2020-08-18

病-やまい-

俺は母を嫌っている

あの人が家族にしてきたことは今でも思い出したくない

表面的には仲良くしてはいるが常に壁を作って過ごしていた

いまはそもそも単位で会っていない

そんな人が重い病になったらしい

あの人と同居している妹からの連絡で知った

日本人なら馴染みのある病気で、しか痴呆と合わせて4つ

1年前にあった時は老婆そのもので、近くに寄らなければ気づかないほどだった

ほんの少し会わなかっただけでおどろく程の変貌

あの頃から身体変調をきたしていたらしい

妹によれば、最近よく転ぶという

怪我もしたらしい

恐らく四肢の壊死だろう

いま、あの人の身体ボロボロなのは想像に固くない

そしていまは父親が家で看病している

妹とは少し離れた所に住んで

だけど父も手が少し不自由な上に自営業の両天秤だ

認知症と重度の内臓疾患の患者を一人で

耐えられる訳がない

からは既に睡眠不足と聞いている

なのにあの人は頑なに入院を断っている

そういう性格の人だ

自分でなんでもできると言い、人を見下して迷惑をかける

かにつけて口出しをして恩着せがましい態度を取る

医者を信用していないらしいが、自分患者として見られるのが苦痛なだけだろう


だいぶ距離のある俺が介護をすべき?

直行きたくない

からも止められた

妻帯者だから気を使われたのと同時に、俺が力づくで入院させようとすることを懸念したのかもしれない

俺は、弱ったあの人にかつての祖父母を重ねた

ベッドの中で静かに横たわる祖父母の姿に

その昔、祖父母執拗虐待を繰り返してきたあの人が、同じ姿形をしていると想像できてしまった

自身が蔑んだ対象と同じ運命を辿るなんて

あの人はいま、どんな気持ちだろう

自分が弱って初めて老人の立場をわかったのだろうか

いや、わからないだろうな

そんな判断力すら危ういらしい

今、あの人に会えば、俺はあの人とソックリな行動をしかねない

足腰の立たない老婆を叩き、細い身体の爺に水槽を無理矢理洗わせたり、できなければ目せしめに食事を投げつけていたあの日

その矛先が子供や夫に向かない日はなかった

あの人が、自分旦那をなんと呼んでいるのか

名字

仮に山田であるなら

「ねぇ、山田(仮)さん」と

夫をこう呼ぶ

祖父母区別のためかフルネームだった

時々、俺の事も似たように呼んでいた

同類だったのだろう

異様だ

あの人はよく言っていた

自分はこの家に嫁ぐとき借金のかたを担いだと

多額の金を貸して、未だに返済されないと

から自分に恩があるんだと

まり、あの人はあの家を嫌っていたのだ

故に嫁ぎ先の家族名字で呼ぶ

その中で血の繋がっていない自分を上に持って行きたかったのかもしれない

借金事実はわからない

聞く気もない

だけどあの人が行ってきたことは覚えている

まるで、家の人間奴隷とでも思っているかのようなあの目

週1でふすまに叩きつけられる祖父

毎日新聞で叩かれる祖母

父へは言葉暴力

俺や妹への熱心な教育っぷりと洗脳

学校関係者からモンペであり、接客業ではおなじみのクレーマー

家業をしても顧客からの評判は悪く、従業員からも嫌われていた

そういえば

俺はあの人の料理を知らない

殆ど買った惣菜だったか

イトーヨーカドーマルエツが俺を育てていた

あーでも、下手くそ唐揚げは作っていたっけ


あの人に会いたくない

関わりたくもない

俺はなんて親不孝か

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