「桃の園」は戦隊のピンクを目指すヒーロー養成学校が舞台の漫画だ。
学校では「女はピンクにしかなれない」 「ピンクはレッドを立てて前に出るな」といった厳しく古いジェンダー規範を押し付けられ苦しめられる。
「はあ?イエローやホワイトだったりピンク以外のカラーの女性ヒーローはたくさんいるんですけど?」 「ピンクが怪人にとどめを刺しちゃいけないとか何それ?女性がリーダーの戦隊もあるんですけど?」 「というか男のピンクもいるんですけど」と特撮オタクが大激怒している。
あまり知られていないのだが、「桃の園」は「設定さん。」というバラエティ番組が元ネタで、芸人たちの大喜利や与太話を元ネタに漫画を作ってみませんか?という企画から生まれた漫画である。
YouTubeの公式チャンネルで視聴できるのだが、番組内では「戦隊のピンクの座を奪い合うヒーロー養成学校『桃の園』 」というお題から話を膨らませている。
番組内でホワイトの存在にはしっかり言及しているので、作り手側は女性ホワイトの存在はちゃんと認識している。ひとつの戦隊に2人女性がいることについても触れている。
女はピンクにしかなれないというのは「あくまでこの世界ではこう」というだけなのだが、番組の知名度がなさすぎてそこが伝わっていない。
番組ファンに捧げる漫画のつもりなのかもしれないが番組視聴者より特撮オタクの方が多かったのが最初の残念ポイントである。
また、番組では「ヒロインポジションを狙う女性たちのキャットファイトもの」もしくは「センターポジションでバリバリ活躍する好戦的なピンク」の2つのストーリー案が出ていたが、
漫画化にあたりそれを合体させたことにより、「レッドのようにセンターポジションで活躍“したいのにさせてもらえない”ピンク見習い」になってしまい抑圧ターンが長く胸糞な印象になってしまっている。
ライバルキャラについても番組内では昔の少女漫画や世界名作劇場に登場するような意地悪な少女を想定していそうだったが、
漫画版で出されたライバルは歴史と規範を重んじる生真面目な女性になっている。
彼女の語る歴史というのは「ピンクはレッドの引き立て役」というものであり教師陣もピンクはそうあるべきだと教えている。
番組で想定していた「桃の園」では、登場人物たちは「ピンクなんだから女らしく立ち回るのが正義」と思い込み、
自ら進んで古いジェンダー観に沿い、あざとくおバカなふりをしたりとどめをレッドに譲ったりする、
そんな計算高い女たちの熾烈な争い……というニュアンスがあるように感じたが、(バラエティ番組におけるママタレント枠の椅子の取り合いのようだ)
漫画版ではそれが失われボーイッシュでありたい主人公がジェンダー規範を押し付けられるはめになっている。
一番噛み合っていないのはこの辺の設定だと思う。
ドロドロした女の戦いではなくさっぱりした格闘娘を主人公に据える路線で行きたいのなら、やはりライバルはフェミニンなぶりっこ女で行くべきだった。
ピンクはヒロインポジションなのよ!私みたいに女性らしく振る舞うのが正義なのよ!先生方やレッド様もきっと私を評価するはずよ!などと豪語するものの、
実際は「女らしい方が良い」というような評価基準はなく、
むしろ学校からは戦闘ヒロインである主人公の方が高く評価されぶりっこライバルがざまぁされる……みたいな展開の方が自然だったと思う。
どうしても「学校側も古いジェンダー観を支持している」設定でいきたいにしても教師陣も一枚岩ではなく主人公の味方をする派閥があるとか……
まあまだ1話目だから2話3話と話が進んでいけば飲み込みやすいストーリー展開になっていくのかもしれない。
なんかそもそも男のサポートに徹し捕まったらおとなしく助けを待つ、そんな一歩下がって男を立てるようなピンクを育成する学校で、主人公のライバルとして出てくる「古き良きピン...