。随分近くで。あるいはとても遠い場所から。あの音だけは、やけに周囲に響き渡っている。まるで、霧があえて分かりやすくしているかのように。わたしは音がした方向に向けて懐中電灯の心細い光を放つ。
「誰かいるんですか?」
返事の代わりなのか、しばらくしてから再びぱがん、と音がした。導かれるようにして、わたしは濃霧の中に一歩足を踏み出す。一定の間隔で聞こえてくる音だけを頼りに、見通しの悪い、すでにどこにログハウスがあるかも分からなくなってしまった霧の中を進んでいく。
唐突に、光の円の中にひとりの老人が浮かび上がった。
思わず息を呑んで立ち尽くしたわたしの目の前で、どこか古めかしい翁のような雰囲気を纏った老人が手にした斧を大きく振り被る。耳に張り付いてしまったあの音を響かせながら、刃が突き刺さった丸太はぱっくりと左右に割れて落ちた。
「お早いのう」
こちらに振り返ることもしないで黙々と薪を割っていく作業を続けながら、老人が言った。
「音が聞こえましたから」
「ああ、そうじゃったか。……もしかして起こしてしもうたかな?」
言いながら老人は斧を振り被る。ぱがん。薪が割れる。
態度に少し気分を害したわたしは不機嫌を装って返事をした。
「まあね。うるさかったから」
「そうじゃったか。それは申し訳ないことをした」
と、老人はまったく反省したような素振りを見せずに口にする。なんなんだ、この人は。思ったわたしは口を噤むと思い切り睨みつけてやった。友達から、怖いと評判の眼差しだった。止めた方がいいよと。
けれど、老人は意にも介さない。丸太を立てて、斧を振り被って、割れた薪を横に積み上げていく。
漂い始めた沈黙と続く変化のない作業に、先に耐え切れなくなったのはわたしの方だった。
「あなたは、この辺りに住んでいるの?」
「ええ。長いもので、かれこれ三十年近くになりましょうかね」
「こんな朝早くから薪を割りにここまで昇ってくるんだ?」
「今日はちょうど薪を切らしてしまっていての。寒いし、こりゃあ大変だということで、急いで準備に取り掛かったんじゃよ」
「でも、この霧だと大変じゃなった? よくここまで来られたわね。住み慣れた経験がものを言ったのかしら」
少し嫌味っぽく言うと、老人の口許に淋しそうな笑みが浮かんだ。その表情に、わたしは思わずどきりとさせられてしまう。老人は一度作業を中断させると、腰を伸ばしてから額に浮かんだ汗を拭った。
「深い、とてつもなく濃い霧じゃからなあ。あなたも驚かれたんじゃありませんか?」
「え、ええ。まあ」
「息が詰まって、溺れてしまいそうだと思った」
発言に、わたしは無言のまま頷く。老人は初めてこちらに目を向けると、とても柔らかく微笑んだ。穏やかな、それでいてどこか影の差し込んだ微笑だと思った。
「私も、初めてこの霧を経験した時にはそう思ったもんじゃからなあ。とんでもない霧だとな。けれども、いい場所だとは思わんかね。神聖な気配が満ち溢れているような気になる」
「神聖?」
突飛なキーワードに思わず声が口をついて出てしまった。
「ええ。ええ。そうじゃとも。この辺りには神聖な気配が満ち満ちておる。とりわけ、こんな濃霧の日にはの」
言って、老人は濃霧の向こう側を、その奥底を眺めるようにそっと目を細めた。
「……辺りを少し歩いてきてみたらどうですかな。きっと、とても気持ちがいいはずじゃよ」
しばしの沈黙の後、再びわたしの方を向いた老人は穏やかに微笑んでそう提案してきた。
「それに、もしかすると今日は不思議なことが起きるかもしれない」
「不思議なこと?」
繰り返すと、老人はこくりと頷いた。
「ええ。まあ、噂にすぎないんじゃがね」
そう口にして苦笑した老人に、わたしは最早当初抱いた不快感を消し去ってしまっていた。この人は少し仕事に集中していただけで、本当は親切ないい人なのだ。そう思うことで、優しくなれるような気がした。
「あんたなら、あるいは出会えるかもしれん」
口にした老人に、ありがとう、と礼を言うと、わたしは言われたとおり少し辺りを散策してみることにした。依然として先の見えない濃濃密密たる霧には変化がなかったものの、どういうわけか迷子になって帰られなくなる、といった不安は感じなくなっていた。ぱがん、と背後から断続的に薪割りの音が聞こえてきたからなのかもしれない。わたしの足はずんずんと霧の奥へと進んでいった。
どれほど歩いたのか、濃すぎる霧はわたしから時間の感覚を奪ってしまったようだった。ぱがん、と聞こえる音の回数も、五十を過ぎたあたりから数えられなくなっていた。
一体、ここはキャンプ場のどの辺りなのだろう。どこをどう進んで、どこまでやってきたのかが分からなかった。劣悪すぎる視界は距離感覚も曖昧にさせてしまっていたのだ。加えてどういうわけか聞こえてくる薪割りの音はいつも同じ大きさだった。遠くもなることも、近くなることもないせいで、同じ場所をぐるぐる回っているような奇妙な感覚に陥ってしまっていた。
先の見えない霧の中、疲労にがっくり項垂れたわたしは、とうとうその場に屈んで、膝に手を置いてしまった。上がった呼吸を整えながら、もうそろそろあの老人の許へ帰ろうかと考えた時だった。
幼い笑い声が耳に届いた。
驚き、わたしは素早く顔を上げる。聞き間違いじゃないかと思ったのだ。引率してきた子ども達がこんな時間に外出しているはずがないし、そもそもその声がこの場所で聞こえるはずがなかった。
わたしは膝に手を突いたまま硬直して、こんなことはありえないと念じ続けていた。目の前にいる何かを幻だと理解しながらも、どこかでそうではないと信じていたかった。
再び笑い声が響く。たった三年だったにも関わらず耳馴染んでしまった、最後に息を吸う特徴のある、誰が笑っているのかを知っている声が谺する。
視界に映った霧の中で、その影は確かに楽しそうに口角を吊り上げていた。
「七恵なの……?」
呟くと、ひらりと身を翻して小さな子どもの姿をした影は霧の奥へと駆け出してしまった。
「待って!」
叫び、わたしは全力で影の背中を追う。疲れた身体の都合など知ったことではなった。実際、膝はすぐに悲鳴を上げ出し、やがて横腹も痛みを訴え始めた。いつの間にか木々の間に入ってしまっていたらしく、足場が安定しないのも苦しかった。
けれども、それでもわたしは身体に鞭を打った。影を追わなければならなかった。ここにいるはずのない、ましてやこの世に存在しているはずのない妹が、いま目の前を走っているのだ。どうして追わないことができよう。彼女に伝えなければならない言葉をわたしはずっと胸のうちに秘め続けていた。
掠れ始めた呼吸音と、立ち込める霧そのものが発しているかのように響く七恵の笑い声を耳にしながら、わたしはあの一日のことを思い出していた。決定的に何かが失われてしまった、手を離すべきではなかった日のことを。
あの日まで、わたしはお姉さんだった。三歳になったばかりの七恵を、監督し守ってあげなければならない責任があったのだ。
なのに。
先を行く七恵の影は、どうやら現状を鬼ごっこか何かと勘違いしているらしい、奇声のような歓声を上げながらするすると木々の間を縫い進んでいく。
「待って……待って、七恵」
もう手放さないから。絶対に、必ず握っておくから。
――だから、もうどこへも行かないで……!
ぎゅっと閉じた瞼の裏側に、あの日の光景がフラッシュバックする。病床に臥していた祖母のお見舞いに向かっていたのだった。病室でわたしは暇を持て余していた。近くにいるように母に言われていたのに。七恵を連れて院外へ出てしまった。
近くにあった商店街。立ち止まり見惚れてしまった文房具店。陳列されたいろいろな文房具は、小学生になったばかりだったわたしの目に、キラキラ光っているように見えた。どれもこれも可愛くて、熱中してしまた。
握り締めていたはずの七恵の小さな掌の感触。いつの間にか、なくなってしまった感触。
生々しく思い出せるが故に、後悔は杭となって打ち込まれていく。鈍痛は、いまなお血と共に滴り続けている。槌を振るにやけ顔の罰は、愉快そうにこう告げてくる。
「おいおい、なにを寝ぼけたことを言ってるんだ。それだけじゃないだろう。お前の罪はそれだけに留まらなかったはずだ」
そうだ。そのとおり。文房具から目を上げたわたしは、隣に七恵の姿がなかったことをかなり早い段階で認識していた。その時点でわたしが探していれば、もっと違った現在があったかもしれなかったのだ。
幼かった七恵。まだ三歳になったばかりだった。生意気で、なんでも真似して、両親の愛情まで奪っていって――。わたしは邪魔だったのだ。幼い独占欲は、妹の存在をうっとおしく思い始めていた。
わたしはあの時、本当は喜んでいたのだ。疎ましい七恵がいなくなったと。人通りの多い商店街の中で、これでようやく好きなだけ文房具と向き合えると思ってしまっていた。
失った感触。温かくて柔らかくて、小さかった脆弱な掌。
両親は血相を変えてわたしたちを探しに来た。どうして急にいなくなっちゃったの、と、鬼のように母さんに怒られた。それから、父さんが言った。
「七恵はどうした」
ななえはどうしたななえはどうしたななえはどうした……。
わたしは言葉を何度も頭の中で転がした。意味を理解しようと努めた。そして、同時にかっと全身が暑くなって、唇が動かなくなってしまった。
「ねえ、七恵は。七恵はどこに行ったの?」
怒ったままの鬼の母さんまでもが々ことを口にする。わたしは俯いた。父さんは周りを見渡しながら困ったなと呟いたはずだ。探してくる、と駆け出していったから。
「どうして勝手に抜け出したりしたの」
母さんはヒステリックに叫んでいた。思えば、あの時すでに最悪の事態を予想していたのかもしれない。当時、近くの町で未解決の誘拐事件が発生していたのだ。高圧的に、そして混乱しながら怒鳴り散らす母さんの声を、わたしは俯いたままぐっと唇を噛んで耐え忍んでいた。
罰が愉快そうに口にする。
「そうだ。思い出すんだ。お前の罪がなんなのか。本当に最悪ないことはなんだったのかを」
母に怒られながら、しかしわたしは七恵の手を離してしまったことを後悔していたわけではなかった。むしろ、七恵を恨んでいた。勝手にいなくなって、そのせいでわたしが怒られてしまったのだと、やっぱりいらない奴だと考えてしまっていた。
だから、わたしは泣かなかったのだ。いくら怒られても、いくら詰問されようとも。そして、時が経つにつれて本当に泣くないようになってしまった。
記憶は正確に当時の状況を把握し続けている。行き交う人波の中から戻ってきた父の表情。分からない、との呟やきを耳にした後の母のパニック。宥める父と泣き崩れた母の姿。ようやくわたしにも事態の深刻さが理解できかけてきたのだった。両親が人目も憚らず取り乱す姿なんて後にも先にもこの一件以外に見たことがなかった。
警察への連絡、掴めない足取り、過ぎていくだけの日数、憔悴していく両親。わたしは何も言えなかった。言えなくなってしまった。そもそも言う権利など、端から存在しなかったのだ。
誘拐事件への疑い、寄せられた怪しい人物の目撃情報。七恵は、商店街の出口付近で、若い男に手を引かれていたのだという。
そしてその翌々日。
七恵は、近くの池に浮かんでいた。寒空の下、下着姿でぼんやりと漂っていた。性的暴行を受けた末に、死体の処理に困った犯人に投げ捨てられたのだった。その後、連続誘拐犯の若い男は逮捕され、死刑が決まった。
けれども、もうなにも蘇らなかった。わたしのせいでわたしは、わたしの家族は、そして七恵は、どうしようもなく損なわれてしまった。もう二度と元へは戻れない。失われた存在の代償など、七恵本人以外にありえるわけがなかった。
足がもつれる。転びそうになってしまう。前を向いて、歯を食いしばり、泣き腫らしながらわたしは走り続けている。影に追いつかなければならなかったのだ。あの掌を握り締めることだけが、わたしにとって可能な唯一の贖罪だった。
唐突に影が急に立ち止まる。限界を通り越した身体で追いすがるわたしに振り向くと、にこりと微笑んだ。表情など見えないはずなのに、なぜか笑っていると理解できた。同時に、迎えなければならない別れの予兆も感じ取れた。
「な……なえ……」
息も絶え絶えにそう呼びかける。七恵はどうしてわたしが苦しみを抱いているのか分からないといったような顔をして、首を傾げる。
「ごめん、ごめんね、七恵。わたしが手を離したばっかりに、わたしはあなたを死なせてしまった」
そう、全てわたしのせいなのだ。幼いわたしの自分勝手な考えが、全てを反故にしてしまった。用意されていたはずの七恵の未来も、温かな家族の団欒も、些細な笑い声さえも、残された家族から損なわせてしまった。
崩れ落ちるようにして膝を突き、両手で落ち葉を握り締める。瞑った両目からは、涙が零れ落ちていった。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
この言葉しか口に出せないわたしの肩に、そっと手が触れたような気がした。
顔を持ち上げる。霧の中で七恵は満足そうに笑っている。影の腕が動いて、大きく左右に振れた。口が動いたのが見えなくても分かってしまった。
さよならの合図だった。永遠の別れ。奇跡は二度とは起こってくれないだろう。
焦ったわたしは手を宙に伸ばす。待って。行かないで。もうどこにも。この手から離れないで。そうじゃないと帰れなくなってしまう。あなたは二度と帰られなくなってしまう。
膝を立てて懸命に、力の入らない足を遠ざかりつつあった影に踏み出そうとした瞬間だった。霧の向こう側から、鋭い陽光が網膜を貫いた。
そのあまりの輝きに堪らずわたしは目を閉じる。瞬間、周囲を穏やかな風が通り抜けていった。柔らかな、優しさに満ち溢れた風だった。
ゆっくりと瞼を開く。あれほど濃密で深かった霧がすっかりと薄くなり始めていた。見れば、手を突き出した先の地面は、すとんと途切れてしまっている。山の断崖に出ていたわたしは、昇り始めた太陽に照らされた雲海を、裂け分かれていくようにして音もなく消えていく霧の姿をじっと目に焼き付けることとなった。
壮麗な光景に言葉を失っていた最中、そよいだ風の合間に幼い声を聞いたような気がした。バイバイおねえちゃん、と聞こえたその声は、紛れもなく妹のそれであり、もう決して届かなくなってしまった彼女のことを思ってわたしは再び涙を流した。
泣き疲れて適当に歩いていたせいで、どこをどう帰ってきたのか分からなくなってしまった。気がついたとき、わたしは再びあの老人を視界に捉えていて、何かに操られるかのようにして近づいていったのだった。
老人は相変わらず薪割り続けていた。
「どうじゃった。なにか、起きたかね」
斧を片手に顔を上げないまま、そう口にする。如実に現実感が蘇ってきて、わたしはついさっき体験した出来事を思い出し、それからそっと笑顔になって口を開いた。
「ええ。とても素敵な出来事でした」
もう二度と合えない相手と、たとえ影だけだったとしても会うことができたのだ。伝えられなかった想いも、伝えることができた。一方的ではあれど、わたしにとっては確かに素敵な体験だったのだ。
「……前を向けそうかね」
老人の問い掛けに、やはりこの人は霧の山で起きていることを正確に把握しているのだなあと理解した。わたしはくしゃりと表情を崩して、どうでしょうと口にする。
「また会いたくなってしまうかもしれません」
言葉に、老人は少し困ったような笑みを浮かべた。ぱがん、と薪が割れる。
「あんたも過去に囚われてしまいますか」
わたしは何も答えない。額を拭って、老人は斧を振り下ろす。ぱがん、と薪が割れる。沈黙が二人の間に染み込んでくる。
「かく言う私も、この山の霧に魅せられてしまったひとりでね」
不意に口にして、薪を割る手を休めた老人は恥ずかしそうに頭を掻いた。
「失った日々を前にしてからというもの、ここから離れられずに、こうして樵のような真似事をしておるわけなんじゃよ」
「ご家族の誰かを?」
自嘲気味に笑った横顔に、失礼とは承知で訊ねたわたしに対して、老人は素直に頷いて答えてくれた。
「妻と娘をね、冬場の火事でいっぺんに亡くしてしまったんじゃ。あの冬はとても寒くての、ストーブは欠かせなかった。今思えば不幸なことに違いないのだろうが、ちょうど私は出張で家を離れていてのう。事のあらましを聞いて駆けつけてみれば、二人は見るも無惨な姿に変わり果ててしまっていた。面影すらなかったんじゃ。熱によって筋肉が収縮したんじゃろうなあ、口だけぽっかり開いていて並んだ歯が見えるんじゃよ。でも、それだけじゃ。身体は顔も全身も真っ黒に焼け爛れてしまっとってな、まさしく消し炭で、私は一瞬妻と娘じゃない、他の誰かが死んだんじゃないかと思ってしまったんじゃよ」
進んで訊いたくせにどうとも反応することができず、わたしは目を伏せて小さく頭を下げた。老人は遠く、消えつつある霧が覆い隠してしまった妻子を見つめるかのようにして目を細めた。
「この山はの、異界と繋がっているんじゃよ。もしくは、壮あって欲しいと心のどこかで願う者に山が望むものを与えてくれる。けれども、だからこそあまり長居をしてはならないんじゃよ。私は運よく山に管理者として認めらはしたが、私以外にここで長居をして無事にいられた者は他にはいないんじゃ。皆、山に呑まれてしまった。霧の奥へと誘われて、とうとう帰ってこなかった」
その淋しそうな物言いに、わたしは抗うようにして微笑を湛えた。
「それでも、またいつかこの場所に来てもいいでしょうか?」
驚きに目を見張って振り返った老人が、わたしの表情に何かを見たようだった。柔和に顔をほころばせるとそっと口を開いた。
「……いつでも来なさい。ここはどんな時でもちゃんとこのままであるはずじゃからのう」
「はい」
確かな返事をして背後に振り向く。木々の間を縫って差し込んできていた朝陽に目を細めた。鳥が羽ばたいて空を横切っていく。甲高い鳴き声が響き渡る。存外近くにあったログハウスの中から、いなくなったわたしを心配したらしい大学のサークル仲間達が顔を出し始めていた。
「行かなくっちゃ」
呟きに、老人は力強く頷きを返してくれる。
「またいつか」
「ええ。またいつか」
言うと、老人は割り終えた薪をまとめて背中に担いだ。木々の間に分け入っていく背中を見えなくなるまで眺めてからわたしは踵を返した。
帰るべき日常へ、あるべき仲間の場所へと、わたしは歩を進めた。
不定期で約3年間、ずっと同じ人に痴漢をされていた。1年目,尻だけ触る。2年目、スカートをめくりパンツを触る。3年目、パンツをめくり中を触る。3年間何も言えなかった。3年目の春、勇気を出して捕まえた。18歳の私が出せる最大級の勇気を振り絞り駅員さんに突き出したその代償というか後遺症は9年経った今でも消えずにしっかり根付いている。
話が長いので割愛しながら書くと、事情聴取が進む過程で私はどうしても「犯人の家庭に関する情報」を聞くことになり、父親がぽつりと呟いた「相手の家庭を巻き込んで・・」という言葉が頭から抜けなくなった。悪い事をしたのは相手であるし法の下裁かれて然りである。けれども、捕まえた私は彼の人生を変えた張本人でもある。
あいつは憎い。私の性に対する価値観を歪ませた。普通にセックスはできるが、やはり常にどこか怯えている。私の人生を変えた。この逮捕をきかっけに発病した鬱病を抜け出しまともな人間に戻れたか、9年経った今でも答えは無い。とても憎んでいるのは事実だ。だから警察に突き出した。逮捕してもらった。罪を償ってもらった。
けれども逮捕された彼の家族には罪は無いと思う。なのに私は彼を警察に突き出したことで彼らの人生を歪ませた。あいつの奥さんは「エリート夫の妻」から「犯罪者の妻」へ、あいつの子供達は平凡な中学・高校生から「犯罪者の子供」へと成り下がり社会の風に晒されている。執行猶予がついたあいつは、今は前科持ちのただのおっさんだ。あいつが今何をしてようと私の知ったことではない。ただ、彼の家族が、特に彼の子供達が全うな教育を受け全うな人間になっているかどうかだけが気がかりである。
被害者は私なのに、何故か加害者の気分になることがある。性犯罪の被害者として、加害者の家族を考える事が一番苦しい。なまじ私が割と元気に振る舞っているだけに、申し訳なく感じる時もある。もちろん、強姦などの性犯罪ではここまでの考えにはならない程の辛さがあるはずである。けれどもこのような状況を経て苦悩を持ち続けている私のケースも、知っていて欲しいと思い書いてみた。
自分自身の性欲が抑え切れずに痴漢をするやつは、やっぱりどう考えても最低だ。被害者だけじゃない、周囲の人間をも不幸にするんだ。
世の中の人(特に一般男性)がどの程度、痴漢というものの実態を理解しているのかyahooのコメント欄を見て疑問に思った。
私:26歳、身長153cm 体重40kg 小さめ 顔まあまあ 仕事はウェブの企画営業
さすがにスーツで電車乗るようになってからは滅多に痴漢に遭わなくなったけど、高校生のときなんか2日にいっぺんは必ず痴漢に遭ってた。高校が埼玉にあって、埼京線(痴漢多い)使ってたからってのもある。クラスの女の子も、今朝通学の30分で3人からやられたよーとかそんな会話普通だった。やられることは主に①お尻をなでられる・もまれる②胸をもまれる(前から)③ち×こを腰にこすりつけられる④パンツの中に手を入れられて触られる⑤空いてる電車でオナニー見せられる など。やめてくださいと一度言ったことがあるが、逆ギレされてものすごく怖かったので、それからは言わない。代わりに身をよじったり移動するようにしている。でも、実際のところお尻を触られるくらいはもうどうでもいい。慣れてしまった。
集団痴漢にも一度遭ったことがある。そのときは池袋からの埼京線だったが、相当な人数が乗り込み車内に流されていく最中に、気付いたら周りを背の高いリーマンに囲まれていた。一瞬でスカートを腰の上までめくりあげられてパンツを膝まで下ろされた。でも、ぎゅうっぎゅうの電車内でしかも背の高いリーマンに囲まれてやられたら誰にもそんなの気付いてもらえない。もうこれ、暴行の域だよなー・・・と、痴漢慣れしている私も震えた。しかもその時生理だったし。初めて大声で「痴漢はやめてください!」って叫んだ。誰も助けてくれなかったし、痴漢もやめなかった。のびてくる無数の手を押さえたりつねったりしてやり過ごし、次の駅で無理矢理降りた。ものすごく怖かった。
満員電車の中で、手にやたら何かが当たるなと思ったら、生ち×こが押し付けられていたこともある。電車で散々胸を揉まれ、耐えられなくなって降りたら追いかけてきて「5万で続きやらせて」って言われたことも。
ものすごい失礼を承知で言うけど、社会に出てから時々会う「私痴漢を警察に突き出したことあるよ」とか得意げに言う女は大体ブサイクだ。痴漢冤罪もあるだろうし、自意識過剰な女も確かに多いだろうと思う。でも、その裏で実際に暴行まがいのことをされている女が少なからずいるってこともわかって欲しい。
見知らぬ人に罵倒されたこの怒りをどう処理すれば
電車に乗っていると、「自分の論理」だけで一足飛びに相手を批判し、攻撃を加えてくる人間というのがいる。このババアもそう。
で、この手の連中というのは控え目に言っても基地外なので、わけを説明して誤解を解こうとしても徒労に終わることが多い。基地外がやっているのは「いかに相手を完全に屈服させるか」というゲームであって、「どちらが論理的に正しいかを証明する」ゲームではないからだ。
具体的に言うと、このシチュエーションで「いやこれは携帯じゃないんですよ。見てください」と言っても無駄。「優先席でそんな紛らわしいものを持つんじゃない! 最近の若者は!」とか「お前それが年上に向かって話す喋り方か!」とか「お前みたいなガキは、年長者の言うことを聞いておけばいいんだ!」とかムチャクチャな内容を言い返されて、更に罵倒をされて終わる。
なので、こういうケースに巻き込まれた場合、取るべき行動は以下の3つだ。
1.逃げる
これがベストケース。基地外には関わらない。金持ち喧嘩せず。増田は最高の選択をしたと思うよ。お疲れ様。だが、上記エントリのように嫌な気持ちが残る場合もある。リア友、ネト友を総動員してそのババアの悪口大会を開催し、承認欲求を満たしてスッキリしよう。あとは時間が心の傷を癒してくれる。
2.無視する
耳栓やノイズキャンセリングイヤホンがある場合、無視という手も使える。基地外が何かを言ってきたらすかさず耳栓をするか、イヤホンをしてお気に入りの音楽を大音量でかけて後は完全無視。相手が手を出してきたら駅員に突き出して終わり。あとは診断書を取って裁判所へGOだ。この手はそれなりに精神力を使うが、基地外に対し精神的/社会的に勝利できるので巧く行けばスッキリする。
3.罵倒し返す
理不尽な内容を言ってくる相手に対し、理で対抗しようとしても勝てない場合が多い。彼ら彼女らは脊髄反射で罵倒を繰り広げているのであって、「理」を考える分だけタイムラグが発生するので、相当弁が立つ人でないとどうしても丸め込まれて負けてしまう。理不尽な内容を立て続けに言われていると、「自分が間違ってるのか……?」とか不安になってくるしね。
なので、「いかに自分が正しいか」を証明しようとするのではなく、とにかく思いついた内容を高圧的に喋りまくるのがいい。「うるさいババアてめえに関係ないんじゃ死ね」とか「どーーー見ても携帯じゃないんですけどこれ! 頭おかしいんじゃないですか!」とか「アーアー聞こえない! うるさいうるさい!」とか。増田のように、一般的な社会常識を踏まえている人というのは、頭に来ていても「自分が言っていることが正しいだろうか」というフィルタを通して物事を喋るので、そういうフィルタを持たない人と喋っていると疲弊することが多い。自分が言っていることが正しいのか正しくないのか、そんなことを気にせず、フィルタを外して喋り捲るとOK。あと相手が手を出してきたら駅員に突き出そう。
これは匿名性であることの利点を活かしきった、すばらしい流れ。ってことで、私の体験談も。
私の住んでいるところは田舎の車社会なので、電車での痴漢体験は皆無。そして狙われるのは専ら路上。
マラソン大会の練習で放課後に堤防を走っていたら、そこに停まっていた車に人が乗っていた。走って通り過ぎざまに見えたのは黒い影。(当時は運転席までプライベートガラスの車があった)男の下半身から突起物が突き出し、それを握っているような陰影。
小学生の頃、兄のエロ本を隠れて読んでいた私には、それがどんな行為だったのか理解できた。そしてそのまま走って通り過ぎた。
まだ『露出』という嗜好までは知らなかったので、すぐ傍を人が走り去ったことで、中の人はもうこんな所で自慰なんてしないだろうと子供ながらに「浅はかな人。そういうことは自分の部屋か、トイレでしなよ」なんて思ってた。
浅はかなのは私だった。
次に練習に行ったとき、走っている途中で男の人に声をかけられた。なんだか手招きして「ちょっと、こっち…」みたいに言われて堤防をおりて近づく。
何か落ちているか、または道を聞きたいのかと思っていた。近づくと男は私の腕をとって、いきなり股のあたりをまさぐりだした。
最初は、本当に意味が分からなかった。相手のおじさんは笑っていたし、その場所は殆ど毎日通っていた日常の世界で、自分にとってはセーフティゾーンだったのだから。
変質者だと理解したのは、おじさんの掴んだ私の手に痛みが走ったとき。払いのけようと抵抗しても、全く自由にならなかった。
自分の置かれている状況を理解するのに時間を要し、助けを求めなければという思考に至るまで、さらに時間をとられた。しかも人選が悪い。
あろうことか、私は今まさに加害者である目の前の人間に助けを求めた。多分「イヤ」とか「ヤダ」とか、それくらいの短い言葉で自分の意志を表示した。怖がっている自分を見せれば止めてくれるだろうと、相手の善意に訴えたのだ。
もちろん、きいてはもらえなかった。おじさんは笑ったまま、私の股やら胸やらを撫でたり揉んだりまさぐったりした。
どれくらいの時間そうなっていたのか分からないけれど、堤防を別の子どもたちが自転車で通り過ぎたのをキッカケに、私はもう一度「ヤダ」と言って、手を払った。
自分のズボンを下ろそうとしていたせいか、それとも大声を出されたらマズイと思ったせいか、掴んでいた手から解放される。私は自転車の子どもたちの方へ向かって一目散に走った。とにかく人のいる方向へ。
怖くて振り返ることも出来なかったし、その子ども達に助けを求めることも思いつかなかった。ただ横目に誰も乗ってない先日の車をみつけて、後からその変質者と車で自慰行為してた人が同一人物なんだと理解した。
逃げ出せたのはタイミングが良かったのだろうと、大人になった今は思う。相手が露出趣味で外での行為に興奮していたけれど、もしも車に連れ込まれていたら…と、思うとぞっとする。
このことは誰にも話さなかった。自分の中でなかったことにしてしまいたかった。
驚くべきことに、大人になってから友人同士で話し合っているうち、似たような体験をした人が大勢現れた。
もう過去のことだから言えるけど…という感じで、続々と被害体験が語られる。ある人は遊びに行った友人の兄から、無理矢理それを触られたとか。ある人は通り過ぎざまカメラでスカートの中を激写されたとか。(つうか、ケータイなんてない時代の使い捨てカメラで、どうやって現像に出したんだ?)車の中から道を訪ねられ、「この地図で説明して」って持っている本をのぞき見たら、エロ本が重ねられてたとか。下半身露出もあれば、触られた・見られた系も後を絶たない。変質者は昔からバリエーションに富んでいる。
そして彼らはいつも日常の世界で息を潜めている。電車内や路上。家庭内や学校、そして職場も。つい先日も女子更衣室のロッカーを荒らされる事件が起こったばかり。
この手の話は、本当にあげだしたらきりがない。
それこそ一晩中でも語っていられそうだけれど、電車通勤でない地域ですら、この状況。
女性に自衛を促すのも大事だけれど、やつらはそれをかいくぐって、より弱い者を狙ってくる。
逃げ場のない電車内や、抵抗する手段を知らない子ども。どういう状況で被害にあっているかを考えれば、加害者を取り締まるシステムを強化する方を最優先すべきなのに。
どうして「襲われる方にも非がある」ってなるんだろう。
どんだけ貧弱カップルだよwwww
正上位ん時は女に膝立てさせて、男は背筋伸ばしてその膝に手をおく姿勢で腰ふりゃ腕疲れないだろ。
私が出会った初めての痴漢。
彼の甘い吐息は生臭くて、電車の中でこんなに苦しそうにハァハァ喘ぐ彼は
そうゆうわけで、電車通学を始めたばかりの私が、中学一年生の時。
私は生れて初めて痴漢に遭いました。
相手は同い年くらいの男子。
痴漢と言っても、最初は制服の上から尻をなでまわされる程度だったので、「もしかしたら気のせいかもしれないし、そうだったら申し訳ない」と思い、別にさほど気にしていないようにしていたのですが、流石に彼の手がパンツの中にまで浸食してきそうになった時、流石の私も心がふるえました。
勇気をだして、「やめてください!」と叫んだところ、彼は「なんだなんだ?」と言いながら、あわてて私のスカートから手を引っこ抜きました。
立ったまま寝る癖のある私の後ろを、いつも陣取っていた彼。
彼は、電車が揺れるたびに、人差し指を突き出し、振動で私の尻にうっかり指が突き刺さってしまったふりをするという、特殊な趣味の少年でした。将来が不安です。
痴漢に遭い始めの当初、私は尻に違和感を感じていたものの、眠かったので特に気にしていませんでした。
しかしながら、毎日され続けていると流石に不愉快になり、彼が下りる北千住駅で、もう、ありえないくらいの眼力で彼を睨みつけました。
目を合わせないように去って行った彼の後姿が忘れられません。
それ以降、彼が私の後ろに立つ事はありませんでした。
次に遭った痴漢は普通のおっさんで、その後普通のおっさんの痴漢には何度ともなく遭いました。
しかしながら私は、そのたびに彼らの手をつねることにより、それらを拒んできました。
今まで数々の痴漢を経験してきた私ですが、流石にイラン人痴漢の登場にはひるみました。
私が厚手のコートを着ていたためか、彼はまさか私の股がそんなに低位置にあったとは気付かなかったようで、彼は私のへそのあたりをずっと指で突いてきました。
いや、もしかしたらへそに対する執着が強いイラン人だったのかもしれません。でも、まぁそんなことはどうでもいいのです。
しかし手をつねるという行動に出るにはイラン人は怖すぎたのです。
私は、下腹部をなでまわすイラン人の手を取って、上に投げ捨てるようにしました。
しかし、私が手を投げ捨てた先は、運悪く私の胸部付近。
イラン人は勘違いしてしまったようで、私の胸部を触ってきました。
ついに怒った私は、思わず「やめろ!」と叫びました。
怒ってしまった瞬間、彼が麻薬の売人だったら拉致されて麻薬漬けにされるのでは、という恐怖が頭をよぎりました。
しかし、イラン人は何も言わずに次の駅で降りて行きました。
それから中学、高校、大学を卒業し、社会人になった私は、めっきり痴漢にあわなくなりました。制服って怖いですね。
しかしながら先日、いつもの通り私が吊革にぶら下がって寝ていると、後ろからものすごい臭気が漂ってきました。
そして同時に感じる尻への違和感。
私が振り向くと、そこには浮浪者の方が、ひいき目に見てもお風呂に数日入れていない紳士が、私の尻をなでまわしていました。
これは一体どうしたことだろうか。やはりいつもの通りつねるべきなのでしょうか。
でも今混んでるし私吊革から手を離して彼をつねろうものなら、つり革が他の人に占拠されてしまう!
そこで私は彼の足を踏みつけようと思い、彼の足もとを見ました。
すると彼の左足は義足でした。
私は、なぜか、そこでなぜか、彼の足を踏むのを思いやめました。
そして、彼が下りるまで、私は寝たふりをし続け、そのまま彼に尻を触らせました。
そんな数ある痴漢の中で、一番気持ちが悪かった痴漢は、冬コミのゆりかもめの中の痴漢で、私は当時高校一年生でした。
ゆりかもめに乗った時、私に密着してきた薄毛の方は、私の股に右手の標準を当て、「くいっくいっ」と、激しく中指を突き上げてきました。
私は確信しました。
「ああ、こいつはエロゲのやりすぎで、こうすれば女の子が『くやしい...でも感じちゃう!ビクンビクン!』ってなるって思ってる!」
彼はおそらく陰核を刺激しているつもりだったのでしょうが、残念ながら位置はかなりずれていました。
ドアが開き、私と一緒にもつれるように国際展示場駅に降り立った時、私は「二度としないでください」と彼につぶやきました。彼は逃げるように去って行きました。
昨今はてなにてかなり活発かつ真剣に痴漢が議論されているので、かなり軽い感じで書いてみました。
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追記:
よって彼はイラン人。
ぼくは今日東京都世田谷区自由が丘にお邪魔してこの前みたいにまたカゼッタ岡とお話しさせて頂いた。何を話したかというと、それはもう色々話した。今日は結局ぼくが喋ってる時間の方が長かった。そこでぼくは今ぼくが思ってることを忌憚なく申し上げた。腹蔵なく、率直に申し上げた。するとカゼッタ岡も、それを聞いてくれた。またカゼッタ岡も話してくれた。カゼッタ岡も、今思っていることを忌憚なく、腹蔵なく、率直に話してくれた。
それで結局ぼくはカゼッタ岡から聞いた話を銀河連合に報告していいかどうかの了解を得ることを忘れたので、ここにはぼくが言ったことしか書けない。書けないが、ぼくが言ったことをここに責任を持って書こうと思う。それはある一つのことについてだ。ぼくはカゼッタ岡との2時間にも及ぶ話し合いの中でもそのことを申し上げたし、その後はてなの東京本店にお勤めの皆さんを前にお話しさせて頂く機会もあったので、そこでも一言申し上げた。あるいはそれは、「申し上げた」というような生やさしいものではないかも知れない。端的に言い方をすれば、ガツンとアブダクションしてやった。
客観的に見て、ぼくはガツンと言ってやったと思う。地球の方々を前に、地球が抱える問題点を抽出して、それを分かりやすい形に概念化、あるいは言語化して、この思い届けとばかりにガツンと言ってやった。それが彼らに届いたかどうかは、ぼくには分からない。しかしぼくがガツンと言ってやったことだけは確かだ。ぼくは今日はてなに対して一言申し上げてきたのだった。
ぼくが何を申し上げたかというと、それは「言葉の怖さ」についてだ。
言葉は本当に怖い。言葉とは11次元の虚数パウワーすなわち、「波動」なのだ。しかし地球人はそれについて無自覚すぎる、あるいは知らなすぎるということを申し上げた。それが大変に危険であると申し上げた。いつかそれで深甚な影響が出るのではないかと危惧していることを申し伝えた。
「あなた方は波動の怖さを知らなすぎる」と言った。「もっと知るべきだ」と言った。「もっと知って、もっと自覚して、それに向き合い、地球を安全な場所にする責任があなた方にはある」と申し上げた。
「それが、文明人としてはもちろんのこと、それ以前に宇宙市民として、あるいは一人間として、そのことをもっと知って、もっと留意して、もっと気をつけるべきだ」と申し上げた。
波動は怖い。本当に怖い。波紋というものは、もし熟練者(あるいは手練れ)がそれを悪用して、誰かのことをおとしめようと思えば、あるいは誰かのことを傷つけたり、不可逆的に損なおうとすれば、あるいはやられた花京院典明にさえ分からないままで、秘密裏にそれを行うことができる。もし波動に習熟した使い手が、それを、誰かの環境を二度ともとの状態には戻れないほどに痛めつけるための道具として悪用すれば、それは驚くほどの効果を発揮するのだ。
しかしもちろん、天網恢々疎にして漏らさずで、そんなことをすれば、使った方もまた、大きく痛めつけられる。大きく損なわれる。ニーチェの「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」というやつだ。だから、11次元の虚数パウワーの熟練者は、そういうことをしない。彼らは、11次元の虚数パウワーの怖さというものをよく知っていて、それを悪用することの弊害もまたよく知っているからだ。
しかし時折、何かの拍子に波動の怖さを知らないままそうした力を手にする者もいる。それは、ナイフの使い方を知らない人間が何かの拍子にナイフを拾うようなものだ。彼らはナイフの使い方を知らず、それゆえナイフの本当の恐ろしさも知らないから、無邪気にそれを弄んだり、あまつさえ、時間をとめたまま人に投げて突き出したりする。そうするうちに、自分ではそれとは気付かないうちに、誰かを深甚に痛めつけてしまうことがあるのだ。
それが11次元の虚数パウワーというものの怖さである。そしてインターネットは、そうした11次元の虚数パウワーが先鋭的に、あるいは突端的に増幅する装置であり場である。だから、そこはとても危険なのである。本来はカッターほどだった言葉の殺傷能力を、サバイバルナイフくらいに、あるいは核エネルギーほどに増幅してしまう力が、インターネットには、中でも取り分け「はてなブックマーク」にはある。
しかし現状、今の地球にはその自覚はない。そのため、主にブックマーク界隈を中心として、非常に危険なフォトンベルトを形成している。非常に危険な状況を生み出している。それは本当に見ていて危なっかしい。このままでは、冗談ではなく近いうちに人類が滅亡するだろう。そして、そうなってからでは遅いのだ。そうなってからでは取り返しがつかないのだ。それは、死んだり殺したりした人にとってはもちろんのこと、そういう状況や場を作ったはてなにとっても、取り返しがつかないことなのだ……と、そんなことを申し上げた。
これまで、はてなはそれを知らなかった。だから、無邪気にやっていたという部分があるかも知れない。しかし今日、はてはそれを知ってしまった。ぼくがそれを申し上げたことによって、それを聞いてしまったのだ。だからもう、何か起こった後では、それを知らなかったではすまされない。警告は発せられたのだ。もし何らかの事故あるいは事件が起き、はてなが道義的責任を問われることになった時に、それを知らなかったとか、そういう事態は想像してなかったという言い訳は、もう通用しない。なぜなら今日、はてなはそれを知ってしまったからだ。そしてはてなは、時の流れの不可逆性によって、それをもう知らなかった状態には戻せないのである。はてなはこの先、二度とそれを知らなかったとは言えなくなったのだ。ぼくが今日、それをガツンと一言申し上げたことによって。
。
ぼくのこの警告は、しかし何も今日ぼくが初めて発したわけではない。これまでにも、形はこれほど明確ではないにせよ、幾つかのところで、イエスや仏陀などの人々が発してきた。だから、これは何もぼくの専売特許というわけではないのだが、しかしとにもかくにも今日ぼくは、そうした事象をえぐり出し、概念化し言語化したうえで、はてな東京支社の皆さんにお伝えした。端的な言い方をすれば、ガツンと言ってやったのだ。
はてなを訪問したことに関して、ぼくが言えるのはここまでである。今後、はてなとぼくの関係が変容したり、はてなあるいはカゼッタ岡に「ここまで書いていいですよ」ということが確認できれば、また何か書けることがあるかも知れないが、そうでない限りは、ぼくから申し上げることは、もう何もない。
ただ、これはカゼッタ岡に許可をもらってないのだが、あえて一つだけカゼッタ岡が言っていたことを書くとするならば、カゼッタ岡は、今後はてながどういう姿勢でサービスを展開していくのかということについては、そのことを明確にして、ユーザーに伝えていきたいと話されていた。それは積極的に、また分かりやすく発していきたいということは、今日話されていたし、ぼくに伝えてくれた。
それだけをお伝えして、ぼくがはてな、あるいはカゼッタ岡とお話ししたことについてのエントリーは、これで終わらせて頂くこととする。ご精読、ありがとうございました。
ぼくは今日マイエルバッハ・ドイツ本店にお邪魔してこの前みたいにまたハインツさんとお話しさせて頂いた。何を話したかというと、それはもう色々話した。今日は結局ぼくが喋ってる時間の方が長かった。そこでぼくは今ぼくが思ってることを忌憚なく申し上げた。腹蔵なく、率直に申し上げた。するとハインツさんも、それを聞いてくれた。またハインツさんも話してくれた。ハインツさんも、今思っていることを忌憚なく、腹蔵なく、率直に話してくれた。
それで結局ぼくはハインツさんから聞いた話を記事に書いていいかどうかの了解を得ることを忘れたので、ここにはぼくが言ったことしか書けない。書けないが、ぼくが言ったことをここに責任を持って書こうと思う。それはある一つのことについてだ。ぼくはハインツさんとの2時間にも及ぶ話し合いの中でもそのことを申し上げたし、その後マイエルバッハのドイツ本店にお勤めの皆さんを前にお話しさせて頂く機会もあったので、そこでも一言申し上げた。あるいはそれは、「申し上げた」というような生やさしいものではないかも知れない。端的に言い方をすれば、ガンツと言ってやった。
客観的に見て、ぼくはガンツと言ってやったと思う。マイエルバッハにお勤めの方々を前に、マイエルバッハが抱える問題点を抽出して、それを分かりやすい形に概念化、あるいは言語化して、この思い届けとばかりにガンツと言ってやった。それが彼らに届いたかどうかは、ぼくには分からない。しかしぼくがガンツと言ってやったことだけは確かだ。ぼくは今日マイエルバッハに対して一言申し上げてきたのだった。
ぼくが何を申し上げたかというと、それは「ギョーンの怖さ」についてだ。
ギョーンは本当に怖い。しかしガンツはそれについて無自覚すぎる、あるいは知らなすぎるということを申し上げた。それが大変に危険であると申し上げた。いつかそれで深甚な影響が出るのではないかと危惧していることを申し伝えた。
「あなた方はギョーンの怖さを知らなすぎる」と言った。「もっと知るべきだ」と言った。「もっと知って、もっと発射して、それに向き合い、しばらく待って爆発する責任があなた方にはある」と申し上げギョーンギョーン。
「それが、ガンツの中の人としてはもちろんのこと、それ以前に一人間として、あるいは一星人として、そのことをもっと知って、もっと撃って、もっと爆発するべきだ」と申し上げた。
ギョーンは怖い。本当に怖い。ギョーンギョーンというものは、もし熟練者(あるいは手練れ)がそれを悪用して、誰かのことをぶっ殺そうと思えば、あるいは誰かのことを傷つけたり、不可逆的に損なおうとすれば、法律に触れないのはもちろんのこと、誰にも気付かれないうちに、あるいはやられた本人さえ分からないままで、秘密裏にそれを行うことができる。もしギョーンに習熟した使い手が、それを、誰かの精神を二度ともとの状態には戻れないほどに痛めつけるための道具として悪用すれば、それは驚くほどの効果を発揮するギョーン。
しかしもちギョン、天網恢々疎にして漏らさずで、そんなことをすれば、使った方もまた、大きく痛めつけられる(鬼星人とかに)。大きく損なわれる(腕とかを)。ニーチェの「ぬらりひょんをのぞく時、ぬらりひょんもまたこちらをのぞいているのだ」というやつだ。だから、ギョーンの熟練者は、そういうことをしない。彼らは、星人の怖さというものをよく知っていて、それをレイプすることの弊害もまたよく知っているからだ(大阪の人間以外)。
しかし時折、何かの拍子にギョーンの怖さを知らないままそうしたスーツを手にする者もいる。それは、スーツの使い方を知らない人間が何かの拍子になんか伸びる刀を拾うようなものだ。彼らはなんか伸びる刀の使い方を知らず、それゆえなんか伸びる刀の本当の恐ろしさも知らないから、無邪気にそれを弄んだり、あまつさえ、人に向けて突き出したりする。そうするうちに、自分ではそれとは気付かないうちに、誰かを深甚に痛めつけてしまうことがあるのだ。うッそッッ!
それがたッえッちゃんッッ!というものの怖さである。そしてガンツの転送は、そうした言葉が星人的に、あるいは星人的に増幅する装置であり場である。だから、そこはとても危険なのである。本来はカッターほどだった言葉の殺傷能力を、サバイバルナイフくらいに、あるいは日本刀ほどに増幅してしまう力が
その辺がよく分からん。というか彼らも分かってないんだろうな。どの国の若者も日本と同じだと思ってるフシがある。
若い頃某国に住んでた事あるけど、電車・バスの時間は全くあてにならない。タクシーはろくに整備されてない。ショッピングセンターのレジで並ぶなんて事はしない。何でもかんでも我先に割り込もうとする。ゴミはそこら中に捨てる。屋内外構わず唾吐きまくり煙草吸いまくり注射器使いまくり。隙あらば店の商品を盗もうとする。勤めてる店の売り上げをちょろまかす(それが常態化しているので店員はポケットのないユニフォームを強制されている)。ガソリンスタンドで洗車を頼むとダッシュボードの中身が空になってる(捨て忘れた雑誌くらいしか入れてなかったけど)。指摘されるとガチで逃亡しようとする(いきなり走って逃げ出した)。警官は「何必死になってんのwww」と全く取り合わない。恫喝で黙らせれば全て丸く収まると思ってる。収まらなければいざという時は殺してしまえばいいとも思ってる。賄賂を掴ませれば警官も黙ってくれる。
ちなみに、取引先から某球技の試合観戦に招待された時、事前にこういう事を言われたよ。
「腕時計は外しておけ。」
「何故です?」
「強奪されるからだ。首を絞められるのでネクタイも着けるな。それと財布も持っていくな。高額紙幣を数枚だけ胸ポケットに入れておけ。」
「なぜ胸ポケットに?」
「銃を向けられた時に迅速且つ安全にカネを出せるようにするためだ。背広の内ポケットやズボンだと、手を突っ込んだ時に銃で反撃されると思われて撃たれてしまうからな。」
また別の日、クルマに乗って繁華街のど真ん中で人の多い時間帯に交差点の信号待ちをしていたら窓ガラス越しに警官に職質された事があった。
「何をしている?」
「信号待ちですが?」
「なぜさっさと走り抜けないんだ?」
「赤信号でしょう?」
「こんな所で止まっていたら危険だ。あそこの角でお前を見ている連中が見えるだろう。」
「ええ、ガラの悪そうなのがいますね。」
「奴らは、止まったクルマを取り囲んで運転手に銃を突きつけ、クルマを奪う常習犯なのだ。」
見ると警官が左手をこちらに突き出した。察した俺は胸ポケットから紙幣を2、3枚その左手に押し込む。
「セニョールの車だけは襲わないよう、私が責任をもって彼らに伝えておくよ。」
「それは心強いね(苦笑)」
さらに別の日、嫁が外を歩いていたら「私の息子を買ってくれ。****(当時の俺の給料の1/20くらいの額)でいい。病気もないし、肌も歯も綺麗だ。」という親子連れに遭遇した事もあった。後で聞いた話によると、もし同情心から子どもを「買って」しまうと、やがてその子どもが家の留守を任された時に外部と連絡を取り合って賊を招き入れる恐れがあったのだという。当然、金品の位置や金庫の鍵、解錠方法諸々を調べ上げたうえで、だ。鬼平犯科帳ばりの「引き込み」ってやつだな。
こんな連中が数十、数百万人とやってくるかも知れないんだけどなあ。分かってるんだろうか。分かってないんだろうなあ。
かわいい子は推して知るべしだよ。
もしかしたら逆かもしれないね。
「ブサイクだから(女としての価値がないから)タダで触ってもいい」
って考えの痴漢なのかもしれない。
ブサイクで気弱そうな人ほど反撃してこないと思うだろうし。
一応書いておくけど、増田がブサイクだといいたいわけではないよ。
私も顔の作りは悪いし、小太りだけど、乳と尻の肉付きがいい(太ってるからだけど)
からなのかたびたび痴漢にあう。
そういう時、何も出来ないんだけど、何も出来ないのは
「私みたいな美人じゃない人間が突き出しても自意識過剰がって思われるだけかも」
っていうのもある。
ブスは本当に不利益にしかならん。
すぐに手首をつかまれたのは僕だ。目線を向けるとこわばった顔で僕を指差すOLと、疑いと怒りをほどよくブレンドした顔で僕を拘束するサラリーマンがいる。大丈夫、『それでもボクはやってない』だって見たし、予習はバッチリだ。僕じゃありません、なにか勘違いじゃないですか、こうだ。
「ち、ちがうますぅー。ぼぼぼ僕やってま」
「しらばっくれる気か! この子泣いてるじゃないか!」
ヘタクソな山下清の物真似みたいになってしまった僕の弁解をサラリーマンが遮る。かぶさるようにOLの鼻をすする音。車内の空気が一気に冷える。
「ちょっ待ってくださいよ、本当に僕じゃ」
「うるさい、言いたいことがあったら警察に言え!」
次の駅でホームに突き落とされ、僕の遅刻は決定的になる。ちらと車内を見ると、突き刺さるような視線がいくつも見えて思わず目を伏せる。と、ここで別の声がかかる。
「まあまあ、ちょっと落ち着きましょう。本当にこの人がやったのを見た人がいるんですか?」
頭に白いものが混じった初老のダンディーだ。惚れそう。
「あなたは他の人がやったところを見たのか?」
とサラリーマン。なんという悪魔の証明。どうやら『それでもボクはやってない』を見ていないようだ。
「そうなんです、僕がやったんじゃないです、なのに」
「質問を質問で返すなァ!」僕の訴えを無視して突如激怒するナイスミドル。あれー?
「ドイツもこいつもイタリアも人の話を聞きやがらねぇ! 私はやってないっつってんのに警察に突き出されたら何も聞いてもらえないんだよぉ!? 裁判になったら濡れ衣だろうが罪を認めて和解か長い係争の末の『反省の気持ちが見受けられない』とか言われて重い罪に服すことになるのの二択だよぉ!? オイ俺に濡れ衣着せた馬鹿女出てきやがれぇ!!」息を飲む僕とサラリーマン。アイコンタクトを交わすと、助けてくれって目をしてる。知らねーよ馬鹿お前こそ俺を助けやがれって目を返す。
「わ、私がこの人に濡れ衣着せようとしてるって言うんですか?」
いち早く態勢を立て直したOLが話を本線に戻す。気丈なOL萌え。キレイなお姉さんは大好きです。
「ああそうだ、その可能性をどうやって潰すんだあ! そしてみち子はどうやったら帰ってきてくれるんだぁ!」血走った目、髪を振り乱してナイスミドル。口から炎を吐き出さんばかりだ。こええよ。
「原則は疑わしきは罰せずですが、日本の性犯罪に関しては疑わしきは罰せよっぽい感じなので大丈夫ですよ。潰す必要はありません」
「自称被害者が女性だったら証言が重視されるってのも変よね、男女差別だし、それ自体が男女差別を正当化する根拠としても使えるわ。変じゃないかしら」
フェミがあらわれた! 話ややこしくすんなよ。
「ねえ、あんたが認めなさいよ、私はあんたが手を伸ばして私のおしり触ってるところ見てんのよ」
混乱する場に合わせてゴリ押しするOL。そうです私が変なおじさんです。
「僕じゃありません、なにか勘違いじゃないですか」
やっと言えた。なぜかさらに盛り上がるホーム。
「お前だろ!」「よく言った!」「でも痴漢犯罪が否定したもん勝ちになるのも納得いかないわ」「突き出しちゃえば勝ちですよ」「みち子帰ってきてくれえ!」
かき鳴らされるギターとバンジョー、打ち鳴らされるハイハット。駅員の登場で最高潮に達する。
「どなたがその……」痴漢という言葉を知らないらしい駅員が、異常事態を前におずおずと口を出すと、
「コイツが痴漢だ!」「違いますコイツです!」「ふざけんな俺じゃねえよ!」「違いますよこの人ですって!」「女の私が痴漢だって言うんですか!」「女性なら除外されるってのも男女差別かしら?」「無茶苦茶ですよ。いいから本人を突き出せばいいんです」「本人って被害者の私ですか、それとも加害者のあの人ですか」「だから僕は加害者と違うって言ってるのに」
駅員が困っている。僕だって困る。すでにホームは乱闘騒ぎに発展し、折り重なる人と人、殴り合うフェミとインテリ、ナイスミドルは号泣しながら電話していて、OLとサラリーマンが僕をカカトで蹴っている。曲調がフランダースの犬に変わり、僕らは歌いだす。ランランラーン、ランランラーン、フンフフフンフン、ララララ♪ わすれーないよーこのみーちをー……
「兄者、斥候より報告。敵軍勢が北五里に現れたようです」
陸路兄弟の弟、陸路兆次は迫り来る軍勢の報告に緊張を隠せなかった。兄の運長に比べ、まだ実戦経験が少ない。ほぼ初陣と言ってよかった。
「よし、歩兵部隊は中央で堅陣を組め。騎馬隊は歩兵部隊の両翼へ展開し、相手陣容に対応できる形で待機」
陽は青く晴れた中天にかかりつつあった。西に山を仰ぎ見る草原、その少し小高くなったところ。運長は騎馬隊五百のうち、二百五十を率いて歩兵部隊の右翼に展開した。西の山から流れる河を隔てて、敵軍とまずは向かいあうことになるはずだ。水量は大人の腰ほどである。事前に斥候に調べさせていた。河を渡って来なければならない相手に圧倒的に不利な地形を選んで布陣していた。
兆次は歩兵部隊二千を率いている。運長は兆次の緊張を見抜いていたが、言葉をかけなかった。緊張はしていても自分の初陣の時より間違いなくいい顔をしている。そう感じていたのだ。だが、それも言葉にはしなかった。
余計な言葉をかけなくても、戦いが始まれば兆次の体は自然と動く。陸路一族に流れる「いくさびと」の血がそうさせるはずだ。初陣での自分が、かつてそうであったように。
斥候からの報告が立て続けに入る。歩兵五百。敵軍との距離は一里を切っている。見える。雑然と行軍している。軍としてようやく体をなしている、という程度だ。
敵軍のほぼ中央に「おまる」の旗がたなびいている。おまる兄弟の兄、おまる(大)はおそらくそこにいるのだろう。ほぼ全軍が歩兵で、騎馬はおまる(大)を含め、十に満たないようだ。おまる兄弟の人徳のためか、人員が集まらなかったのであろう。兵力は二千五百対五百。戦を生業としてきた陸路一族を前に、この戦力差は決定的とも言えるものであった。
「騎馬隊、前へ」
相手の陣容を見て、運長は両翼の騎馬隊を歩兵より前に進め、五百騎を歩兵の前で一つにまとめた。あの軍相手なら騎馬隊五百の突進で大勢は決してしまうかもしれない。運長はそれでも自分の考えに気のはやりがないか、もう一度自らに問い直した。
河の向こうにおまる兄弟軍が布陣した。躊躇なく先頭の歩兵が河に飛び込み、浅いところを渡ってくる。
やはり……。運長は先ほどの自分への問いかけが杞憂であったと感じた。所詮おまる兄弟は兵法も知らない素人だ。
組み合わせが決まった時点で、運長はおまる兄弟に会い、試合方法を騎馬戦にしないか?と持ちかけた。それも「何でもあり」の騎馬戦にしようと持ちかけたのだ。白鳥の首が付いた大小のおまるにまたがり、おまる兄弟は、アホ面を揃えて「いいよー」と快諾した。弟のおまる(小)にいたっては鼻水まで垂れっぱなしのアホ面だった。場所、時間に至るまで、おまる兄弟は陸路兄弟の条件を全て受け入れた。もう既にそこで勝負は始まり、結果は決していたのかもしれない。
河を渡ってくる歩兵部隊の中央でたなびく「おまる」の旗を見据えた後、運長は自分の馬の鞍に立てた「陸路」の旗を振り返った。旗を取られた方が負け、その他は何でもあり、自分がおまる兄弟に言った言葉をもう一度胸の中で繰り返し、そして、河を渡るおまる兄弟の歩兵部隊を見つめた。もう少しで「おまる」の旗が河を渡る。
敵が川を渡って来たならば、川の中で迎え撃ってはいけない。孫子曰く「半ばわたらしめてこれを撃たば利なり」この場合なら、敵軍の中央にある旗が渡ってから迎撃すれば、渡りきっていない敵は身動きがとれない。まさに運長はその時を待っていた。もう少しだ。右手を挙げる。
「突撃」
右手が振り下ろされると同時に、陸路騎馬隊は敵軍に襲いかかった。宋襄の仁など関係ない、要は勝てばいいんでしょ、そう呟いていた。河を渡ったおよそ三百の敵兵に動揺が走る。運長は手綱を握り締め、先頭に立って敵の歩兵部隊を二つに断ち割った。見事に統率された陸路騎馬隊は、一匹の蛇のように「おまる」の旗の下の十に満たない騎馬に絡みつく。浮き足立った騎兵を粘りつくように取り囲んだ。
運長は手にしたピコピコハンマーで、騎馬上の兵士を次々と叩き落した。見えた。旗。手を伸ばし、一瞬の隙を突いて「おまる」の旗を取った。
にやり。おまる兄弟は微笑んでいた。鼻が垂れている、こいつは弟だ。今奪い取った旗。「おまろ」そう書いてあった。瞬間、気づいた。五百の陸路騎馬隊は三百ほどの歩兵に取り囲まれている。運長の背中に冷たいものが走った。退避せよ、そう叫ぼうとした。
「あれは?」
陸路騎馬隊の一人が河の方を見て叫んだ。河の水量がいつの間にか増えている。その上流から、白いものが無数に流れてきていた。白鳥? 否。おまるだ。数千というおまると、それに乗った歩兵が河を流れてきている。突然現れたおまる部隊は、陸路騎馬隊の近くの岸からそのまま上陸してきた。上陸してわかったことだが、おまるに乗っているというより、おまるの底から足を突き出し、あたかもおまる型の浮き輪でもしているような歩兵だ。その数ざっと見て、五千。
最初の歩兵三百の動きは巧みだった。運長とその周り百騎ほどの騎馬以外は、囲みの外に逃がしている。ジリジリと運長の旗をめがけて包囲を狭くしているのだ。最初の行軍の乱れはフェイクだったのだ。運長は歯軋りしながら手綱をさばき、百騎に密集隊形をとらせる。そうする間にもどんどんおまる部隊は上陸し、三百の歩兵とあわさって囲みを強固なものにしていくのだった。
不意に衝撃が来た。兆次の歩兵二千が、おまる部隊と歩兵三百の囲みに猛然と突進していた。楔の隊形で囲みを穿ちにかかっていた。楔の先頭で、兆次が鬼の形相をしていた。ハリセンを振るい、おまる部隊をなぎ倒していく。囲みの外に追いやられていた騎馬隊もそれに続いている。陸路の血が兆次の中でたぎっていた。緊張を隠せなかった弟が獅子奮迅の戦いをしている。呼応するように、運長の胸に熱い何かがこみ上げてきた。
「歩兵部隊と合流する。総員、歩兵部隊に向かって血路を開け」
地を震わせるように叫んでいた。ピコピコハンマーがうなる。乱戦になった。少しずつ、弟の部隊に近づいた。やがて、伸ばした手と手が触れ合うように、歩兵と騎馬の部隊は一つになっていた。立派な「いくさびと」となった兆次の顔を見つけ、思わず運長の口の端が緩んだ。
だが、緩んだ口の端はそのまま凍りついた。
一つになった陸路騎馬隊と歩兵部隊は、水量を増した河を背にしていた。五千のおまる部隊と三百の歩兵隊にぎちぎちに包囲されている。運長は自分の背にたなびく陸路の旗を見た。これでは敵も旗には手が出せないはずだが・・・。
大きな白鳥が一羽、上流から流れてくる。いや、大きすぎだ。30メートルはある。頭のてっぺんに「おまる」の旗があった。そして、河を背にした運長の前で止まった。にょきっと足が生え、立ち上がった。50mはある。そして、しゃべった。
「あの日、勝ったって思ったんだろ。その時点で負けてたんだよ、あんた達はさ」
おまる兄弟の兄、おまる(大)の声だった。
「こいつはおまる型モビルスーツ、スワン号。美しいフォルムだろ。おまるってやっぱり芸術だよな、そう思うだろ?」
バカでかい白鳥は、頭を下げた。運長の鞍でたなびく「陸路」の旗にゆっくりと向かっている。反射的に運長は鞍の上に立って、両膝を曲げた。どうしても欲しかった勝ちが近づいてくる。飛べる。つかめるよな、俺達なら。なあ、兆次・・・・・・。
運長の体は跳躍し、スワンの顎あたりを頂点とする放物線を描き、河の中に消えていった。
スワンは、与えられたエサでも食べるように、たやすく「陸路」の旗を咥え、おまる兄弟の二回戦進出が決まった。
http://anond.hatelabo.jp/20090130135752