ちょっと前に書いたものだけれど、下書きに入れていたもののお焚き上げをさせてほしい。
端的に言うと失恋した。告白してフラれたとかではないんだけど。吐き出させてほしい。
私30歳女彼氏なし。
人事異動でやってきた先輩。30代後半男性、独身。結構厳しめで正論バリバリな人。辞令が出た時に
自分も別部署だったときに怒られたことがある。あれは私も悪いんだけどさ…。
先輩が異動してきてから2ヶ月後、仕事でペアを組まされることになった。
仕事の相方として、誠実に接してくれた。仕事も根拠がしっかりしていて丁寧だった。確実に職場の雰囲気に変わっていった。
仕事の合間にする雑談も、諺や故事成語、歴史、古典文学から引いてくるような話題が多かった。本をたくさん読んでいるようで、気になったシリーズ8冊まとめ買いしたと言っていた。なろう系も読んでる???ラノベ??内容は結構忘れてしまったけど、とにかくいろいろ詳しかったし、説明がうまいので何言ってるかわからない、理解できないって感じではなくて。私が知らないことも多かったので、勉強にもなった。それで会話が続いたのは今まで先輩だけだった。
あと食べ物に関しても、ものすごく詳しく、美味しんぼも読んでる。
仕事の合間には、昨日の帰りにデパートで買ったというお菓子の味や由来を語ってくれた。
私にも大抵の知識はあったし、美味しんぼも読んでた(山岡に子供ができるぐらいまで)ので応戦する。
「ドラジェは糖衣、あ、糖衣は正露丸の糖衣なんですが…」『硬いのですよね、中がアーモンドの。引き出物ですか?』
(デメルのラングドシャを食べながら)「ラングドシャは猫の舌って意味なんですよ」『(知ってる…)デメルで猫の舌っていうとチョコレートの方が有名ですよね』
そんな感じで応戦していたら、新作を買うたびに勧めてくれるようになった。
結構いろんな人にも勧めてたけど。
もらってばかりなのも何なので、私からもちょっとしたお菓子を差し上げたりもした。
たまに机の上に「お土産です」と置いてあったりした。旅行とかじゃなくて、レオニダスとかデパ地下とかの。
うれしかった。彼の中でちょっと特別扱いなのかなって。そんなんされたら惚れてまうやろー!!!
先輩は顔がイケメンとかそういうわけではないんだけれど、顔立ちはあっさり系。
服装もおしゃれというではなくて、シンプルな大きめサイズを着てる。
彼女はいないらしい。自称だけど。あと少子化の話題の時に「結婚してる人は希望があるけど、自分にはないので」みたいなことを言っていた。察し。ペア組んですぐの頃は、先輩結婚してるか彼女がいると思ってた。何かの拍子に「誰かと行ったらいいんじゃ?」みたいなことを言った時に、「自分に結婚相手とか”誰か”がいるように見えますか(怒)!?」と返ってきた。はい、いると思ってました。
個人的な価値観の話になるけど、私は顔立ちや服装は重要視してない。
あ、でも頭の良さはほしい。会話が成り立たないのは辛くなる。
話を戻そう。
先輩の声が、私の好みのタイプだったんです。落ち着いた暖かくて丸みのある声。ずっと聞いていられる。
そんな感じで仕事中もちょっと楽しく過ごせてたんだ。会話してるのが楽しいと思えたのは久しぶりだった。
それが、年明けから職場で一人休業者が出て、ペアの組み換えがあり私と先輩はそれぞれ別の人と組むことになった。
片付けと机の移動をして私と先輩のペアは解消した。
それから数週間。
先輩とは挨拶と電話の取り次ぎでしか話していない。先輩が新しいペアにも親切で、他の人とも雑談してるのがよく聞こえる。
私が先輩に話したエピソードを「聞いた話ですけど…」と、新しいペアの人に話しているのを聞いてしまった。心がぎゅっとしてどす黒い感情でいっぱいになった。それは私のエピソードで、それを盗られた気がした。
昨日、仕事量がかなり多かった。もうペアではないけど、まだ同じ班で、それは班でやる仕事だったんだ。定時ギリギリになって慌てながらその仕事をやっている私と、ゆったりと帰り支度をしている先輩と新しいペアの人。
以前だったら先輩はその仕事をしていたら、どれぐらいで終わりそうか声をかけてくれたんだけどな。ああ、私は彼の気に掛けるメンバーリストにはにもう入っていないんだと思った。泣きそうだった。
そうだよね、隣の机で、仕事の相方だったから気にしててくれたんだよね。
机も離れたしもう相方でなくなったから、気に掛ける必要はないもんね。
彼の温かな優しさの対象外になってしまったのがショックで、先輩にどう接していいのか分からなくなった。
ペアが変わって相方でなくなっても、同じように接してくれると思ってたんだ、でもその考えは間違ってた。
ウマが合って、上手くやっていけてると思ってたのは、きっと私だけだったんだ。
たまに意地悪なことも言ってしまったし。
微炭酸のようにシュワシュワと私の心は浮き立っていたんだ、きっと。
大好きとまではいかないけれど、好意を抱いていたのは確かだったんだ。
出勤すればまた聞こえてきてしまう、私には向けられていない温かな声を耳にしても私は平気でいられるのかな。