最近もWEBメディアが適当な記事をあげてカルボナーラ警察に摘発されていたことが記憶に新しい。
でも、ブコメ読んでる人からすれば「何が正解なの!?」と混乱してしまうよね。
というわけで、カルボナーラの組み立てを、できる限り分解しながら考えてみる。
【人はカルボナーラに何を求めるのか】
料理はすべて、最終ゴールになにを求めるかで作り方が変わる。
最初に出来上がりのカルボナーラ像を意識しておくことが非常に大事。
・生クリームを入れるか?全卵に挑戦するか?
・仕上がりのテクスチャはさらさらからドロドロのどの辺りを狙うか?
・卵はどれくらい効かせるか?追い卵黄はするか?
などなど。作る前に仕上がるイメージを考えて、それぞれに適当な料理法を行うと良いと思う。
【作り方】
カルボナーラの作り方は、材料の配合や分量などは千差万別あるが、基本的な動きは以下になる。
1.パスタを茹でる
・ソースが濃厚なので太麺が良い。細麺だとソースが絡みすぎて重たいし、余熱で麺に火が入りすぎてしまう。
・パスタの絞り口がブロンズダイス(ディチェコ)か、テフロンダイス(バリラ)かは好みによって分ける。ブロンズダイスの方が表面がざらついているのでソースの絡みが良くなる。さっぱり食べたければテフロンダイス。
・カルボナーラ用の麺を茹でる時の塩は1%。徹底的にアルデンテにこだわりたい時は3%の塩分濃度で茹でてお湯ですすぐ方法があるが、カルボナーラのようなクリームのもったりソースの場合は、そこまでアルデンテにこだわらなくて良い(というか好みだが私はアルデンテよりもしっかり茹での方が美味いと思う)ので、そのまま美味しい1%で茹でる。
・茹で時間は通常のトマトソースよりも和えてからの加熱が少ないので、表示時間の30秒〜1分少ないくらい。
2.パンチェッタなどの加工肉をフライパンで焼き、ゆで汁(orお湯)を入れる
・表面にしっかり焼き色をつけてメイラード反応で旨みを引き出す。
・フライパンに何もしかないよりも、軽くサラダ油などを入れた方が肉から余分な脂が出やすい(脂は油に融解するため)
・パンチェッタ、グアンチャーレなどを使うと仕上がりに燻製香がつかなくなる。カルボナーラ自体を卵とチーズのソリッドな料理なので燻製香は本来不要。ただし燻製香の効いたカルボナーラが好きであれば、ブロックベーコンでも良い。薫香つけたくないけど、ブロックベーコンしかない場合は一度茹でて燻製香を抜くという手法もある。
・パンチェッタよりもグアンチャーレの方がコクが強く、この料理にはよくあう。
・フライパンに流れた油は基本的には使わない。肉の油は「臭い」や「雑味」が出やすい。また、ただでさえ濃厚なソースに肉の油は余計である。キッチンペーパーできっちり拭き取った方が美味しいカルボナーラになる。
・加工肉にしっかり火が入ったら、最後にゆで汁かお湯をお玉1〜2杯入れて2〜3分程度、中火で軽く煮る。これは乳化の意味合いもあるが、肉の旨みをソースに移すため。加工肉の塩味は商品によってマチマチなので、しょっぱいものを使う場合はゆで汁を使うと塩気が強くなりすぎるのでお湯を入れる。
・味の調整の仕方は、まずはゆで汁を1杯入れて軽く煮て、味を見てしょっぱかったらお湯か水を入れると良い。煮た汁の味が丁度良い塩分になったら完成。火を止めておく。
3.すりおろしたチーズ、卵、生クリームなどをボウルで混ぜて卵液を作る
・胡椒の辛味が欲しい場合はここで入れる。胡椒の香りは熱に弱く飛びやすいので、仕上げにもかける。
・生クリームか全卵か。生クリームを使う最大の理由は、卵の熱凝固をマイルドにするため。カルボナーラは「チーズはしっかり溶かす」けど「卵は固めない」というラインの温度帯を作ることが最も大事なこととなる。具体的には「チーズの溶ける温度 55度〜65度以上」「卵白が固まり始める温度 60度〜」「卵黄が固まり始める温度65度〜」「卵黄・卵白が完全にゲル化する温度 70度〜」「卵黄や卵白が完全に固まってバサバサになる温度80度〜」となるので、全卵でトロッとしたクリーミーな濃厚ソースを作るためにはソースの温度が65度〜70度で止めることが好ましい。(しかも、たんぱく質は急激に変化するので1度単位でテクスチャがかなり変わってくる)
・また、卵黄プラス生クリームをすることで卵黄の熱凝固点が上昇するため、生クリームの分量を増やせば増やすほど熱のコントロールがしやすくなる。
・卵の旨味は「卵黄」が鍵になるので、「卵白」や「生クリーム」を加えすぎると卵の旨味が減ってしまう。
・卵白と比べ、生クリーム+卵黄の組み合わせのカルボナーラは、卵白の熱調整のファクターが減る分だけ簡単になるし、時間が経った時もトロッとした状態が保ちやすい。生クリーム自体が旨味の強い食材という点もあり、一般的に広く支持されるようになったと思われる。
・チーズの美味しさを食べる料理なのでチーズは極力こだわりたい。パルミジャーノレッジャーノ、ペコリーノロマーノ、グラナパダーノあたりから好きなものを選ぶと良い。一般的には熟成年月が低い方がマイルドでミルクっぽい味になる。実はこれ2〜3種混ぜて使うと更に美味しい。パルジャミーノはとりわけ旨みが強いので、パルミジャーノ+ペコリーノロマーノorグラナパダーノがおすすめ。
4.茹で上がったパスタをパンチェッタを煮たフライパンに入れる
・湯切りをしたパスタをパンチェッタのフライパンに入れて弱火にかける。
・ぐるぐる回してパンチェッタの煮汁を麺に吸わせるイメージで2〜30秒かき混ぜる。
・この時、パンチェッタの煮汁を飛ばし切らないのが大事。飛ばし切ると、フライパンの温度が100度以上に高くなるため卵液入れた時に一気に卵焼き化して失敗する。
・流し込むとパスタやフライパンの熱で卵液が熱いところから一気に固まるので、すぐによくかき混ぜる。
・おそらくこの時点ではトロリとするよりもシャバシャバだと思うので、加熱していく。
・コンロを弱火にかけ、よくかき混ぜながら5〜10秒加熱。火から離してかき混ぜるをとろみが出るまで繰り返す。(チーズを溶かしつつ、卵黄をゲル化させる作業)
・とろーーっとしてきたら、完成。皿に盛り、黒こしょうをたっぷり振って完成。
6.冷めると硬くなるので早く食べる。
・チーズは温度が下がると固まるため温かいうちに、できるだけ早く食べたいところ。
まず、一人分の分量、卵黄(M玉18g)を基準に考える。卵黄、卵白、生クリームはそれぞれが1:1:1になるように調整する。
例えば全卵1個だとM玉で(卵黄1:卵白2)の重さなので、卵黄を1個足してあげると良い。
生クリームを使う場合は卵黄M玉1個だと大さじ1強入れてあげると重量比が1:1なるので丁度いい。
卵白・生クリームの分量をこれより減らすと、温度調整が難しくなるし、増やすと味がぼやける。
このあたりは個々人のテクニックもあるので、微調整しながら色々と試してほしい。
分量の出し方は、パルミジャーノなどのハードチーズは3%〜程度の塩分濃度。
(チーズXg×0.03)÷(卵黄18g+生クリーム18g+チーズXg)=0.01〜0.014程度(美味しいと感じるのが0.9%の塩分濃度で、今回はソースなのでそれより少し高め)
となれば良いので、チーズの分量は卵黄の約2倍の36g程度が適量となる。(薄味が好きならば多少減らしても良いと思う)
・パンチェッタの分量
これは好みで入れて良いが、多すぎると肉の味が強すぎたり、しょっぱくなりやすい。
これを読んで、作ろうという気になる人が居るかは怪しいが、ぜひカルボナーラについて思いを馳せてほしい。
【追記】
>パスタの麺の分量は?
卵黄1個ベースで一人前計算。乾麺の状態で80gから100gくらい。
>卵液を入れた後の加熱は失敗の原因では?
そう。卵液を入れた後の加熱は、失敗しやすくなるため多くの料理本でも加熱NGとしている作り方も多い。
また、料理人でもボウルで和える人も多い。
しかし、実際は数秒混ぜながら加熱、コンロの外で混ぜるを繰り返した方が自分が濃度をコントロールしたソースが作れる。
ポイントはゆっくりゆっくり加熱すること。タブーと思っていたら、ぜひ挑戦してみてほしい。
ちなみにボウルで混ぜる作り方の場合は、ガラスよりも木のボウルなど熱を吸収しにくい素材のボウルで混ぜた方が美味しくできる。
すみません。誤字ですね。校正ありがとうございます。
そう。おっしゃるとおり。作ることはとても簡単なんだけど、一個一個の工程を理屈含めて丁寧に解説したかったんだよね。
なぜその工程をやるの?がはっきりすると手順を忘れにくくなるので。
白ワインは確かに良いと思う。個人的には酸味のある炭酸系を合わせるのもオススメしたい。
レモンをきかせたハイボール、白ワインと炭酸とレモンで作るカクテルのスプリッツァー、ドライのロゼのスパークリングワインなんかもとても美味しいと思う。
いろんなシェフの作り方コピーして自分なりのパッチワークでレシピ開発してるから、そのせいかも。
落合さんのレシピは再現性が高くて、コツもわかりやすく、とても完成されたいいレシピだと思います。
>ここまで厳密に従わなくてもそこそこ美味しいのできそう
その通りです。各工程の意味と、どこでどういう処理を施してるか解れば好みに応じて適当に省いてもらうと良いかと思う。
>これは、そもそも誰向けのレシピ?
これは、だいたい普段、家庭で作るレシピ。最後に卵落とすとかは、
飲食店(五右衛門とか)でよくやられてる手法で、ビジュアルインパクトあるので、
持て成しの時とかはやるよ。チーズが旨味の塊だから、うま味調味料は必要ないよ。
>美味しいパンチェッタの作り方〜
パンチェッタ、ピチットでググると出てくるから、いくつかレシピ見比べて作ってみて。
ざっくり簡単に言えば塩振って、ピチットシートで脱水を繰り返すだけ。
>生クリーム重くない?
これはどちらかというと、生クリームの原因もさることながら、肉の脂をしっかり拭いてないと重くなる。
牛乳で割るのも、それはそれで良いと思う。
残念ながら銅蟲センセじゃないよ。小林先生は、パンチェッタ作ってそうなイメージ。
私は、都内でしがなく料理を教えたりしているオッサン増田です。
教室では手順とコツしか伝える時間しかないので、人に教えるために勉強した知識をどこかで吐き出したくなって書きました。
ペペロンチーノは金が無いときに助かるパスタだからできる範囲内で拘りたいが カルボナーラは畜産物がクソ高い日本では魅力が薄いので追求する気にならんなあ。
カルボラーナってそんなに日常的に食うものなのか?今まで生きてきた中で3回くらいしか食べたことない。
ハマってコツが分かると続けて作りたくなるかもな。 卵と牛乳の雑炊みたいのを麺で作るだけだから、手軽なんだよ。 材料少ないだろ? 汁の半熟具合と塩漬け肉と麺の絡み合いを楽...
とても面白い。書いてくれてありがとう。 簡単レシピなんてどこにでもあるんだから、こういう深く考察された情報こそ読みたい。意図が分かれば、自分なりに取り入れることもできる...