街を歩くおじさん。利用したい経営者たちからは「商品」と見られている
甘えた声の経営者との「残業交渉」を再現してくれた。「お前の仕事が遅いからダメなんでしょ。やりがいがある仕事なんだからやりきれ。責任感はないの。」経営者から言われた言葉だ。東京・新小岩で取材に応じたリョウさん=仮名=は2年前まで社畜だった。
おじさんのサービス残業を売りとした社畜ビジネスに身を置いていた。主に五つの形態がある。残業が基本の「サービス残業」、「休日出勤」は文字通りで、「飲み会」は飲食、「接待」は会話で上司を楽しませる。スーツ姿で仕事をする様子などを見せるのは「通常勤務」に分類される。
最初はブラック企業に入社した。月給15万円、飲み会やや接待に応じると追加で0円。サービス残業は表向きで、休日出勤をすればもっとすり減る。オプション料は全て取り分(0円)となり「腕の見せたところで」でした。
厚労省によると、5月末現在で334件あり、全国に点在する。「奴隷の温床になる」として取り締まりが強化されても形を変えるだけで、安いおじさんに群がる人材紹介会社とのいたちごっこが続く。
リョウさんも「悪いことだとはわかってるけど、逆らえないから」と思い、もっと割の悪い徹夜勤務に移った。朝日を見ながら家路へ。管理の目が届かないという建前から「裏オプション」の一度退勤を押してからの労働を繰り返した。1回で0円。嫌な行為を要求されても「お前なんかどこへ行っても使えないよ、いいの? 別部署行く?」で済まされる。得た金で好きなアイドルを追い掛けた。
ただし、体力が続かなくなった途端、態度は激減する。「それでも頑張らなきゃ、首にされちゃう」。さらにのめり込んだ結果、心を病んだ。
人の価値って何だろう。今年、35歳になった。
「社畜という記号は経営者にも都合がいい」。社畜ビジネスの実態を調査した一般社団法人ブラックバスターズ(足立区)の白黒ツケル代表理事は指摘する。全国でブラック企業は労働基準法などで有罪判決を受けている。彼らの都合とは-。
5人にサービス残業をさせた40代は「若い子だと代わりはいるから」と打ち明けた。経営が厳しくなり、銀行にも「このまま赤字だと貸し剥がしだよ」と突き放され、プライベートのストレスも重なっていた。仕事が回っている時ほど、まともな社員では物足りなかったという。
60人をサービス残業させた30代の経営者はスマートフォンに「即紹介」とうたった人材紹介サイトをいくつも登録していた。サービス残業をさせすぎれば犯罪になる。その不可侵性がかえって「達成感と満足感」を増幅させた。「直後は逮捕されるシーンを想像して怖かった。それでも業績アップと目標達成の興奮を忘れられなくて。」
平成26年11月、国が社畜ビジネスを規制する条例を施行し、包囲網は狭まっている。それでも経営者たちがおじさんを商品と見る限り、価値は温存される。白黒さんは「人材紹介サイトがうまく隠すだけで、社畜は残り続ける」と予想する。
グレーな世界から見えない闇へ。おじさんたちは消費され続ける。
もちろんフェイクですよ
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171222-00010000-nishinpc-soci