はてなキーワード: 茨城県庁とは
皆さん、歯の磨き方を誰に教わりましたか。お母さん、お父さんだけにですか。当然親だけに教わると、私はずっと思っていました。でも去年の12月に、仕事の一環として、或る小学校に母国であるアメリカの文化を紹介しに行き、目を丸くするようなことを見ることが出来ました。それが、給食の後の歯磨きの時間だったのです。この歯磨きの時間を見て実感できた日本の教育と私の国の教育との違いを、三つ挙げさせていただきたいと思います。
まず一つ目は、子供のしつけの責任分担のことです。これについて日本とアメリカは大きく違うと聞いてはいました。例えば、夜遅くまでお祭りで遊んでいる教え子を見かけた学校の先生が「早く家に帰って寝なさい!」と注意する話を、日本語の教科書で読んだ覚えがあります。アメリカだったら、特に学校外において子供を注意することは親の責任であるという考えが強いため、こういった場面で先生は注意しないと思います。
この日本とアメリカの違いを、歯磨きの時間を通して目の当たりにすることができました。アメリカでは、歯磨きを教えるのは当然親の役目であると思われています。そうした中で生まれ育った私が日本に来て、学校で歯磨きを教えているのを目撃して感じた驚きを、なんとなく想像できるでしょうか。それから自分の中の常識と食い違うことを目にして、自分の視野が少し広がったような気もしました。
日本の先生は教科のみならず、歯磨きなど生活のことまでも教えなければならなく、本当に大変だと思いますが、子供のしつけという非常に難しくて、なおかつ重要な親の仕事を学校が手伝うことは、親と子供、そして社会全体のためになると思います。一方で、学校がしつけを手伝ってくれるなら自分は怠けてもいいと思ってしまう親が出かねないでしょう。それでしつけの責任が主に学校にあると親が思い込み、子供が学校の窓に小石を投げつけるなど悪いことをしたとき、学校のせいにしてしまうことまであるそうです。 子供のしつけの責任分担に関してアメリカのやり方も日本のやり方も一長一短があり、うまく組み合わせることが出来たら、親が主な責任を持つと同時に学校も手伝うような仕組みが出来るのではないでしょうか。
では二つ目の違いに移ります。更に驚いたことに、教室の前に立ち、良い歯磨きのお手本を見せていたのは、担任の先生ではなく、児童2人だったのです。つまり小学生は先生に教わるだけではなく、お互いに教え合うのです。児童の協力によって学校が成り立つわけです。歯磨き以外の例を挙げますと、私が参加する小学校訪問には必ず開会式があり、その司会を務めるのは、ほとんどの場合児童です。アメリカだったらきっと先生が果たす役割を児童が果たすことにより、協力する心が育つと思います。学校の清掃時間や日直などにも、協力のような人間性を育てることを重視する日本の教育が見られます。この点に関してアメリカに日本を見習ってほしいです。
最後に三つ目の違いについて話します。日本人が集団で行動する場合が多いとは、日本に来る前に聞いていたことですが、来日し、社員旅行など団体旅行の普及や、合コンの人気などをみて、確かにそうだなと思いました。しかしなぜそうなるかは、あの12月の小学校訪問まで、不思議に思い続けていました。もちろんこれだけが原因とは思いませんが、30人以上の小学生が完璧に一斉に左上の奥歯の内側を「いち、に、さん、し」と磨いている光景を呆気にとられて見て、なるほどと思いました。歯磨きの時間の他に、私の国にはほとんどない修学旅行や、全員が同じメニューを食べる給食もありますし、集団志向が学校で育ち始めるのだと思いました。これも一長一短がありますね。一方では、集団志向といいますと、集団の和を保つために周りの人に同調する必要がある場合が多いですが、そうしますと個性が出にくい環境になってしまう恐れもあると思います。他方で、アメリカでは一日中一緒にいる学級というような学校の構成は小学校のみなのに対し、日本では中学校も高校も学級があります。そのおかげで、将来は社会の一員になる生徒が、グループの一員として頑張ってグループに貢献する精神を社会に出る前に身に付けておくことが出来ます。
本日は日米教育比較をテーマにし、しつけの責任分担、それから人間性も集団志向も育てる日本の教育という、歯磨きの時間を通して実感した点を三つ挙げました。あの日がきっかけで、日本の教育に対するイメージがよりはっきりし、日本もアメリカもお互いに学び合えることがたくさんあるのだと改めて気づきました。しかし、不思議ですよね。歯磨きのような本当に何気なくすることが実は、日本の教育理念を色濃く示していると思うと、自分の常識がどれほどこうした平凡なことから成立するのか、ということに気づかされます。皆さんが今度歯磨きをされるとき、私のスピーチを思い出し、そのことについて考えて頂けたら幸いです。
ご清聴、ありがとうございました。
Mr. Jonathan MICHAELS
https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/education/benron/pdf/49/6.pdf