はてなキーワード: 雇用実態とは
三浦さんとか、古市さんみたいなケースを想定して、「実績のない学者wwww」的な論調をよくみるのだけれども、
大学に勤めている人間の一人としては、そういう主語の使い方はほんとうに有害だから、やめたほうがいいと思う。
結論を一言で言えば、研究外の大学の仕事をしている先生は、ふつうに尊敬すべき職業人なので、雑にディスんのをやめろ、ということだ。
(三浦さんとかをディスんな、という話ではない)
もう少し丁寧に言うと、「日本の大学は研究力が落ちてる!」的な話がよくあるけど、実際、研究に割ける時間が少ないのである。
授業なのど教育や、啓蒙活動などの業務をやっている先生というのは、一般の人にも見えやすいとは思うんだけれど、
・大学内の雑務(入試業務や、学生がしでかした案件の面倒、学内のハラスメント案件対応)
・学会関係の雑務(学会ジャーナルの編集業務、大会開催に関わる雑務、査読)
・行政関係の委員会仕事(各官庁で開かれている○○委員会などの)
などなどで、とにかく忙しい。
人柄に問題がなくて、企業などの中でもやっていけそうなタイプで、人のいい先生などは、多様な業務にこき使われることになる。
また、その真逆の現象としては、権力欲が強くて学内政治を頑張ってえらくなるタイプの先生もそれなりにいる。
結果として、「すごくいい人」と、「権力欲の強い人」が学術関係雑務を担っており、
そういう人たちが、大学・学会等の雑務をもろもろ引き受けているおかげで、論文執筆の時間を作れている先生方はたくさんいるわけだ。
言ってみれば、宮崎駿をサポートする鈴木敏夫みたいな先生とかもいるわけだ。
日本の大学の研究パワーが落ちているのは、研究に割ける時間がそういう雑務によって圧縮されて、少なくなっているからなんだけど、
「実績のない学者www」というのを馬鹿にすると、そういう人にまで被弾するし、そういう人を大学から追い出しても、いいことは特にない。
大学の事務局が、雑務を全部やってくれるんならいいが、業務内容の性質から言っても、事務局がすべてを引き受けることはできない。
大学の研究者は、実業界の実績などによって評価されて教授になる実務家教員と、研究の成果が評価される研究者教員という区別があるが、
現状に実情としては、そこに「事務方教員」みたいな役割の人がいるのである。
たぶん、今の大学の先生の8割ぐらいは、そう言われると「ああ、俺、ぶっちゃけそれだわ」みたいな気分になるんじゃないかと思う。
制度上は、実務家教員ないし研究者教員として採用されているが、実態は「事務方」の仕事がほとんどみたいな人はほんとに多いと思う。
なんでもかんでも競争的資金にするとかいう、文科省の馬鹿みたいな政策方針が変われば、もう少しマシになるのかもしれないが、
大学教員の大半は、ほんとうに、日々、事務仕事をやらされていて「一体、俺は何の能力で雇われてるんだっけ……」みたいな人は、多いと思うよ。
この実態がいいとはビタイチ思わないけど、大学教員の雇用実態が、そういう事務能力の高さを評価する組織になっているという事実はあると思う。
日本の大学がこのような状態に陥ってしまっていることは、文科省をはじめとする大学行政の責任がやはり大きいと思うので、この状況はどう考えてもよくないけど、
やりたくもない雑務をひきうけて、研究の時間をとれなくなっている人間を、実態も知らずに主語に含めてしまってディスるのは、単に失礼だし、やめたほうがいい。