寝かしつけるの大変だけどね…
やっと寝てくれたよ…
まあでもアレだね。こうやってスヤスヤ寝ている寝顔を見てると、親になってよかった、ってほんとに思うよ。
ところで、先週、夫の実家から妙なものが送られてきたんですよ。
私の誕生日でもないし、夫の誕生日でもない。娘の生まれた日も違う。
送り主は夫の父親。それはハッキリ書かれてた。
紅茶は今にも降り出しそうな曇天の日に、なんの前触れもなく、送られてきた。
すぐに夫の母親がでた。「あらXXXちゃん。お久しぶり」チャーミングな声が聞こえてきた。
彼女はそれなりの歳だが、誰に対しても愛嬌の良いキャラクターで、私との仲も良好。
「お久しぶりです、お義母さん。あいも変わらずお元気そうですね。ところで、昨日、紅茶を送って頂きましたね」
「ええ、送ったわよ」
にっこり笑う義母のほほえみが目に浮かんでいたが、実際の私は、リビングの真っ白な壁を見つめて話していた。
「いつもありがとうございます。ところで、昨日は何かの…記念日でしたっけ?」私は聞いた。
「いいえ? 記念とかではないけど?」
もちろん、人によっては、特に目的も記念日も関係なく、プレゼントを送る、という人もいる。
母の日や結婚記念日にさえ、電話すら寄越さない孤独な人間がいる一方で、相手を喜ばすためにはタイミングを選ばない人がいる。
そして殆どの人間は、両者の中間に属する。すなわち、送るときには送り、送らない時には送らない。
相手を喜ばしたい一心で気持ちを込める時もあれば、ただの義理で仕方なく送るときもある。
人生のフェーズによって、相手との関係性によって、その時の気分によって、態度を変える。
波に揺れる葉っぱのように、ゆらゆらと。それがノーマル・ピープルだ。
夫の母親と違って。
夫の母親は、”どんな時でも必ず、例外なく、体面を取り繕うためだけに行動する”。
首尾一貫しているといえば聞こえはいいが、実際に接してみると異様そのものである。
数年前、夫の弟が死んだ。
死因は水死だった。
冬の日の海岸に、うち捨てられているのを、犬の散歩をしていた老人が発見した。
夫の弟は独り立ちしてからずいぶん経っており、かなりの間、実家とは疎遠だったらしい。
綺麗に化粧された弟の遺体を前に突っ伏し、嗚咽した。彼の名前を何度も呼んだ。
でも、夫の母親は父親の再婚相手だ。しかも彼女は、夫の弟が自立した後に再婚した。
だから、二人には関係性が殆どない。正月にさえ顔を合わせることはなかったと聞いている。
それを私は知っている。夫も知っている。けれど、葬式の参加者はおそらく知らない。
だれもが皆、彼女に向かって、ご愁傷さまです、ご愁傷さまです、と声をかけた。
彼女は涙を拭き、深々とお辞儀をして、恐れいります、恐れいります、と繰り返した。
ズレに気がつく人はいない。
正直に言うと、私はその時まで、彼女のことが好きだったと思う。混じりけなくストレートに、好感を持ってたんだ。
でもその日は、ただただ、「イヤだな」と思っていた。
「XXXちゃん? ひょっとしてご迷惑だったかしら? 紅茶は嫌い?」
「いえ、正直紅茶は好きです。ちょうどパウンドケーキがあるから、一緒にいただきます。そうだ、切らしていて、買わなきゃ、って思ってて忘れてました。
送っていただかなければ、夫と私は、緑茶でケーキをいただくところでした。あの人も紅茶好きだから、ブーブー言われなくて済みましたよ」
「ええ、もちろん知っているわ。良かったわね。タイミングがよくって」
でもその晩、夫は帰ってこなかった。
久々に仕事で遅くなる。会社に泊まる、と携帯にメールがあった。
とても短くて簡潔なメールだったのが、嫌だった。
いつも夫はメールが長い。世間では女のメールは情報量が多くて、男は要件だけを淡白に述べるそうだが、
ウチは逆だ。
ねえねえXXXちゃん、帰りがけにスーパーでいいもん見つけちゃった。なんだと思う?(答えはスクロール)
(数行空く)
答えは”新たまねぎ”!
これでサラダ作るとウマいんだよねー。普通の玉ねぎよりちょっと高いけど、その分、味が段違い!
あ、ところでひょっとして、晩ごはんもう作っちゃった? いつもありがと~。
まだなら、お惣菜も買って帰ろうか
たまには手抜き家事にしてもいいんだよ。とは言ってもモチロンXXXちゃんの料理が一番だけどねー☆キラリン
…とか言ってみたりして。ハハ。
以上だ。手が空いてないなら返信は無くてもいい。30分で帰宅する。
これに対して私は、”おつかれ。ありがと。買ってきて”と返す。
その日の夕食は、お惣菜をあたためたものになる。私は、味噌汁だけ作る。
中身はティーバッグじゃない、ちゃんとした茶葉のやつだ。缶入り。
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