騒動に一区切りついたので、一般国民側からも少し話をしようと思う。
パクリでは無いと考えている。
当然である。デザインを購入した後、世間から問い合わせを受けるのはクライアント。もし、サントリーの一件で佐野氏の名前が出ていなかったら、どうなっていたか。
自社の名前で出している以上"管理が杜撰・意識がなってない・人のものを盗んでも平気な会社"そう言われるのはクライアント。盗用騒動があって尚、業界全体に擁護や被害者意識がある以上、こちらが自衛するのは当然の行為。
また、説明を求めるのも当然。発表後はあなたの代わりに説明をしなければならない。その行為を「文句・いちゃもん」だととらえ、「黙らせる」ためにはどうしたらいいのかなど、まるで敵であるかのように表現されているのを見ると、非常に残念。
・論文で嘘が発覚
等、業界の信頼を著しく落とすような問題が発生した場合、同業者はそれを非難、または自分のところは違うとはっきりと主張する。
ところが今回はどうだろう。
・業界ではよくあること
・そんなこと言っていたら、商売にならない
・内々の資料が表に出ちゃってかわいそう
圧倒的に擁護の声が多い。理解に苦しむ。一体何を守ってるのだろうか。
モノを作っているのは自分たちだけだと考えている方が多いようだ。なんという傲慢!あなたの身の回りにあるモノやサービスは自動で生まれてくると思っているのか。
我々の世界では、プレゼン用はもちろん、部署内で数人しか目にしないモノでも、お金を払って正規のルートで入手した素材・原料を使って試作を作る。他社商品を参考にする際も、お金を払って購入する。人のモノを盗んで作ったりはしない。人のモノを盗んで商売に使うのは、それ素材を作った人に対する侮辱、そして犯罪。
社内の試食会で、コックが畑から盗んできた野菜を使って料理をしていたら、あなたはどう思うだろうか。
世の中には有料無料を問わず、使っても問題ない画像が多数存在してるが、それを購入・探す手間すら惜しむ。そんな意識で「モノを作る大変さ」などと口にしないでほしい。複製が容易なデータだからと、甘えてるだけだ。「内部的なものは人から盗んでも可」という甘ったれた業界の常識は一般国民には通用しない。ここを改めない限り、悲劇は何度でも繰り返す。
そうは言っても…、ではなく、まずあなた自身が"盗用とわかっているものを使わない"、そう”指導する”ことから始めて欲しい。さもなければ、イザという時、あなたも同じ目にあってしまうだろう。
此度、使用中止という結果に終わった原因は、エンブレムの類似性よりも、作ったのが佐野氏だったからだと考えている。当初、私や周りの人間はエンブレムを支持していた。世界規模で探せば似ているモノがあって当然と。
だが、トートバッグあたりから雲行きが怪しくなり、それ以後、彼らが行動を起こす度、不信感が募り、空港の写真が決定打となった。
我々一般国民も日々苦労しながらモノ・サービスを作っており、誰かの下で働いている。
会見で後付のコンセプトを話し、内々だからと日常的に盗用を行い、それが公開される事故が起こったら、部下が何も言わなかった、業界では普通と弁解する人間。作品に罪はない。けれど、私は佐野研二郎という人間を支持することはできなかった。
使用予定だったエンブレムは優れている。インターネット上で作られたどの作品よりも、上品で堂々としている。しかし、人の権利を蔑ろにする人間に、オリンピックエンブレムのデザイナーでいてほしくはなかった。使用中止の速報を見た時、ホッとした。
出来上がったモノと作ったヒトとを混合して判断する行為は、モノを作る人間として恥ずべきものだ。騒動が収まり、冷静になった今、深く反省している。今後、同様の事件が起こった際、冷静に多くの問題を切り離し考えるよう改めたい。