2015-06-25

午前四時に頼むマックポテトうまい

 午前四時くらいに食うマックポテトは塩がかかっていてうまい

 別に昼間でも「塩多め」で注文すればマックポテトに塩をかけてくれるんだけど、だいたいの店員は塩ポテトがそんな好きじゃないので塩加減が分からずたんにめっちゃしょっぱいだけのマックポテトを作る。そういうわけで、四時くらいのフツーなポテトの塩っぽさがちょうどいい。

 

 四時のマックでおれはバーガーセットを頼まない。別にバーガーが嫌いなわけじゃない。でも、四時ポテ塩味バーガーは合わない。バーガーはケッチャップがやたら強くて甘いか、チーズかパテの塩が聞いていて四時ポテの塩を相殺してしまうかのどちらかのタイプしかない。俺は純粋な塩ポテトが食べたいんだ。でも、四時にマックにやってくるような大学生どもはママおっぱいを忘れられない味覚未成人どもばかりだからバーガーを食う。アホだ。

 ところが純粋ポテト純粋がゆえにかなり難易度が高い。純粋すぎる水は人を殺せるというアレだ。四時ポテだけ食ってるといつしか自分ポテトを食べているのかそれとも塩のかかった油の固形物を食べているのか、わからなくなる。

 わからなくなるといっても比喩的表現なので、もちろん自分ポテトを食べていること自体認識できるんだけど、要するにうんざりしてくる。わかりやすセックスに例えれば、松潤とは夜通しヤれるかもしれないけれど、剛力彩芽とは三回が限界かな、みたいな気持ちだ。

 

 というわけで、つけあわせがひつようになる。マックはえらい。四時ポテファンのニーズたくみにうけとめて、「セット」という概念発明した。さすが世界一バーガーチェーンである

 なので、ドナルドの厚意に感謝しつつ、四時ポテのセットにはマックナゲットを頼もう。

 マックナゲットとて純粋ポテト純粋さ、そのヴァージニティをまったく汚さないほどの紳士というわけでもないけれど(ここにはマックの「あらゆる商品が主役になれるだけの自己主張の強さをあたえる」といういかにもアメリカン・ウェイ・オブ・ライフ的な思想が反映されているのだがこの文では置いておく)チキンの適度な弾力感と油っ気が四時ポテの塩感をアシストしてくれて、なによりそのパリッとした衣! ふにゃちんバーガーどもは一線を画するたくましいマッチョイズムを体現した武骨な食感は塩ポテ自体の硬派さと相まって、まるで厳格な規律で知られる名門野球部バンカラ応援団のようなアツい漢のハーモニーを奏でてくれる。たとえ極寒のマックであろうと、マックナゲットと四時ポテが揃えば、そこにはもう夢の大舞台夏の甲子園決勝戦だ。

 

 そういうわけで、脳内ブラスバンドピンク・レディーの『UFO』を響かせるなか、今日もきょうとて午前四時にポテトマックナゲットのセットを買いにきたのだが、どうも店内の様子がおかしい。

 なんというか……メニューデザインが変わっている。シンプルを越えて貧乏くさくなってる。なんとなくエコくさくなってる。日本の四倍の面積のアマゾン天然林を毎日切り倒して恥じない、資本主義の暴虐を体現するあのドギツい原色はどこへ?

 っていうか、デザインどころかメニューのものも変わっている。なんというか……なんだろ、サイドメニューが選択式になっている。ポテイトオ一択だった頑固なラーメン屋感は消え失せ、ポテトサラダマックナゲットヴァリエーションからお好きなものを選んで下さいという消費者へ媚に媚びた娼婦のような仕様になっている。似たようなシステム娼婦KFCがあるが、あれはフライドチキンのつけあわせに揚げた鶏が選べるという極めて硬派な、辰巳芸者のような反骨とダンディズムあふれる売笑なのであって、こんなポテトサイズによってセット価格50円引きになったりするような軟弱なものと一緒にしてもらっては、南北戦争で二百万人を殺し、大阪では七百万の阪神ファンを何十年にもわたり絶望のどんぞこへたたき落とした怒れる神、サンダース大佐も大激怒だ。

 

 

 なにかがおかしい――おれは動揺をおさえ、平静をよそおいながらマックナゲットセットを注文した。ところが店員はキョトンとした顔で、

マックナゲットはセットにできませんよ」と事も無げにぬかしがる。

 曰く、マックナゲットは「サイドメニュー」なので、おなじ「サイドメニューであるポテイトオとはセットにできないということだった。

 理不尽である。なぜ一ヶ月前にできたことが突然できなくなったのか。なぜサイドメニューのセットでサイドメニューを頼んではならないのか。ポテトのMとポテトのSのセットを食べたい客はこれからどこへ行けばいいのか。おれはこれからどうすればいいのか。

「できませんか」と一縷の望みをかけて俺は再度問う。

「すいませんが」と即答する店員。

「そうですか」……とこんな短い問答のあいだに僕は驚くべき速度で自分を立てなおしていた。そこは大人である

 セットにできないなら単品で頼めばよい。

 マックナゲットと、

 ポテトのMと、

 ドリンクのM。

 しめて670円。

 670円?

 670YEN?????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????

 天帝よご照覧あれ、だ。こんな大理不尽がまかりとおっていいのか。メニュー改定前は500円そこそこだったはずのマックナゲットセットが、今はちょっとしたカフェ飯価格とは!!! この世から正義は潰えてしまったのか!!???

 

 でもやはりそこは俺も大人である

 なにごともなかったかのように金を払い、マックナゲットポテトのMとドリンクのMを受け取る。

 今日の四時ポテも、塩がかかっていてとてもうまかった。身体によくない味だった。

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