セックスは免許制になり、免許を持った人間同士が性交同意書にサインした時のみセックスが許される世界。その副次効果として、条件を満たしてさえいれば年齢に関係なくセックスが許されることになった。しかしセックス免許の取得には試験に合格しなければならない。問題は性知識やジェンダー論といった複数の科目から出題される。
あるペドフィリアと女児のカップルは、女児の側がセックス免許を持っていなかった。そこで、試験合格のために二人で勉強会を開いた。人生経験の浅い女児には難しい問題が多く、過去問の点数も思うように伸びなかった。時には「どうせバレないしやっちゃおう」と女児の側から誘うこともあったが、ペドフィリアはやんわりと断った。
そしてようやく女児は試験に合格した。試験に合格してもその場で免許が発行されるわけではない。合格証を性生活支援センターに持参して実技講習を受けなければならない。ペドフィリアが持っているのも、実は免許ではなく合格証であった。講習は普通、免許または合格証を持った恋人と共に受けることになる。(まれに一人で受ける人もいるが、その場合は講師の中から性交相手を選ぶ必要がある。推奨はされていないが、素人相手よりもむしろ安心できるという意見もある。)講師は男性または女性またはその他から選ぶことができる。プライバシー配慮のため、講師には重い守秘義務が課される。とはいえやはりアセクシャルの講師は人気があり、予約が必要である。
講習前に問診票を提出する。設問は「SM的志向がありますか?」「小児性愛的志向がありますか?」のような性的志向に関するものや、「耐え難い性的衝動を経験したことがありますか?」といった依存傾向に関するものがある。回答は「はい/いいえ/わからない」の中から選ぶ。講習内容はそれに応じて変動する。
ペドフィリアと女児を担当することになった講師は、老齢の女性で現役の小児科医であった。ペドフィリアは生まれつき性的衝動が少なかったのでそう申告したところ、「もし今後変化があれば、医療機関へご相談ください」のような事務的なことを言われた。それから小児性愛に関する基本事項の説明を受けることになった。「小児性愛者と児童の場合、生涯を共にすることは難しい」といった内容である。概ねペドフィリアから常々女児へ説明していたことと重なっていたので、女児も頷きながら聞いていた。時にはペドフィリアを自認していても知らないこともあり、学ぶことは多かった。二人の真剣な態度に安心した講師から言われた、「永遠に続かないのは大人の恋愛も同じです。永遠に続かないからこそ、今の関係を大切にしてください」との言葉が心に残った。
それから児童の人体構造についての講習が2時間ほどあった。やはりペニスの挿入は難しいと言われ、「どうしても挿入したい場合、長い準備時間と日数をかけて、少しづつ慣らします。その間は必ず性生活支援センターに通い、センター内で講師の監視の下行ってください」と言われた。ペドフィリアは挿入を重視していなかったが、女児は少しがっかりしていた。また今回のケースでは実技講習の中で処女膜の除去が難しいため、手術によって取り除くかどうかの選択肢を提示された。女児の判断により、後日手術を行うことになった。
最後に実技試験が行われた。今回は挿入は禁止で、ペッティングのみである。ペドフィリアも性交経験はないため、講習は困難であった。講師の指導は優しかったが、「嘘をつかない」ことを厳しく約束された。痛いときは正直に痛いと言うことが大切だと繰り返し言われた。それでいて、「相手は嘘をついているかもしれない」ことは常に意識しておきなさいとも言われた。ややこしいが、講師の説明は納得のできるものであった。
こうして二人は無事免許を取得した。女児の免許は挿入禁止の限定免許である。どうやら今後は限定解除のために通う意思もあるようである。