2024-05-25

[]『どんでん返し』が夢オチの言い換えみたいになっている件

作品性質上具体的にタイトルは上げないが、このミステリーが凄い的な賞を取ったミステリー小説を読んだ。

途中まで、ただひたすらに陳腐時代遅れ漫画ヒロインが、陳腐時代遅れ描写超能力を使って事件解決していく話で、なんでこんな下らないものを読んでるんだろうと挫折しそうになりながら読んだ。

すると、最後に「あん陳腐能力があるわけないじゃないですか。全部お芝居ですようふふ」とか言い出した。そのお芝居が本当の能力なんだと。

 

なんだそりゃ。

 

こっちは、矛盾だらけでくだらないと思いながら、まあそういう稚拙な作者なんだろうという見切りで読み進めただけだ。

アンパンマンを見ながら、「こんなに吹っ飛ぶほど殴ったら死ぬだろ」と突っ込まないのと同じ心理で、こんな展開不自然だろをただ面倒だから読み飛ばして来たに過ぎない。それを、「だまされちゃったね」みたいに言われても。

これを「うまくだました」って自己認識できる精神って、バイトテロのような誰から見てもキチガイな行動を取りながら、「自分うまいこと『ネタ』で興味を惹き付けてる」と思い込んでいるアホと何が違うのか。

と思っていたら、どうやらああいうのを本気で「騙された。うまい」とか言う奴もいるらしい。

あの夢オチみたいな、ただ最後に「嘘でした」って言うだけの雑なひっかけが、昨今のミステリー賞的な評価では「どんでん返しが凄い」というんだそうだ。

 

いやちょっと待てと。

 

あんな、ただ最後にひっくり返せば良いだけのもの評価するなら、筆力なんか要らないじゃないか

途中までベタベタを煮染めたような、スーパーマンみたいなファンタジーを書いて、最後に全部機械仕掛けトリックでしたと言えば済むだけのもの、何がありがたいんだ?

百歩譲って、「最後に全部嘘だったとわかって驚く」展開として評価させたいなら、途中までは迫真の、その道としてちゃん評価されるような内容じゃなきゃやる価値もないだろ?

どうみてもやっつけの、穴だらけの、「それっぽいことを並べただけ」の、ファンタジーとしては二流以下みたいなものを並べて、読者が「ファンタジーとしてはまったく出来が悪いが目をつぶって読もう」と考えて読み進めるようなものじゃ、普通にだめだろ???

何度もいうが、それって「騙してる」んじゃなくて、「騙されてもらってる」んだよ。

アンパンマン世界観文句を言わずに見るのと一緒の目線で見てもらってるだけ。

そんなののどこに評価するポイントがあるんだ?

 

実はこういう感想は、別の、今度は海外ミステリー映画でも同じように思わされたことがある。

最初からどう見ても怪しさ満点のヒロインを、主人公けがピュアに信じていて、そこに批判的な目が当てられないまま、主人公ピュア視点だけでロマンスみたいに話を盛り上げた結果、やっぱりロマンス詐欺でしたというだけの話。

これもやっぱり、「どんでん返しが凄い」みたいな評価を目にする。

一体世の中はどうなってしまったんだろう。

どんでん返しという言葉は、ただ最後にひっくり返せば良いだけのものじゃない。

そこまでの流れを説得力を持って盛り上げるから、ひっくり返す展開に驚きと同時に「納得」が生まれるんだ。

 

まりにも一方的な、ちょっとでも知性のある読者なら「客観性がないなあ」と難色を示すような描写表現できるのは、主人公客観性のなさじゃない。作者の客観性のなさだ。それに目をつぶって読み進めた読者に「やっぱり嘘でした。騙されたでしょ」というのは、「わたし馬鹿だと思った? 馬鹿じゃないよ」と言い出す馬鹿しかない。

狂人の真似とて大路を走らば即ち狂人なり」という言葉がある。

稚拙作家のふりをしたつもりで話の半分以上を稚拙な内容で埋められるのも実際に稚拙と言うしかない。

こういう手を変えた夢オチみたいなものが「どんでん返し」として評価されるようなミステリー世界って、どれだけ書き手読み手劣化してしまったのかと驚いた。

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