2018-04-24

誰かが、僕の文章を好きだと言ってくれたなら

anond:20180422154919

「――進級祝いだよ」

 彼女スマホから目を離さずにそう言った。

 初夏も迎えていないのに油断すると汗がにじむ、春の陽気とはいい難い日だった。すこしだけ呆けていた私は、それが机上に鎮座したパソコンのことを指しているのだと気付くのに時間を要した。

「進級祝い?」

 そう口にして、彼女と同じことを言っていると思った。気恥ずかしさを誤魔化すように、胸ポケットから煙草ライターを取り出す。火を点けると一瞬燐の燃えるつんとした匂いがした。

 スマホから目を離した彼女と目があった。

「うん、進級祝い」

 そう言って彼女は愉快そうに笑った。

 私は日記を書くことにした。

 私のことに興味を抱く人間など希少だろうが、このはてな匿名ダイアリーという戦場では、何らかの記号がなければ、不特定多数の日々という奔流に押し流され、何事もなかったかのように埋もれてしまう。

「——せっかくだから定期的に日記を書くよ」

 彼女にそう言ったので、私は、ここで私のことを記そうと思う。

 当時の私は大学生だった。自身の不徳から同級生より二、三、歳を重ねていたが、好きなものを持ち、夢を持ち、自由を持つ、有象無象学生の一人だった。

 大学生になる前は、モノ書きに憧れていた。

 昔から文章を読み、書くのが好きだった。尤も、幼少より親交を深めていた文筆や長文という名の友人は、短文型SNS流行によりに疎遠になってしまたことは否めない。

 それでも私は期待していた。

 大学生になれば、腐るほど時間を持て余すだろう。上質で心地よい文章に好きなだけ埋もれることができるだろう。そうしていつか、

 ――自分文章を生み出すことができるだろう。

 だが、漠然モラトリアムを信じていた私を迎えたのは、勉学や部活動やその他雑務忙殺される、いかにも大学生らしい生活だった。これでは趣味を極める余裕などなかった。少なくとも私程度の容量では困難だった。

「忙しいって、充実してるってことでしょ」

 ――いいじゃない、と彼女は言った。私はすぐさま反論した。

「僕は忙しいなんて感情が、充実の証左たるわけがないと思う。多忙絶対的時間を圧迫するもので、人が創造する余地を奪い気力を追いやってしま悪魔だよ。そんなものを充実と勘違いする奴らなんて、ハムスターにでも生まれ変わって回し車で走り続けてればいいんだ。きっと幸せだろうさ」

ハムスターが充実してるかはわからないけど」

 彼女は私の言葉を制する。

「でもごめんね、そんなつもりじゃなかったんだ」

 私は、言語を介さな思考というものにめっぽう弱い。

 図や数式に意味を見出せず、記号として扱うことが出来ない。想像したものを、今見ているものでさえも、絵という形に還元できない。運動をする際にも、関節や筋肉の仕組みを文章理解して、やっと思考動作が一致する。生き辛い脳の作りをしていると思う。

 彼女は違った。

 図だろうが数式だろうが、そこにあるものをあるがままに扱った。スケッチが上手だった。空想世界でさえ表現することができた。スポーツなんて、見ればすぐに何でもこなした。

 何もかもが理解できなくて、どう考えているのか彼女に尋ねた。

 ――勘かなあ、と。

 なんでもないことのように彼女は言った。それが心底恨めしく、心底羨ましかった。

「——私は君が羨ましいな」

 彼女言語を介した思考が苦手だと言った。映画感想を聞けば楽しかった、という画一的表現しかできなかった。ラインのやり取りは苦手だから電話を好んだ。読書感想文なんて本を読む気も書く気も起こらず、コピペをして怒られたらしい。

 そんな彼女がくれたパソコンで、私は日記を書くと宣言した。

 多忙という悪魔に打ち勝って、彼女との差異を埋められるだけの、創造性を再獲得すると誓ったのである

 そうしてたくさん日記を書いた。何度も筆をとり、何度も筆を手放しそうになりながら、日記を書き続けた。

 ブコメもたくさんついた。批判的なコメント肯定的コメントも数えきれないほどあった。

 創造性を再獲得できたかはわからない。大学生だろうが社会人だろうが、忙しさは私を襲い続けた。私は今も悪魔と戦い続けている。

「ただいま」

「おかえり」

 彼女スマホを見ていた。

 相変わらず彼女は直情的というか、動物的というか、あの頃のままそこにある。泣き、笑い、怒り、喜び、日々忙しそうだった。

 胸ポケットから煙草を取り出した。ホルダーにセットすると、独特の酸味臭が鼻を突く。

 スマホから目を離した彼女と目が合った。

 画面をこちらに向けていた。

「これ、君でしょう」

 

 文字の海から私を見つけて、彼女は愉快そうに笑っていた。

 ――僕はその喜びを、未だに言語化することができない。

記事への反応 -
  •  最近、新しいパソコンを手に入れた。進級祝いだと言って、彼女が僕にプレゼントしてくれたものだ。こいつに慣れるためにも、これから定期的に日記を書き続けていきたいと考えて...

    • anond:20180422154919 「――進級祝いだよ」  彼女はスマホから目を離さずにそう言った。  初夏も迎えていないのに油断すると汗がにじむ、春の陽気とはいい難い日だった。すこしだけ呆...

    • 増田歴クソ長いがこんなクソ長文を読んだことない。 甘えたクソ野郎のクソ長文。 まずタイトル。 誰かってなんだよ。誰でもいいのか?弊社を選んだ理由はなんですか?甘えんな。お...

    • 小難しく書こうとするあまり情景が浮かんでこないし言いたいことが逆に伝わりづらくなってる。 良い表現や良い比喩というのは料理に薬味を添えるように使うべきであって、君の文章...

    • オイコラなんとか言ってみろよ。クソ長文かいて申し訳ございませんでしたと言え。それとも僕の長文はクソじゃないってか?え、どっちか言ってみろや。

    • パンティーパンティーパンティーパンティーパンティーパンティーパンティーパンティーパンティーパンティーパンティーパンティーパンティーパンティーパンティーパンティーパンテ...

    • うるせえ ゴタゴタ言わずに ブルマ履いてオナニーだ 誰の心にも美少女は眠っているのだ

    • なんかムカつく文体と内容だった 留年したことを勿体ぶった言い方しても格好良くないし 単文投稿サイトとわざわざ書くならツイッターと固有名詞をあとから出すなよ

    • 個人ブログでやれ

    • まったく面白くないので、無用な気取りを捨てるところから始めてみてはいかがでしょうか。

    • こんな増田に投げたらハチの巣にされるということは火を見るよりも明らかな文章をあんな承認欲求ごり押しタイトルで投稿できる精神構造に関しては光るものを感じる

    • 筆を進めて行きたい 不徳の致すところに依り なんとも生き辛い : : なんかもうピックアップするのも面倒なのでこのへんでやめるけど、表現が古臭くて回りくどくて陳腐。 背伸びし...

    • 文才はないようですね。

    • まず、タイトルがいい。天才、天才すぎる。才能に恵まれ過ぎてる。感動!

      • ごめん、好きかどうか、だったな。好きか、嫌いか、で言えば、嫌い、だな。すまん

    •  こういう冗長でわざとらしい書き方をする奴って時々見るけど、どういうプロセスで生まれるんだろ。中高生に人気の作家かなんかでこういう書き方をするのがいるのかな。 それはと...

    • 文章をはじめて書いた。 母は業務スーパーで買ってきた、冷凍のアジフライを揚げている。 大学生になったけど、友だちはいない。 ネットでもみんな見て見ぬふりをされる。 花屋で花...

      • !? 母は業務スーパーで買ってきた、 「母は」の後につけましょう。

    • 何かに似てるなーと思ったら、あれだ。ウィキペでよく見る文だ。作文じたい慣れてないくせに高尚に見せようとしてボロが出てる文。ウィキペ全域で観察されるのでウィキペ文体と俺...

    • 一人称がしっくりこないので、小生にしてくれ。

    • なぜこの文章を読むであろうみなさん、それは実のところ赤の他人であるが、に僕の書く文章を好きだと言ってほしいのかと僕が思っているのか?それには深い理由があります しかしそ...

    • 最近、新しいパソコンを手に入れた。 影のように冷やりとしたそれは、彼女が僕にプレゼントしてくれたものだ。 「進級祝いに」と彼女は言った。 僕はほんとうは留年をしたのだけれ...

    • 色々あって周りよりはちょっと歳のいってる大学生。工学系だからおそらく修士までは行くことを考えるとアラサー新入社員になる未来が待っている。恐ろしい恐ろしい。 私のパソコ...

    • 色々あって周りよりはちょっと歳のいってる大学生。工学系だからおそらく修士までは行くことを考えるとアラサー新入社員になる未来が待っている。恐ろしい恐ろしい。 私のパソコ...

    • その意気やよし、まずは君の言葉で綴った文章を書いてくれ

    • ぎこちなさはあると思うけど、よい文だと思う。 あんまり共感できないツッコミが多かったんで、気にせず書いてほしいなあと思ってます。

    • 森見登美彦っぽい(というか四畳半神話大系の主人公っぽい)感じで脳内再生された この具合でいい感じに煮え切らない学生生活を送って下さい! 大いに煩悶しよう! そういうのも大...

    • 最近、新しい絆創膏を手に入れた。怪我をしたわけじゃないし、リンボーダンスをしたわけでもない。 そしたらミジンコが、あっ、僕は急須の中でミジンコを買っているんだけど、こう...

    • 文芸サークルとか所属してて、寄稿してる人のを下手だなんだとか言う割に自分のは読んでもらうのが怖くて一度も出してなさそうな感じ

    • macはパソコンじゃないだろ

    • 家族を救うためだと言って、朽木ルキアが僕にプレゼントしてくれたものだ。 こいつに慣れるためにも、これから定期的に虚(ホロウ)を尺魂界(ソウルソサエティ)へと送り続けてい...

    • 最近彼女から新しいパソコンをプレゼントしてもらった。他に使いみちもないので文章を書く練習をしてみたいと思う。 まずは自己紹介。二十代前半の男性、大学生。普通二十代前半と...

    • 増田文学ってのは揶揄だよ。こんなとこで匿名でやるな。まともな人はここには居ない。 同じはてなでもブログあるし、そこで匿名というか、サブidうまく使い分けしてもいいんやぞ。

    • 筆wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww 筆おろしですかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww...

    • これだけたくさんの反応がついたのが才能がある証左だと思います ほんとに魅力なければ何もコメントつかないと思う

    • けれど。が可愛い!特にその他好きな所はないけど、作品発表続けてほしいな、とか無責任に思いました。ここは単に魔窟なので、めちゃめちゃに言われたからって深く傷負わないでく...

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