寒暖差の激しい日々ですが、お元気ですか?
私はあなたの同僚でもあるKちゃんと仲が良く、たくさん話をしました。
Kちゃんはあなたのことを苦手に思っているので、私の想い人があなたであった―過去形にしてみたものの、実のところは進行形です―という事実をKちゃんに知られたらドン引きされたでしょう。ですので、この気持ちを知られるわけにいきませんでした。
けれど、話題に出すことは情報を集めるためにも効果的な手段と言えます。幸いにしてあなたは私もよく顔を合わせる人で、かつ毎回ネタを提供してくれたから、話題に上っても決して不自然ではなかったはずです。口元は多少緩んでいたかもしれませんが。
ネタとして話しているのが6割、好きな人のことだからついつい話しているのが4割。そのような感じでKちゃんに話しておりました。
前置きが長くなりました。
いつからこのような気持ちを抱くようになったか、という点についてですが、正直に言いますとKちゃん他数名からあなたの悪評を聞かされた時からです。
周りから聞こえてくるあなたに関する話はそれなりに酷いものでした。ただ、実際に私がその場面を目にしたわけではありません。あなたが本当に噂通りの人なのか。自分で確かめてみたいと思った瞬間、恋の炎がかなりの勢いで燃え始めたのでした。
思い起こせば、初めて会った時のあなたはまあまあ失礼な質問をぶつけてきました。ずけずけ訊いてくるその態度に『なんだコイツ、やべぇ奴』と素直に思いました。
果たしてファーストインプレッションというのはなかなか当たっていて、関わっていく中であなたが結構なモラハラ気質であると気づき、『マジでやべぇ奴だ』と思うようになりました。ちなみに、あなたとのやりとりを話すと、Kちゃんはよく「人間性に問題があると思う」と眉を顰めながら言っていました。
口は災いの元、と昔から言います。はっきり物申すところはあなたの長所です。しかしながら、オブラートに包むということを意識した方がいいと思います。せめてお客さんに聞かれたらまずい内容はバックヤードで話すようにしてほしいです。冷や冷やしてしまいますので。
あなたは特に内勤からの人望があまりないので、何かあった時に「身から出た錆」とか言われて人から助けてもらえなさそうで、ちょっとだけ心配です。
あなたの顔について、Yさんは「なんかこう、いやらしいのよね」と評し、Aさんは「顔つきがキツイ、人相が悪い」と評しています。散々な言われようです。
これは私の所見ですが、あなたの目線は時折ガラス片のごとき鋭さがあって怖いのです。一度だけあなたにじろじろと見られた時には、何か粗相をしでかしたのではないかと、変な意味でドキドキしました。なぜあんなに見ていたのかは結局聞けずじまいでした。
なるほど、いやらしい感じはあるし、顔つきもキツイけど、私はあなたの顔がわりと好きです。前述したように初対面時の態度に『なんだコイツ』と思う一方で、あなたの顔立ちは推しにどことなく似ていて、惹かれてしまったのです。
知っていますか?あなたが笑う時、目尻には笑いジワができ、眉尻が下がることを。いつもの鋭さが消え、お客さんと商談している時とはまた違った笑顔になる。それを見る度、その穏やかな雰囲気がずっと続けばいいのにと願っていました。
普段は強気な物言いをするあなたですが、2人きりの時に弱音を吐く場面が幾度かありましたね。
若くしてその地位にいるということ。飄々としているように見えて、きっと物凄く苦労があるのでしょう。常に結果を求め続けられるプレッシャーは計り知れないものがあるのでしょう。
ゆるふわ事務職の私にはそういったしんどさは理解できなくても、気持ちを受け止めたり背中を押したりすることはできるはず。あなたが弱音をこぼした時には、あくまでも自己満足ですけれども、そういう思いで結構慎重に言葉を選びながら話していました。
確かにあなたは難しい性格をしています。知れば知るほど、恋人として付き合いたくはないと感じる人でした。
だってあなた、「稼いでいる方が偉い」という考え方をしているでしょう。収入面では到底敵わないから、もしお付き合いすることになったとしたら色々な意味でつらかったと思うのです。
それでも好きだと思うのは止められなかった。恋は盲目で、理屈じゃなかった。
久しぶりに燃えるような恋ができて、あなたに恋した3ヶ月は私の生活の彩りとなりました。
あなたの行く先が幸せに満ちているように。それだけを心から祈ります。
どうかお元気で。