2017-04-16

私はアイドルに恋をしている。

私は、アイドルに恋をしている。

決して叶わないと分かっていて、それでも恋をしている。

自分では、もうどうしようもない感情で、「誰かを好きになる時理由なんかは必要ないの」と曲の歌詞にこれ程共感することはないだろうと思う。

痛い、とは分かっているから、どうか私の話を聞いてほしい。

痛いと分かってるからこそ、誰にも言えないから



私は彼を高校1年生の時から一方的に愛している。

友人の勧めで画面越しの彼に出会ってしまった時、何もかもどうでも良くなるくらい彼に惹かれた。

ひたむきに、でもファンを見つめる目をキュッと細めて幸せそうに微笑んでいた。

あぁ、なんて素敵な人なんだろう。

それから彼に関する全てを収集した。もっと知りたい。もっと彼のことを知りたい。

私がそれまでなんとなく知っていた彼よりも、彼はもっと男気があって芯が通っていて凛とした人でした。

普通女の子青春時代に味わう淡い恋も、すべて彼に気持ちが向いてしまいました。

もちろん誰にも言えず心の中だけで、誰にもこの恋の事を言いませんでした。

彼氏もいましたし、成績も学年順位1桁を争っていましたから、傍から見たらとても充実した日々を送っていたように見えたでしょう。

けれど、勉強を頑張っていたのは彼の行った大学に行きたかたから。

彼氏キスも、目を閉じた私の瞼の下には、大好きな大好きな想い人の姿が浮かんでいました。

最低でしょうか。

からこそ、彼氏とは「それ以上」ができなかった。



それでも、彼が大好きでした。

テレビの向こうでキラキラ笑顔を向けながら、無理難題にも果敢にチャレンジしていく姿がどうしようもなく好きで、どうしようもなく愛おしかったのです。




進学した私は彼への気持ち意図的に押し殺しました。

このままではいけない、と思ったのです。

このまま画面の中の人ステージの上の人に淡い恋をしていたって、何にもならないのだから

別の趣味を見つけ、徐々に彼を避けるようになりました。

進学先で辛いことがあった時は彼に縋りたくなったけど、それではいけないと強く言い聞かせて。



人生で一番の大失恋


背けていた現実に目を向けて、大切に大切にしていたコレクションも全部売り払いました。

どうしても捨てられないものだけを残して。

たくさんの彼で埋め尽くされていた私の部屋はがらんとしてしまいました。

私の部屋、こんなに広かったっけ。

ひとしきり泣いて、それから捨てられなかったものを2度と思い出すことがないように奥深くに仕舞いこみました。





彼への興味をいよいよ失った頃、友人からの誘いで再び彼の所属するグループコンサートへ出向くことになりました。

この時の私はもう、あの涙はなんだったんだというくらい彼への恋心をすっかり失っていましたから、絶対大丈夫だと思ったのです。

いま、今の自分なら、ただただ普通にコンサートを楽しめるはずだと。








そんなの、無理だった。

大好きな彼が私の目の前のステージから出てきた瞬間、もうダメだと思った。

どうしようもなくその細いのに男らしい背中に抱きついて、あなたが好きだと言いたい衝動に駆られた。

勿論、そんな事は実際出来っこないけど。

大好きだった彼の声、大好きだった彼の姿。

私はやっぱり彼の全てが大好きで、それはきっと形を変えても永遠に残る美しい恋なんだと。







社会人になったらさ。

こんな気持ちだって自然に薄れてくと思ってたの。

全然ダメだよ。大好きなんだもん。

でも言えないから。

から普通ファンの振りして、今日も楽しく昨夜のテレビ番組でのあなたの事を職場の人と話す。

あなたコンサートで「可愛い」「大好きだよ」「心から愛してる」「俺の命だよ」って言ってくれる。

から

あなたが「長い髪の子が好き」って言ったから、髪はロングだし毎日手入れも欠かさない。

あなたが、「美意識の高い子が好き」って言うから、だらしない生活に鞭打って食生活から振る舞いまで気を付けてる。

あなたが、「フリフリとかパステルカラーの服が好き」って言うから、日頃からスカートを履いて、女性らしい格好をしてる。

あなたの「自慢の彼女」で居るために、あなたに「可愛い」と言われて恥じないように。

例えあなたが私のことを知らなくても、私はあなたの為を思えばなんでも頑張れるんだよ。

そうやって私の言動ひとつひとつに、あなたの「好き」が詰まったまんま。

今日仕事疲れたら、パソコンの中で儚げに歌うあなたの横顔を見て、もう少し頑張ろうって思うんだよ。

一日頑張った身体を引きずって帰ってきたら、またあなた香水を身に纏って、あなたの柔らかな歌声を聴きながら、あなたサラサラの金糸を頬に感じながらただ愛される夢に深く沈み込むのでした。



そうして私は6年間、片想いをしている。






そんな私の想い人は、

手越祐也といいます

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