2021-03-27

アンチフェミとは何か

歴史学者の呉座勇一氏が不幸にもはまってしまった、最近話題アンチフェミニストクラスタ(以下「アンチフェミ」と略)について、個人的なまとめ。。アンチフェミとは何かについて、論者によって異なるが、以下の特徴があるということができる。

第1に、彼らは正真正銘リベラリストであり、保守右派では決してないし、左翼でもないこと。この点は強調してもしすぎることはない。主流リベラルと異なるのは、リベラル正義を正面から語るより、リベラル派の「論理矛盾」を批判する、という形でリベラリズム表現しようとしている点にある。アンチェミについて、「彼らは正義がない」という人もいるが、彼らの正義普通にリベラルである理解の一面性は否めないとしても)。

第2に、いわゆる「男性弱者」を代弁していること。アンチフェミは、安定した仕事恋人もいないような男性(いわゆる「金のないキモいおっさん」)の目線から議論を展開しているのに対し、フェミニスト議論は、子育て支援の欠如とか、夫の家事育児参加の消極さとか、安定した仕事もあり結婚もしていることが前提になっていることが多い。だからアンチフェミからすると、フェミニストは恵まれた人たちの「わがまま」あるいは個人的承認欲求しか見えないことになる。

第3に、女性差別と言われている現象現実については、それはあくま女性自由かつ合理的選択をした結果だと考えていること。例えば、女性非正規低賃金が多いのは、家計補助の賃金でよしとしている大多数の主婦存在が原因であって、男性差別しているからではない。管理職の少なさも、男性拒否しているという以前に、女性が嫌がっているという面が大きいことを強調する。これを無理矢理に男女平等是正しようとすれば、個人自由に介入することになり、リベラル原則とは対立することになる、つまりはそう考えているわけである傍証として、男性比較した女性幸福度の高さが強調されることも多い。

最後に、「論壇的」であることであるアンチフェミは、現実に起こっている差別暴力などのニュースよりも、「フェミニストが何を言っているのか」のみに過剰に反応する。ニュースを取り上げる際も、リベラル派の矛盾を示すようなものばかりを積極的に取り上げる(例えばフィンランド出生率の低下だけを取り上げ、それよりもっと低い東アジア諸国は完全に無視)。ある社会問題に対するリベラル派の語り口は熱心に問題にするが、その社会問題のもの勉強して深く調べようとする意欲ははっきり言って乏しい。彼らは「論壇」における自己呈示ばかりに夢中になっており、それに比べて現実社会問題に対する関心はさほど強くないと言わざるを得ないだろう。



完全な余談。CDB氏とテラケイ氏の区別は一応ついていたけど、割と最近まで同じアンチフェミクラスタの人だと勘違いしていた。

  • >女性差別と言われている現象や現実については、それはあくまで女性が自由かつ合理的に選択をした結果だと考えていること   そう主張している人見たことないんですが……

    • アンチフェミというよりはミソジニーによく見られ傾向だよね。アンチフェミとミソジニーはもう少し丁寧に分解して論じたほうがいいんじゃなかろうか。

    • これなどはそうじゃないのかな? 「稼げば稼ぐほど養わない」というその選好こそが、女性を男性より経済的・社会的・政治的下位に置いている大きな要因なのだけど、まあ理解する...

  • 「第二」はそうばっかりじゃないんじゃないの。 アンチフェミの一定割合はマチズモ陣営で、マチズモからしてみたらKKOは眼中にないと思うが。

  • 最後に、「論壇的」であることである。 根本的に話がまったくかみ合わないのはここだと思うよ。 君らの言うアンチフェミのスタンスは 「弱者救済や差別解消なんかを社会制度(政府...

  • リベラルっていったいなんだっけというのがなかなか。 日本で広く「リベラル」と思われてるものはアメリカにおける(モダン)リベラリズムの系統で、 アンフェとかはそういう意味...

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