あそこで出している数字は、直近1週間の陽性人数と、その前の1週間の要請人数の比を、5分の7乗しただけの物だから、本当は実効再生産数でも何でもないよ。
実効再生産数とは「1人の感染者が平均して何人に感染させるか」を表す指標。
計算式は「(直近7日間の新規陽性者数/その前7日間の新規陽性者数)^(平均世代時間/報告間隔)」。
平均世代時間は5日、報告間隔は7日と仮定。リアルタイム性を重視して流行動態を把握するため、報告日ベースによる簡易的な計算式を用いている。
精密な計算ではないこと、報告の遅れに影響を受けることに注意。
これを簡潔にすると、
ということになる。
東洋経済のサイトでは、この式を監修した西浦教授のGitHubリポジトリが紹介されていて、そこには nishiura_Rt会議_12May2020.pdf というPDFファイルがあって、そこに基本再生産数と実効再生産数の定義や関係がいろいろ書いてある。(以下、PDF内の説明に言及するときは「スライドno.N」)
基本再生産数は R0=∫[0,∞)A(τ)dτ らしいよ。(スライドno.4)
実効再生産数はスライドno.20「R(t)の推定へ」によれば、
i(t) = R(t)∫[0,∞)i(t-τ)g(τ)dτ
E(idomestic(t))=RtΣ(τ=1→t-1)itotal(t-τ)g(τ){(F(T-t)/(T-t+τ)}
L(Rt;Cdomestic(t))=Π(t=1→T)[(exp(-E(idomestic(t)))(E(idomestic(t)))idomestic(t))/idomestic(t))!]
って書いてあるけど、僕には何のことかわからない。感染症数理モデルすごいね。
数式はわからないけど、それじゃ何を数式にぶち込めば良いのか。検査結果の報告日だと、検査から報告までの人間界の制約が入り込んじゃうからおかしなことになる。
なので、基本的には検査時に聞き取る発症日や発症日から逆算した推定感染日ごとに人数を集計してぶち込むみたい。(スライドno.14など)
専門家たちが「エピカーブ」を一生懸命作ってるのはそのためかも?
つまり何が言いたいかというと、本来の実効再生産数Rtは、①なんか難しい数式に、②発症日ベースの数字をぶちこんで計算するものだということ。
それに比べると、東洋経済が「実効再生産数」と称して表示しているものは①数式はずいぶんと簡単だし、②ぶちこむデータは発症日ではなく報告日ベースだ。
そんなもので良いのか?良いのです。
上の複雑な式は、数理的概念に過ぎない※スライドno.5 R0になるべく近付くように精緻化した成果なんだと思う。
実効再生産数という概念の最初期のコンセプトは2つの期間の感染件数の比というものだったそうな。(スライドno.26)
それに、Rtのキモは、それが1より大きいか小さいか、どのくらいの程度で増減しているかを、数値化することにある。(スライドno.10)
そうであれば、①直近7日間の患者数とその前7日間の患者数の比率を見ることは、実効再生産数とコンセプトとして近い。これなら数式は簡単。(スライドno.30)
あと②目的が流行動態の理解のためなら、リアルタイム性を重視して、発症日や感染日ではなく報告日ベースで計算しても大きくは外さないはず。(スライドno.30)
そこで、 1週間単位での比率を、一定の報告期間と世代間隔 (スライドno.29) で補正した値を、Rtとコンセプト的に同じようなものとして扱っても、まぁ一般レベルなら良いかな、といえるわけです。
東洋経済式では(直近7日間の新規陽性者数/その前7日間の新規陽性者数)に常に同じ指数「5/7」で累乗してるので、(直近7日間の新規陽性者数/その前7日間の新規陽性者数)が1より大きければ東洋経済式Rtも1より大きくなるし、1より小さければ東洋経済式Rtも1より小さくなる。
だから、東洋経済が実効再生産数として掲載している指標の情報量は、(直近7日間の新規陽性者数/その前7日間の新規陽性者数)、つまり、かつての東京都モニタリング項目(3)と同じでしかない。
そのため、東洋経済式Rtは東京都モニタリング項目(3)と同じ欠点を引き継いでいます。
それは、祝祭日の影響による検査数の増減・報告時期の偏りや、クラスター発掘による大量発見などといった、実際の感染状況以外の要因によって生じる報告件数のブレの影響をそのまま受けること。年末年始に変な値が出がちなので、専門家会議ではちゃんとエピカーブを作ってちゃんと計算してるはずだし、今の東京都モニタリング項目(3)は接触歴等不明者の増加比に限ることでクラスター発掘の影響を消している。
それと、そもそも過去2週間分のデータを使って算出する以上、どうしても、現時点の値そのものではないということ。厳密さを欠いたイメージで説明すると、先々週の10000人が先週何人に感染させたかは示すけれども、今日の1000人が何人に感染させるかを示すものではないということ。これは東洋経済式に限らずRtの観測の欠点だけど。
そういうわけで、東洋経済式Rtを「これがRtだ!」って言ってる人がいたら馬鹿にして良いと思う。
あと、東洋経済式Rtは公開情報から誰でも計算できるものなので、東洋経済が更新しないからって古い東洋経済式Rtを持ってくる人も馬鹿にして良いと思う。
長~い。全然よくわかんなかった!こういうの分かる人ってすごいね!
東洋経済サイトの実効再生産数は偽物だよパート2 前回のあらすじ。 東洋経済のコロナサイトで実効再生産数Rtとして表示されている数字は、新規感染者報告数の前週比を7分の5乗した簡...