パクられた作者の気持ちも、チュチュアンナのデザイナーの気持ちも想像できるから、胸が苦しいのだ。
まずは作者の気持ち。
私は靴下の仕事を離れた後、別分野のデザインの仕事をしている。
詳しくは書けないが特定分野の仕事で、そこに関係が無い人はまず見ることが無いような世界だ。
気のせいだと思おうともした。しかし私のデザインはある種独特なもので、アイディアとしては思いつきにくい。
非常に悔しかったが色々な事情があったので黙っておくことにした。
今回被害者の作者も悔しかっただろう。怒っただろう。その上で抗議をし、疲弊していることだと思う。
似たようなことをしてきた商品が世に出る度、いつか問題にならないかとヒヤヒヤしたはず。
もしかしたら同じことをやりすぎて、感覚が麻痺してしまった部分もあるかもしれない。
なぜこのデザイナー達(3人らしい)がトレパクなんてことをしてしまったのか。
としているが、それだけでは無いだろう。
問題の大元を考えれば、社会の問題なのである。デザイナー達は、その末端でひとつの判断ミスをしたに過ぎない。
チュチュアンナはトレンドを取り入れた、旬な商品を提供することに長けている。
(だからこそ同業他社はチュチュアンナの商品を参考にするし、真似する。絵柄だけではなく素材や仕様を見たら、
チュチュアンナのパクリなんてものは沢山存在する。もちろん、チュチュアンナ以外の他社間のパクリ合いも存在する。)
時流を読み、素早く対応している。これはイコール超短納期なのだ。
パクリ商品が世に出てしまう流れはこんなところだろう。今回のポメラニアン柄を例とする。
1:商品企画方や営業から「ゆるい動物イラストが流行ってるから10種類書いてくれ。○○日から生産だから、3日以内で。」と依頼される。
2:デザイナーは資料を集め(又は依頼者から提供された資料を元に)イラストを描いて依頼者に見せる。
3:依頼者から「ゆるさが足りない。もっと元のイラストに近づけてほしい。生産日はズラせない。」と言われる。
4:デザインを練る時間が無く、結果的に元イラストとほぼ同じものができてしまう。
(因みに靴下のデザイナーは靴下の、繊維や編み地のプロフェッショナルであって、イラストレーターではない。
イラストを描くのが好きな人もいるが、私の周りは少数派だった。柄の修正にも本当は時間がかかる。
パジャマのデザイナーでも同じようなことが言えるのではないか。)
商品を作っているのは、トレンドを捕まえるのは、デザイナーだけでは無い。
短納期になってしまうのは「流行に乗っている、売れるものを作りたい。(会社に貢献して評価されたい)」という想いからだ。
この想いの元になっているのは消費者の問題だ。しかしその問題を打ち消すのは難しいだろうと考える。
マズローの欲求5段階説(書くと長いので知らない人は調べてほしい)が正しくかつ人間の自然な欲求なのだとすれば、
その欲求を満たすために、メーカーは流行っているもの・かっこいいもの・かわいいものを作り出すのだ。
しかし、今のままで良いのだろうか。
欲求を満たすための方法は、トレンドを追うことで良いのだろうか。
消費者が欲求を満たすために流行を追う限り、メーカーは作り続けるし、
流行というのは多数の人が求めるものであるので、大量に作らなければならない。
大量生産・大量廃棄。今、世界で目指しているサスティナブルな社会とは真逆なのだ。
その実情がある限り、短納期であったり無理を強いる仕事の仕方は変わらないし、トレパクはまた発生するかもしれない。