2021-11-06

2次元の女オタクジャニオタになった話

わたしはある美少女バンドゲームアイドルバンドドラマーがだいすきで、所謂架空女の子に恋する女の子だった。過去形にしたとはいえ今もすきなことに変わりはない。Instagramアカウントには文化の日誕生日を迎えたその子誕生日会の写真だって載せている。Twitterアイコンもヘッダーもその子統一しているし、LINEステータスメッセージだっての子ガチャ演出のことばをまるまる引用している。だけど以前のような、例えるなら自分の命だってかけられるような、そんな気持ちはもうない。冷めてしまったのでは無いと思うのだがわたしにはこの気持ちになった原因に心当たりがある。もうひとりの推し存在だ。

から1年前くらいのことだろうか、たまたまテレビに出ていたジャニーズの男の人が目に止まった。ありえない歌唱力に整った鼻筋。ひと目で好きになってしまうような、どこかの王子様のようでわたしは手当たり次第に周りのジャニオタに声をかけた。名前を知った。年齢を知った。誕生日を知った。そしてたまたまグッズを頼もうとしていた友人のジャニオタが「割り勘する?」と言ってグッズの購入を勧めてきた。財布には都合よくお金があったので購入したいものリストアップしてみた。そのどれもが顔がめちゃくちゃに良かった。

それからとんとん拍子でアクスタを手に入れ、公式写真を手に入れ、ファンクラブに入った。母親わたしジャニオタになったことを一緒に喜んでくれた。わたしが撮り忘れたMステも録画しておいてくれたし、幸いここまで彼の所属するグループが出演した歌番組は全て見ることが出来ている。ここまでのオタ活での唯一の後悔は半裸のハンガーを買い忘れたことくらいである。

今までジャニーズに触れたことがなかったわたしにとっては公式写真の1枚160円など全体的に安すぎる価格や何ヶ月おきかに発売されるCDというのは新鮮で、舞い上がったわたし客観視すれば痛いオタクなのだろうがジャニオタの友人と割り勘したライブうちわを受け取るやいなや教室で高々と掲げてみたりしていた。

そんなある日ご縁があってその方が座長を務める舞台観劇した。

わたしはその日、双眼鏡越しに彼の顔を見た。存在を見た。

存在はしていたものの彼は違う世界人間だった。股下は地球を包み込めるくらい長かったし、神様が彼を創った時アイビスペイントの対称定規を用いて顔を造形したのではないかと疑うくらい整っていた。歌声はのびやかで芯があって、上手く言い表せないくらい素敵で、わたしスタンディングオベーションの間涙をこらえるのに必死だった。

家に帰ってきてチケットの整理をしていたらふと机に飾ってある女の子と彼のアクスタが目に入った。

女の子は絵だった。彼は写真だった。どちらもアクスタという平面を組み合わせた立体に存在することに変わりなかった。

しかし彼はいたのだ。確かにそこに「いた」のだ。

わたし収納ケースに入った女の子缶バッジを見た。苦労してひとつの絵柄で40個集めたそれは既にただの絵の印刷された金属しか無かった。

ああ、と思った。

わたしの3年間はこの絵に吸い取られていたのか、と。たぶん女の子に抱いていた夢からその瞬間に醒めてしまったのだと思う。

勿論2次元にも3次元にもいいところはある。だが、存在するということを知った途端に全ての世界が変わってしまったような気がした。この感情はどうにか残しておきたくてこの日記を書いている。

ライブの開催が告知されたいま、様々なことが重なりわたしの財布はスカスカになっている。ライブに当たっても入金が出来ないだろうし、紙袋収納ケースの缶バッジを入れて、家の近くのブックオフまで自転車を走らせようと思う。

  • 女って搾取されるべくして搾取されてるんだなってことがよくわかる文章

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