ただ単純に本来そういう設定や立ち位置ではないキャラクターや作品を、適当かつ雑に悪意をもって弄くり回され扱われるのを見ただけでも、キャラクターや作品に対する愛が最低限あるファンなら、怒りを抱いたり、疑問を抱いたりして作品や企画と真剣に向き合おうとするか、とても見続けることに耐えられなくなり、そこから去ってしまう可能性が出てくるでしょう。
さらに、それだけには留まらず、そんな内容に扱われた原因として無関係の作品の盗作やオマージュをしたいからという、従来の作品内容やファンに対しての真摯さにおいて致命的に欠けた動機が関わっていることまで明らかになった場合は、もはや愛のあるファンであれば二重三重四重に怒りや疑問が生まれて当然でしょう。
ところが、ラブライバーという人種の愛は作品内容やキャラへ向かっていないため、それを無視して許せるのです。
彼らの愛は主に、その作品や企画を好きだと言う自分達や、イベントに出演する声優達などと一緒にワイワイと騒ぐ自分達のことに向かっています。
つまり、相手が犯罪者であろうと作品自体が評価のしようがない前代未聞の駄作だろうと怒ることはしないし、悪いことをしても、悪いことをした奴を怒る奴こそ悪いと言ってのけることができる、とても素晴らしい人達なのです。そのような狂気的な仁義こそがラブライバーの真骨頂ともいえます。
また、ラブライバーは、作品を批判したり、疑問視したりする者に対して、「変化や悪い所を受け入れられないものは器が小さい」とか、「無理矢理でも納得して捉えてあげるのがファンのあり方である」、とか、「結婚したら急に態度が変わり怒り出す夫だ」とか批判者のことを勢いだけで言いたい放題に批判することができます。(批判することはいけないのに自分も批判してるじゃないか、というのは突っ込まないで下さい。死んでしまいます。)
当然、論理や倫理は全くもって狂ってしまっているかもしれません。およそ並以上の人間には理解できない、理解してはならない理論を堂々と用いているともいえます。しかし、そこが潔くて格好良いのです。
仮に批判する者の器が小さいとしても、批判する者を受け入れられない彼らも彼らの基準でいえば器が小さく、似たような物ではないか…なんて突っ込もうなら彼らは無視を決め込むこともできます。
また、作品内容の価値はファンの器の大きさで決まりはしませんし、内容についての言及であるのに内容への直接的言及はせずにファンである態度とか器とかを持ち出す時だけ積極的になるあたりを見ていると、彼らのファンとしての器や作品内容を受容する器の大きさがいかほどか推測がついてしまうのですが、そこに彼らは多分気付いていないので格好良いのです。
また、無理矢理納得して愛するのがファンのあり方なのだとしたら、全ての作品を愛する必要が生まれます。内容がどうであれ、なんであれ無理矢理納得するべきなのですから。
ただ、そうなると彼らはラブライブという業界においてごくごく一部に過ぎない作品に時間を割いていて大丈夫なのかという疑問が生まれます。
彼らは愛する作品の条件を問わずに、ラブライブのファン役を担当することを割り振られてしまったので信者をやり続けている存在なのでしょうか。もしそうだとしたらとても立派に役を演じきっています。しかし、その場合に彼らは作品内容を好きだといえるのかは分かりませんが役を演じることに価値があるからいいのです。
結局の所、作品を好きな自分を演出し続ける彼らという仕事人の生き様を評価することはできても、作品内容自体を高く評価する理由は特にそこから見出せないため、彼らがどんなに自称ファンとしての器の大きさを誇示して作品内容を褒めてもらおうと頑張っても、作品内容自体の価値は上下しません。でも頑張るから彼らは素晴らしいのです。
また、作品内容の悪化や劣化を嘆く者に対して、「結婚したら急に妻を怒り出す夫のようだ」とか、「自分ばかり大事ですぐに家族を見捨てる奴だ」とか言ってしまえるラブライバーはやはり、とっても立派な夫や妻になれる人達であり、何があっても必ず家族以外の誰もを救える立派な人達なようで格好良いです。
つまり、ラブライバーを配偶者にできれば何をしても許してもらえるから安心です。ラブライバーの子に生まれたら何をしても許してもらえるから安心です。
まさかラブライブとその声優やスタッフのことは許すが、自分の子や配偶者なら話が別だなんて言わないはずです。
子供や、配偶者が犯罪や浮気をした程度で怒ったり離婚を考えるなんて器が小さい、いい受け取り方を考えなきゃならない、とラブライバーなら批判するでしょう。
何があってもどうにかして納得する方法を探してくれる。論理がおかしくても気にせず、納得できたつもりの自分に酔う今が最高なのですから。
アニメ版ラブライブの内容自体はどうか分かりませんが、このようなラブライバーという立派で素晴らしい人達を沢山生み出したことがアニメ版ラブライブ!という作品シリーズ・企画において唯一にして最大の成果であり、作品の価値を保証する要素だといえるでしょう。