彼氏と別れた。
いずれこの人と結婚すると思っていたけど別れた。
題の通り彼から「結婚しようよ」と言われたのだけど、同時に「ふたりで仕事を辞めて、俺の実家に帰ろう」と言われたのがきっかけだった。
彼がいつか実家に帰りたがっていることは知っていたけど、それは遠い先の話で、たとえば定年後とか、そういう話だと思っていた。
根拠は、彼は専門職の専門学校の出で、そこを選んだら基本的にその道以外に進路がないような経歴の持ち主で、きちんとその道を選んで就職していたからだ。
「子どものころの夢だった」というその職業のために進路を選んだのに、それを手放すことはないと思っていた。
今の会社を辞めて田舎に戻れば、再度地元でその職業につくことは不可能に近い。
詳しくは知らないが、25歳くらいまでしか新規採用しない業界らしい。
だから彼が今の会社を辞めたら、次の職場は別の業界ということになる。
そうなると彼はただの30歳で高卒の男になるのであって、普通の事務職もやったことがない彼はなかなか就職は厳しいだろう。
そしてそれは私も同じことだ。
私も同様に専門職にしか進めないような専門学校の出で、しかも、その職業を選ばず、現在はただの事務職(しかも非正規)だ。
結婚するのはいいとして、私と彼が仕事を辞めて彼の田舎に帰ったら、私たちは特に技能のないただの高卒夫婦になる。
彼の実家は農家なので、彼はそれを手伝うつもりでいるらしかった。
でも、彼の実家は「専業農家」ではなく「兼業農家」で、彼の父親はサラリーマンだ。
彼は彼の父親のように、今更普通のサラリーマンになることはできないだろう。
なんたって彼は「一般教養」のテキストに載っている漢字問題を、20問中2問しか読めないようなアホなのだから、悲しい事だけど、無理だよ。
パソコンもまったくできず、ネット回線を契約したあとはほったかしになっているし、勉強熱心なわけでもない(形式だけでほとんどが受かる昇任試験にも落ちる)
貯金があればしばらくやっていけるだろうけど、彼にはたぶん貯金なんてない。
彼は最近、就職先と同じく「子どものころから夢だった」というBMWを新車で買って、ローンが残っている。
月収が手取り25万くらいで一人暮らしの男が、よく頑張ってBMWなんて買ったと思う。20歳のころからお金を貯めて買ったのはえらいと思うよ。
ただ「BMWを買ったから俺の目標は達成。だから次は仕事を辞めて結婚したい」なんてどうかしてる。
私には貯金が500万あるけど、こんなの一瞬でなくなってしまう額だろう。とてもじゃないけどやっていけない。
彼の要望は「すぐにふたりで仕事を辞めて、俺の実家に帰る。子どもは4人作る」だ。
彼は自分が4人兄弟の長男で、家族が大好きだ。末の弟はまだ高校生で、よく可愛がっている。
だから同じような家庭を築きたいんだろう。湯水のようにお金があったら私だってかなえてあげたかった。
だけど私たちにはお金がない。せっかく東京でそれなりの仕事をさせてもらってるのに、どうして今すぐ手放すのか。
私は支えてあげられる自信がなかった。
私は「俺は長男だから、親に言われているわけではないが、実家を継ぐ」と言ってきかない彼にこう聞いた。
「私も長女だよ。あなたも知っている通り妹が二人いる。うちには女しかいないのだから、長女である私が婿を取らなければいけなくて、ふたりで私の実家に帰りたいと言ったらどうするの?」
うちの両親にお家という感覚はないので実際に婿取りをするなんてことはなく、仮定の話だけど、彼は「それはできない」と言った。
「きみの家に帰ったら俺の実家まで遠くなる」とか「家を継ぐのが俺の夢」とか言い出して、結局自分の思い通りの未来以外は受け入れられないんだろう。
つまり彼は、たぶん「とにかく仕事を辞めて実家に帰りたい」「結婚すると言えば私が納得する」「あとはどうにでもなる」と考えている。
だから私は「今すぐ仕事を辞めて実家に帰るのが条件ならあなたとは結婚できない。ここに残って仕事を続けるのなら結婚する」と言った。
そうすると彼はとても喜んで、なんだか同棲でもするのかというような準備をし始めたから驚いた。
だって彼は仕事を辞める気満々で、私の話の「結婚する」というところしか聞いてないかのようだったのだから、驚くしかない。
何度も「仕事は辞めないし、あなたの実家に帰る気もない」と言って「判ってるよ」と返してくるのだけど、まったく判ってるようには見えなかった。
私はだんだん腹が立ってきて、こんな金の使い方も判らない男と一緒になったら人生が終わってしまうとまで考えるようになって、イライラした。
このイライラが一時的なもので、勢いに任せて「別れて欲しい」と言ったら後悔するかもしれないと思って、一ヶ月くらいは我慢した。
でも、夜の生活のときに避妊をしないと言い出したのがきっかけで、この人との未来は有り得ないと思って、結局別れました。
「別れよう」と言ったとき、彼は心底納得できない、理解できない、あまりに予想外というような反応をしてきたけど、逆になんで予想できなかったのか理解できなかった。
私はこの先、一生彼を支えてあげられる自信がなかった。だから別れました。
賢明な選択でしょうな。
キミのように物事を順序立てて考えられる人と付き合いたかった