2015-11-12

おそ松さんは、記号化と清潔感によって二次創作人気を得ているのでは

おそ松さん腐女子二次創作界隈で人気だ。

その理由は、記号化と清潔感にあるように思う。

記号化の巧みさ

『わかりやす萌え記号』ではなく「要素」としての記号だ。

そもそもが、かなりの振れ幅のある表現を、一つに収斂させて示すことが、記号だ。

普段余り意識することはないが、夜空に浮かぶお月様を「月」という字形表現することが、記号化だ。

「こういう描き方をすれば、こういう意味を持つ/こういう表現をしようとしている」という共通基盤整備が、記号化と言える。

まり白血病の薄幸の美少女」というのは、ドラマヒロイン記号と言える。

ホラー映画に出てくる「キャンプ場でセックスするカップル」も惨殺対象者記号だ。

おそ松さんでは、キャラクター記号化と、シチュエーション記号化が、とても巧みだと感じる。

キャラクター記号

イヤミやハタ坊等、そもそもおそ松くんキャラクターは、ガッシリと記号化されている。

例えば「3本出っ歯」「おフランス帰り」「ザンス」等を外さなければ、まあイヤミに見える。

名前もそもそもが「イヤミ」だし、どうキャラクターを崩そうと、イヤミ以外の何者にもならない。

(「1本出っ歯」「オカッパ」「頭に日本国旗」「ダジョー」のハタ坊にしても、同様である

これはとても二次創作向きだと言える。

上手でも下手でも、そのキャラクターに見える。

まり、外見を簡単に描き分け出来る良く似たキャラクター群というのは、強い。

  1. テーマカラーは赤、デフォルト「おそ松」
  2. テーマカラーは青、目つきの鋭い「カラ松」
  3. テーマカラーは緑、への字口でくせ毛の無い「チョロ松」
  4. テーマカラーは紫、半目で猫背の「一松」
  5. テーマカラーは黄、笑った顔でくせ毛が一本「十四松」
  6. テーマカラーピンク、口の小さなトド松」

戦隊モノが「ちびっ子に描きやすく造型されている」のと同じ理由で、この記号化は成功しているといえる。

シチュエーション記号

シチュエーションとは状況設定のことで、例えば「壁ドン」がある。

動作ではなく「壁ドン」という記号によって、状況設定表現している。

(わかりにくければ、少女漫画において結婚式エンドがハッピーエンド表現、で理解して問題ない)

キャラクターに焦点を合わせると、シチュエーションとは、キャラクターとその他との関係性だ。

「キリッと格好つける」は、キャラクター性格記号化だ。

「キリッと格好つけるが、無視される」までで、キャラクターシチュエーション記号化と言える。

戦隊物で例えれば、「レッドは天然熱血」「ブルークール二枚目」「ピンク可愛い」などが、性格記号化。

ブラックは孤高の一匹狼ゆえにレッドとウマがあわないが仲間思いで、ホワイト破局後も幸せを祝福できる男」が、シチュエーション記号化だ。

読んで解るだろうが、判りやすシチュエーション関係性を限定するので、ハッキリしたキャラクターほど動かしにくいという難しさがある。

そうすると、関係性毎に切り離されているキャラクターというのは、強い。

  1. ザ・ニートリーダーダメ人間。弟思いの「おそ松」
  2. 格好つけて発言しては無視される。不憫な境遇「カラ松」
  3. ただ一人の常識人危機感はあるが空回り。ツッコミ役の「チョロ松」
  4. 皮肉屋で自虐的根暗無気力。でも寂しがりやで兄弟についていく「一松」
  5. 笑顔のままで卍固め常軌を逸したムードメーカー。素直で天真爛漫な「十四松」
  6. 甘え上手で世渡り上手。腹黒でドライだが、夜中トイレに一人で行けない「トド松」

基本的にすべてのキャラクターが「他の兄弟に対して」の「状況設定記号」になっている。

(これに、一松はカラ松の絡みに耐えられないとか、チョロ松は女性が絡むとポンコツ、みたいな個別関係性が付く)

全てを劇中の言動で見せなければならないという条件がつく中で、この状況設定記号化に成功しているのは、見事だ。

記号化の効果

テトリスブロックの様に記号化が巧みなら、ブロックを積み上げて自分だけの形にするのは、容易で面白い

その記号の形が想像力を刺激するなら、「こういう絡みでこういうネタを」と組み上げる作業(妄想)がはかどる。

腐女子による二次創作想像し難いなら、一本アニメ脚本を書くことを想像してみれば良い。脚本の書きやすさだ)

作品の「要素」が巧みなら、それを組み上げる作業は、それ自体楽しい時間になる。

清潔感

記号化の巧みさは、直接には「お話の作りやすさ」に繋がるだけで、腐女子人気とイコールではない。

もちろん、そのシチュエーション想像力を刺激するなら、人気には繋がるが、それだけではない。

嫌悪感を抱かせるものが画面に現れないということは、とても重要だ。

ポップンミュージックを思い出すような、パステル調でカラフルな画面。

競馬のパック酒やもつ煮込みを画面に描きながら、あくまでもサラッとした爽やかな絵面。

声優の演技や声質も、無理をして取り繕ったものではなく、心地良い声がテンポよく流れていく。

握手する相手の爪の間に垢が溜まっているのが見えるような汚らわしさとは無縁の、清涼感ある下品さ。

テレビから流れるのは、安定感のある箱庭の中でワチャワチャと可愛く動きまわるニートな六つ子の日常だ。

これは一言で言えば、清潔感だろう。

一定ラインクオリティがあり、愛でるのに不足のない可愛らしさがあり、聞いて心地良い声優が演技をする。

まり腐女子に愛されやすい外面をしていると言っていいと思う。

単なる声優人気だけではなく、総合的に演出された清潔感だ。

まとめ

清潔感のある画面で、観て不快でなく愛されやすい外面を持っていることが、視聴の安心に繋がり

劇中に描かれるやり取りが、ブロック化された関係性を持っていることが、創作性を刺激し

可愛らしい男の子達が、ワチャワチャと絡み続ける群像劇は、腐女子熱狂させる。

これを狙いつつギャグとして作品にしているので、恐ろしいほど練り込まれアニメだと思う。

付記

見ていない人に説明すると、おそ松さんとは、TIGER&BUNNY忍たま乱太郎を掛けて、ゆるゆり銀魂の逆数で累乗して声優を足した感じだ。

異論は認める。むしろ異論が聞きたい。

腐女子からみる「おそ松さん」人気の理由~声優は“入口”にすぎない~ - だれも知らない

声優腐女子の入口なだけでなく、作品品質を支え続ける土台になっていると思う。

また、創作活動は『飢え』だというが、それも少し足りない気がする。

『飢え』とは、「もっとここを掘り下げて欲しいのに!」「これだけじゃ足りない!」という渇きだと思うが、

おそ松さん場合は、「あえて描かないスキマ」というよりも、「創作やす記号化」が巧みなのだと思う。

『ファンからいいように解釈できる行間たっぷりととられていること』というところが、非常に重要なのだと思う。

第一話のネタのように外見をしっかり描いてしまえば、想像余地が無い。つるんとした記号化されたキャラクターならタップリある。

その上で、キャラクター同士の絡みを想像力で補い続けなくても、不遇なカラ松のような記号化されたシチュエーションをそっと差し出してくる。

エンディングテーマも含めて、相当練りに練ってぶつけてきている気がする。

(第一話が「掴み」ではなく振り切った「媚び」であって、その揺り戻しが2話以降からあざとさを消している気がする)

  • どうでもいいがチョロ松は常識人アピールしてるだけのクズだろ。

  • 不合格 おそ松さんの独自性の説明になっていない 他の作品にも簡単に流用できる理屈なので、こじつけにしか見えない

  • 自分は「性格と関係性の記号化」だと思うな。 BLで重要視されるのは関係性とはよく言われる(対等、受け攻め、主従など)。 顔は同じ、環境は同じなので、関係性の違いで6人兄弟でど...

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            • アイマスはそういう意味で元々のオタクたちの期待を裏切らずに 古参のアイマスPに聞かせたい。 自分も新米なんで聞きかじりだけど、けっこうな紆余曲折があったらしいよ。

            • μ'sはおしまいにします、って展開になった時にどれけのファンが動揺し心動かされたか知ってて言ってんのかよ 守りに入るっていうのは人気がある間はダラダラと引き延ばして続けるこ...

          • ラブライブはよくこんなに人気出た、というかよく続いたよなと思う。 自分は4作目(もぎゅっとラブ)を出したことで4季やった上、これまでは1作で1季節(1番目は春、2番めは冬、3番...

            • そういえばラブライブのPVって明確に秋を舞台にしたのだけがないよなぁ。 企画の流れ次第では作るつもりだったんだろうか。

            • ラブライブ最大の成功の原動力は声優さんたちとのリンクだったと思ってる。 アイマスも声優さんたちとキャラのリンクはしてるけど、ライブパフォーマンスということでいけば一人ず...

              • アイリスとスターアニスを語れよカス

                • 煽られたので一応マジレスしとくと、i RisもSTAR☆ANISもμ'sの成功を確認してからできたユニットでしょ? 二番煎じは二番煎じであって、最初にリスクをとって本気で活動した人たちには...

                  • ラブライブはアイマスの二番煎じじゃないんですかねえ

                    • もー 仮にアイドル育成ものというコンテンツということでラブライブがアイマスの二番煎じであったとしても、本格的に世間的な人気が逆転したのは本格的なライブ活動とそれまでの路...

                    • ラブライブが煎じたのはアイマスではなくAKB4だろう。 ラブライブが成功したのは、それまでのG'sマガジン方法論にAKBのリアルアイドル方法論を足しつつ、「AKB商法」とか言われて批判...

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