といっても衣服の知識も化粧の技術も皆無なので、
ネットで購入したパチモンのセーラー服を着ただけのお粗末な女装だが。
自分の姿を鏡で見てみた。
我ながら驚愕を禁じえない・・・。
でも何となく切ない気分になった。
スカートの端をつまんで持ち上げて、足を交差させ、ぺこりとお辞儀をし、
「ご機嫌麗しゅう」と呟いてみれば、ぞくぞくと震えるような快感があった。
容姿の美醜、女装の技術の巧拙でいえば最悪の部類に入るだろうが、
他人がみればあまりの滑稽さに腹筋を断裂させかねないだろうが、
それでも自分にとっては恐れと憧れの混じった未知の領域に足を踏み入れた達成感があった。
しかしそこから先に更に進んでいけば、戻れない場所にまで行ってしまうのはないかとも考えてしまう。
その臆病さは真っ当さという観点でいえば至極正常なものであろうが、しかし真っ当さに何の価値があるというのだ。
見よ、鏡の中の己を。
心に湧いた感情に、哀切や感動などという既存の名前をつける必要はないのだ・・・。
そして私は愛らしく微笑んで、スカートの裾が浮くようにくるりと回転してから、Vサインを鏡の中の自分に向かって突き出したのだった・・・。
ヅラぐらいかぶれよ・・・