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はてなキーワード: 犯罪被害者等基本法とは

2024-04-19

死者の尊厳もある程度、法的に保護されてるよ

AIで死者を“復活”」の件、死者に人権はないという趣旨ブコメ散見されるのだけども、だからといって死者の尊厳破壊し放題かというとそうでもないので、若干のメモ

刑法230条(名誉毀損)① 公然事実摘示し、人の名誉毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

2 死者の名誉毀損した者は、虚偽の事実摘示することによってした場合でなければ、罰しない

まず刑法において、虚偽の事実摘示した場合には死者についての名誉毀損罪が成立する。その保護法益は①遺族の名誉であるとする見解、②死者に対する遺族の敬愛感情であるとする見解、③死者の名誉であるがその性質公共法益であるとする見解、④死者個人名誉であるとする見解対立しているが、多数説は④説に立つとされる(条解刑法 第4版補訂版(有斐閣,2023)230頁)。いずれにしても名誉毀損罪は親告罪なので(刑232①)、死者の親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族(民725))または子孫の告訴(刑訴233①)が必要である。なお、侮辱罪(刑231)は死者については成立しない。

刑法はこの他に死体損壊等罪(刑190)等の"墳墓に関する罪"によって死者の身体保護している。死体損壊等罪は、死者に対する社会的風俗としての宗教的感情保護しようとするものであるが、近年では、死体等に関する死後にも残る死者の人格権保護法益と解する見解もあるとされる(前掲条解刑法561頁)。なお、名誉毀損罪と異なり親告罪ではない。

 

ではこれら刑法犯以外の場合には死者はフリー素材なのかというと、民事不法行為として、死者の冒涜が遺族の感情を害したとして損害賠償を認められたケースがある程度ある。

たとえば東京地裁平成23年6月15日判決判例時報2123号47頁は、ロス疑惑に関し2008年米国逮捕された三浦和義がロス市警留置所内で死亡した後、産経新聞掲載した記事犯罪被害者遺族が三浦犯人と断定して書いた手記をそのまま掲載したもの)が、遺族の故人に対する敬愛追慕の情を受任限度を超えて侵害したとして、産経新聞社およびYahoo!Japan損害賠償を命じている。

また、最近話題になった岡口基一裁判官(当時)がレイプ殺人裁判例を紹介した事案においても、被害者尊厳がこれ以上傷つけられることのないよう願う遺族の心情が不法行為法上も保護に値する人格利益であるとして、その侵害について損害賠償を命じた(東京高裁令和6年1月17日判決)。同判決は、この心情の要保護性を導くにあたって犯罪被害者等基本法を参照している点も注目に値する。上記ロス疑惑報道損害賠償事件があるので、故人が犯罪被害者であることが賠償を認める要件ではないが、犯罪被害者冒涜についてはより賠償を導きやすいといえそうだ。

 

これらの民事裁判はいずれも、死者の尊厳のもの保護しているわけではない(死者に発生した損害賠償請求権相続人行使するものではない。権利侵害行為が死後に行われている以上、当該死者が損害賠償請求権を取得することはないからだ。)。

けれども、遺族の敬愛追慕の情を媒介にして、死者を侮辱する行為についても民事上の制裁対象となりうるといえるだろう。

なお、敬愛追慕の情が法的保護に値すると言える範囲は必ずしも明らかではない。故人の配偶者であっても両親の敬愛追慕の情を害して良いということにはならないだろうし、故人の尊厳のものではなく身近な者の心情が法益とされているとなると故人本人の同意も必ずしも免罪符とはならないが、不法行為法上の違法といえるのは受任限度を超えた場合に限られるので、冒涜行為主体が(破綻していない)配偶者であるとか故人の同意があったといった事情があれば、両親その他の親族の受任限度が嵩上げされると考えて良かろう。

近しい遺族が誰ひとり問題視していない場合には、外野は黙っておけ、が正解と思われる。

2019-07-29

202✕年、犯罪被害者等基本法改正案国会を通過した。

202✕年、犯罪被害者等基本法改正案国会を通過した。

マスメディアによる犯罪被害者への取材に対する批判を受け、いかなる事情があっても報道機関犯罪被害者およびその遺族に接触することを禁止する法改正である国会では一部の野党を中心として「報道の自由」の侵害であるという反発が起きたものの、ネット上でのマスメディア批判の高まりのなか、賛成多数により改正案は可決された。

それから数年後のことである

ある大臣セクハラ発言世間を賑わしていた。高い支持率を背景に大臣謝罪拒否し、国会前では女性団体を中心とする抗議集会が開かれていた。その集会さなか、一人の男性乱入し、周囲にガソリンをまいて火をつけた。屋外での出来事ではあったが、火の勢いは強く、加害者男性のほか、6名の女性が命を落とす大惨事となった。

この事件の背景は次のようなものであった。加害者男性は、被害者のうちの一人とかつての職場の同僚であった。加害者によるストーカー行為から逃れるため、被害者退職したものの、その後も加害者につきまとい、事件前に被害者は何度も警察相談していた。しか警察は、被害者の訴えに真摯に耳を傾けなかったばかりか、事件の発生後に問題発覚を恐れて関係書類の廃棄すらしていた。

事件発生後、被害者やその遺族に接触できないマスメディアの関心は加害者側に集中することになった。そこで大きく報道されたのが、警察家宅捜索によって発見された加害者日記である

PCに残されていたその日記は、加害者による妄想産物であった。同じ職場であったころ、被害者いか加害者に対して「気のある素振り」をみせていたのか、なのに「手ひどく裏切った」のか、事あるごとに加害者に「嫌がらせ」をしてきたのか等々が書き連ねられていた。

その日記の内容が発表されると、世の中の雰囲気が大きく変わった。まるで被害者の側に落ち度があるかのようなムードが醸成されていったのである

そうしたムード拍車をかけたのが、被害者の一人が運用していたツイッターアカウント発見であった。そのアカウント被害者は人気アニメの性描写を厳しく批判していた。

人気の大臣によるセクハラ発言への抗議、加害者男性日記から発見された「被害の訴え」、そしてアニメの性描写に対する批判。それらは被害者側がネット上でパブリック・エネミーとして認定される条件としては十分すぎた。

被害者遺族の自宅が特定され、さまざまな嫌がらせが相次いだ。しかし、被害者遺族が遺族である以上、マスメディア接触できない。最愛の妻や娘を奪われた悲しみを誰も伝えることができない。被害者警察に何度も相談していたことも、「加害者の訴え」が一方的思い込みに過ぎないことも報道されない。その間も、ネット上では被害者に対する根拠のない誹謗中傷が積み重ねられていく。

それがすべて「被害者とその遺族を守る」ために始まったのは、歴史皮肉というよりほかない。

2007-11-01

ひだりまき ぼうそうかいし。

asahi.com:「大統領在任中なぜ言わない」 町村氏が金大中氏批判 - 政治(?B)とはいいますが、少なくとも町村長官のこの態度、犯罪被害者等基本法の20条とは思いっきり矛盾するような気がするが。当時のアンビバレンツについてはアカヒが書いてるし。

とはいえまあ、この時点で気づかない漏れ漏れではあるわなあ。

 
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