前々回のバイトでは数ヵ月ぶり二度目にプロアルバイター氏とのシフトだった。
一度でもプロアルバイター氏と仕事をするとプロアルバイター氏の事を皆すごく嫌いになるらしい。どうしてかというと、プロアルバイター氏がマルチタスクを極度に苦手としている事と、生真面目すぎる性格であるかららしい。そういうところが口ばっかり偉そうで動かない人と受け取られてしまうっぽい。
というプロアルバイター氏だったが、いざ一緒に仕事をしてみたら、ものすごくバリバリ働いていた。
とか言って、人の仕事まで奪う勢いでなんか働きまくっていた。
何故かっていうと、プロアルバイター氏は先日、オーナーから「君にはとても期待している」と皆の前で誉められたから。『オーナーはアイツはクビだと言っている』という噂がまことしやかに囁かれている状況からのベタ誉め激アゲが、プロアルバイター氏のやる気スイッチを押した↑↑↑
でもってその日は私が初めて準夜勤(22時から0時)に入ったのだけど、店長が「とりあえず増田さんはレジだけやればいいからー。あとはプロアルバイター君に任せるよ」と言ったので、プロアルバイター氏は増田さんは何も出来ないから俺がしっかりしないと!!!と思ったらしい。
「了解です」
暇な時にプロアルバイター氏と話していたら、準夜勤はすごく人手不足なのは、働ける人員が女子ばかりなのに規則では二人のうち一人は男性じゃないといけないから、という話になった。
「そうなんですよねぇ、やはり安全面からいうと女性だけだと危ないので……」
と、プロアルバイター氏は言いながら、なんか雷に撃たれたような顔をして、
と、箒持って外へ飛び出して行った。夜中に女に外の掃除をさせたらいかんと思ったらしい。
という、前々回の話を前回のバイトで相棒に言ったら爆笑していた。「あの子結構単純ねぇ」と。
私はすっかり、新人ちゃんから完全に軽んじていい人認定されている。相棒にはへりくだるけど私には露骨にゴミを見るような目をするのがしんどい。私が何をした訳でもないが。交代で入るだけなので何のしようもないし。
後任者がレジの仮点検をしたら前任者は上がりの時間までちょっと雑用をしてから帰るんだけど、仮点検をしたあともレジに立ち続けていた新人ちゃん。仕方がないので袋詰め手伝ってたら、新人ちゃんは丁度上がりの時間になった瞬間、商品とチェッカーをまじでポイッと投げ出して
「あとお願いします。あたし上がるんで」
とつんけんした態度で去って行った。
お客様の前だよ。いくら私の事が気に入らないからってそれはないだろ。あれか、私が率先して「替わります」って横から割って入れって事なのか。レジは一度打ち始めたら最後まで打つものだけど。
イラッとしたけど、どうせ私が何言っても私を見下してる新人ちゃんには響かないし、他の人に愚痴ったところでどうせ増田さんが何かやったんでしょ?とか言われるだけだから、諦めた。
何もやらかさなくても成果出しても真面目に勤務してても見た目だけでダメ人間認定されるのが私の人生なので、もういいです。
イケメン正社員氏と久しぶりに話した。私はイケメン正社員とは向こうが話しかけて来ない限りは話さないと決めていたりする。イケメン正社員氏の事が気に入らないとかそういう訳ではないのだけど、一応自衛の為である。
というのも、以前の職場を辞めた時の苦い経験からそうした方があんぜんだろうと思ったのだった。前職を辞めた原因っていうのが、上司と不倫をしているという事実無根の噂をばら蒔かれた事だった。それ以外にも色々嫌がらせをされたけれど、夫の親戚が重役として勤めている会社だったから、不倫の噂は私には強烈に効いたのである。狭い田舎でそんな噂流されたら社会的に死ぬ。
虫も殺せぬような顔をして、既婚者の癖に
喪女喪女しい空気感が抜けないくせに、上司とあんな事やそんな事を平気でしている!という噂は、前の職場の暇人達には大層ウケていた。それで私は仕事といっしょに家庭まで破壊されないうちに逃げざるを得なかったのだ。
そんな事があったので、みんなに人気者で、私よりずっと年下だけど一応立場的には上司のイケメン正社員氏にはあまり関わらないでおこうと思った。
イケメン氏はとても人気者だから、だれでも会えば氏をかまうのが普通なので、あんまりスルーするのもおかしいのかもしれないとも思う。本人も自分が人気者であることを心得ているらしくて、基本的に待ちの態勢でいる。そういうとこに関わりづらさを感じてしまう。