物心ついた時から絵を描いていて自由帳が何冊あっても足りなかった。だが中学校に入ると複数の小学校出身者が集まるようになって、自分よりも絵が上手な人が周りに急に増えた。
恥ずかしくなって筆を折った。
もう20年以上前。小学生の私は絵が大好きで、いっちょまえに自分専用のデスクトップPC、photoshop5.5、ペンタブ、スキャナ、プリンタを買い与えてもらっていた。パソコンだって一家に一台あるかないかの時代、ど田舎の小学生にはありえない環境スペックが揃っていた。
個人HP全盛期時代にhtmlタグを覚えてホームページを開設し、インターネット上で好きなアニメやゲームのキャラを描き散らかして「オタク」を満喫していた。顔の見えない人たちとイラストを褒めあったり送りあったりした。ほとんどが年上のお姉様方だったと思うが、小学生の自分に嫌な顔せず優しく接してくれる人ばかりだった。私はインターネットの世界に夢中になった。
しかし中学校に入ると上述の通りアッサリ打ちのめされ、更に勉強や部活にも追われて自然とフェードアウトしてしまった。気づいたらオタクもやめていた。
再び筆をとったのは、30歳もとうに越えた今年のゴールデンウィークだった。
昨年末にとあるアニメを人から勧められ、雷に打たれたような衝撃を受けたのがきっかけだった。生きる意味を突きつけてくる理屈っぽくて真面目なアニメだった。作画も綺麗で、魅力的なキャラクタも多かった。
だが何を描いたらいいのか一切思い浮かばないから、アニメのスクショをとってひたすら模写をした。
そこからは怒涛の勢いだった。模写を仕上げていくたびに描きたいものが浮かぶようになった。今では描くのが追いつかず、利き手があと1000本は欲しい。twitterアカウントを開設して地道に投稿を続けたら、嬉しいことに評価してくださる人も現れた。楽しさの倍ぐらいうまく描けない辛さもあって、会社が休みの日に、仕事より辛い思いをして描いたこともたくさんある。それでも熱に浮かされたように描き続けている。
コロナ禍による自宅待機やテレワークも、私を大きく動かした。いい歳してアニメイラストに狂ってしまった私だが、もう絵を描かない人生を想像することはできない。痛くて上等だ。ここまでの何もかもが、たった3ヶ月弱の出来事である。
17年で信じられないほど時代は変わっていた。竜宮城から帰ってきた人のような気分だった。photoshopではなくクリスタというお絵描きソフトがメジャになっていた。液タブやiPadすら通り越して、スマホに指で絵を描いている学生さんには度肝を抜かれた。
先日はフォロワーさんと絵を描きながら初めておしゃべりをした。いわゆる「作業通話アプリ」の存在も初耳だった。話して、聞いて、自分より若い人にたくさん教わって背中を押してもらった。今は制限された色だけで絵を描くことに挑戦している(俗に言うカラパレ)。
オタクだった小学校の頃も、今も、教わるばかりな自分に苦笑しながら、今日も私は推しを描き続ける。
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2020.07.28 思った以上の反応に驚いています。ありがとうございます。リアルの友人に見せることにしたので、一部加筆・修正をしました。