いや、まだ平成は終わっていないけれど。
でも、自分の中にだけとどめておくには辛くて、身バレしたってなんだって、もう誰でもいいからわたしの話を聞いてほしいと思って、キーボードを叩いている。
インターネットの海にこの気持ちを流して、そのままわたしの中からいなくなってほしいと思う。
ただ、わたしはこれまで異性を好きになったことしかなくて、自分がバイだと思ったのは失恋した人を好きになったとき。
好きだと気づいたのは1年前のこと。その人の前にも一度女の子を好きになっているんだけど、その時は恋愛としてしっかり意識していたわけではなかった。
名前がないと不便だから、今日失恋した彼女を、Aちゃんとしよう。
Aちゃんのことは、ほんとうに好きだったんだとおもう。
異性を好きになったことしかなくて、人として好きなのか、それ以上の気持ちなのか、自分でもよくわかっていなかった。
だけど、本当の「好き」って、「愛」ってこういうことなのかもって、初めて心から人を好きになれた気がした。
わたしは心の壁がばかみたいに高くて、誰のことも本当は信用していなくて、自己肯定感がとても低い。
そんなわたしが心を許せる数少ない人だった。この人にならわたしのことを、全部曝け出してもいいと思えた。
共通の友人の家に泊まり、2人で横になっているときにAちゃんは言った。
友人が寝た後、わたしたち2人だけがまだ話を続けていて、すぐ横にAちゃんの顔があった。
わたしはその時のことをずっと覚えている。
Aちゃんにだけはそう言うことができた。人に言ったのは初めてだった。
Aちゃんは、「分かってくれる人ができて嬉しい」って言って笑ってくれて、
わたしもやっと口にできたことも、理解者が近くにいるってこともうれしかった。
今日も、失恋をした今日も、「〇〇さんとは、こういう話ができるから楽しいです」ってまた笑いかけてきた。
あなたが好きだから、そういう話をして、あなたの気持ちを探っていたんだよ。
とはさすがに言えないから、
わたしにも、こういう話ができるのはAちゃんしかいないよ。って、へらへら笑っていた。
Aちゃんとふたりで出かける夢を見た、そう言ったら、「実際に行けってことじゃないですか?」と返されて、まさか、そんな返事がくるとは思わなくて、わたしは返答に詰まってしまった。
そのときはうまく答えられなくて、でも本当になったらいいな、と思ったから、数日後に「この前の、本当に行ってくれるの?」と泣きそうになりながらたずねた。Aちゃんは、「それ、私も聞こうと思ってました。行きたいです」と笑顔で答えてくれた。
そんなこんなで実現した、初めての、2人だけのお出かけだった。
わたしは新しいワンピースを買って、前日にはジャケットにアイロンをかけて、1人でファッションショーをした。
自分でもわかるくらい浮かれていた。奥手な自分が、初めて誘ったデートだった。(わたしはデートだと思っていたけど、もちろんAちゃんにそのつもりはない)
日にちが決まってからずっと浮かれっぱなしだった。その日が近づくにつれて、Aちゃんは「すごく楽しみです!」と声をかけてきてくれたのも、素直で、かわいくて、うれしかった。
本当にそう思っているんだろうなということが伝わってくる嘘のない正直で純粋なAちゃんの言葉が、わたしは大好きだった。
Aちゃんにとっては友達に言うなんでもない「可愛い」という言葉を、わたしは一日中たからものみたいに抱きしめて、噛み締めていた。
Aちゃんにもっと可愛いと思ってもらいたくて、Aちゃんに会える日はお気に入りの服を着て、メイクも手を抜かなかった。
そうやって「可愛い」と言ってもらえるたびにわたしの恋心は増していって、無駄な勘違いをしてしまったりした。
今日、Aちゃんは、「実は付き合っている人がいるんです」って小さな声で教えてくれた。
おでかけの帰り道、わたしとAちゃん、二人しか乗っていない車で、ほかの誰にも聞かれることなんてないのに、小さな声で、ゆっくりそう言った。
顔がこわばるのが、体の力が抜けていくのがわかったけど、わたしは必死にハンドルにしがみついて、動揺していないふりをした。
車だとAちゃんの顔を見て話せないのが嫌だなあ、と朝は考えていたけど、このときばかりは、向かい合っていなくて、顔を見られなくてよかったなと思った。
そのときAちゃんがどんな顔をしていたかはわからないし、見たくもなかった。
同じように、わたしのこわばった顔も見られていないといい。
上手に笑えたか、声がふるえていなかったか、いつも通り話せたか、なんて答えたか、もう何も覚えてない。
頭がガンガンして、泣きそうになるのを必死にこらえて、ただ前をみていた。
「人に言ったの、〇〇さんが3人目くらいです」とAちゃんは言った。
なんでそんな嬉しくなっちゃうようなこと言うんだろう。
秘密の話を教えてくれるなんて、なんだか特別な関係みたいなのに。
その当時、わたしには仲良しのおじさんがいて、ホテルに連れて行かれそうになったことがある。
そんなつもりは全くなかったから、「わたしは女の子が好きなので行きません」と断った。
おじさんはだいぶ困惑していて、ホテルに行こうとするのはやめてくれたけど、「女同士なんて、そんなのうまくいくわけないじゃん」と言った。
わたしはすごく傷ついて、でも冷静になって現実をみてみたら、たしかにうまくいってると思っているのはわたしだけだな、と思った。
Aちゃんは男も女もどっちもいけると言っていたけど、わたしのことは距離が近すぎてそんなふうには見れないと言っていたこともあったな、と。
そんなことがあったから、多少は構えていた。
でも、付き合っている人が女の人だとわかったとき、そしてわたしの知っている人だとわかったとき、その人の名前を聞いたとき、このままハンドルをきって壁に突っ込んでやろうかと思った。
おじさんの「女同士なんて、そんなのうまくいくわけないじゃん」という言葉がずっと頭のなかで再生される。
付き合っている人が男の人だったら、まだ、諦めがついたかもしれない。
でも相手は女の人だった。女。女だ。もしかしたらわたしでもいけたんじゃないのかなって考えてしまって、諦めもつかず、でもどうしようもなく、ズルズルと引きずっていまだにAちゃんのことを考えている。
本物の恋だと思ったものは、こんなにあっさりと終わってしまった。
気持ちを伝えるでもなく、フラれるでもなく、なんだか曖昧なまま終わった。
まだ、思い出してはぽろぽろと涙をこぼしている。
まるちゃんというネーミングを採用した時点で、ラーメン好き増田を釣る魂胆が見え見えなのでは? マルちゃんのひみつ | 東洋水産株式会社 https://www.maruchan.co.jp/enjoy/himistu/