高1の秋頃、学校に行くのが嫌になった。
通学途中の駅のホームに立てば、ここから飛び降りたらどうなるのだろうと思っていたし、学校が近づくに連れて心臓が破裂しそうなくらい音を立てて速くなった。
頑張って通っていたけど回復の兆しは見えなくて、朝決まった時間に起きれなくなったり、学校のことを考えると吐くようになったりした
外に出れば誰か知っている人に会ってしまうかもしれないし、昼間家にいると近所の人に自分がいることが気づかれてしまうのが怖くて自分の部屋のカーテンを閉めきって、出来るだけ音を立てずに暮らしていた。
そのころの唯一の趣味といえば、イラク戦争から帰ってくる軍人がサプライズで家族を訪ねる動画をYouTubeで観ることだった。感動なのかわからないけどその動画を見てると泣けてきて、今思えば自分以外のことで泣く理由が欲しかったんだと思う。
何もしないで1日を過ごしてたから、学力も当然落ちていったし、友達もほとんどいなくなってた。
自分が荒んでいくのがわかってたけど止められなかった。現実が地獄なら地獄は何だ。どうせ今が地獄なら死んでも変わらないだろう。いや自分を地獄に引きずり込んだやつを殺してから死のうと思ってた。
そろそろ死ぬかと考えているときに学校から呼び出された。狭い教室に教頭と学年主任と担任と私の4人で、出席日数が足りないからこの場で退学か休学か選んでって言われたから退学を選んだ。どうせ死ぬつもりだったし。
その帰りの電車の中で1つの区切りがついたことだし死ぬための準備を始めようと思って、LINEの友達欄から死ぬ前に会いたい人だけを残して他を削除した。200人から40人ぐらいまで減らしたと思う。40人の中に消すか迷っている子がいて、中学の同級生で凄く仲が良かった子だった。その子のホーム画面がV6で、彼女の好きなものを見てから消すか判断しようと思った。今でも何でそう思ったのかは分からない。
退学が決まったその足でTSUTAYAに行ってV6のアルバムを買った。どれを買えばいいのか全く分からなかったから、Bestって書いてあるVeryBestを買った。
まぁ聞いたことある歌もあるなぐらいで飛ばし飛ばしで聞いてたけど、1つの歌で信じられないくらいに泣いていた。
「太陽のあたる場所」という歌だ。あれだけ自分はもう死ぬって決めてたのに、それを聞いたらやっぱりやめようと思ってた。図々しいけど、私のための歌だと思ったしこんな私でもV6は応援してくれるって思った。本当に図々しいね。
http://j-lyric.net/artist/a001a50/l00a954.html
それからずっとその歌を聞いてた。朝から晩まで延々と聞いてた。聞いても聞いても飽きなくて今度はV6の動画をネットで漁った。ライブが見たくてDVDを買いたかったけど、お金がなかったから飲食のバイトを始めた。朝に起きる理由ができた。車の免許は持っていなかったから歩きでバイト先まで行くようになった。健康的になった。稼いだお金を貯金しながら、過去に出てるV6の作品を買う日々を続けていた。
そんなときにV6のライブが行われることを知った。絶対に行こうと思って初めてファンクラブというものに入った。1人で行くのは寂しかったから、ホーム画面がV6の子を私から誘った。その子がOKしてくれて2人で行った。行きの電車から共通の好きなものの話題で盛り上がって凄く楽しかった。
ライブが始まった途端に私は号泣していた。私を救ってくれた人が目の前に存在している事実が嬉しくて泣いた。私を救ってくれた人たちが私を救ってくれた歌である太陽のあたる場所を歌っていて泣いた。MCで面白い話を聞いて自然に笑っている自分にびっくりして泣いた。ライブが終わる頃になると終わらないでほしいと思って泣いた。ライブからの帰り道にV6のライブの話をする人たちを見ていて、自分もその一部なんだと思えて嬉しくて泣いた。
2時間半ほぼ泣いていた。キラキラした会場の中で私を救ってくれた人たちが笑顔で私を救ってくれた歌を歌っていた。多幸感に溢れて泣いたのはあれが初めてだ。
V6が私を救ってくれた。私はV6をきっかけにいろんなことができるようになったし、いろんなことを知った。
朝決まった時間に起きれるようになった。部屋のカーテンを開けられるようになった。昔の友達に自分から連絡を取れるようになった。適度な労働は適度な疲労と充足感をもたらすことを知った。お金を稼ぐことが楽しいことだと知った。
V6が私を救ってくれた。私は高認をとった。周りから見れば凄く遠回りになったけど、高校も卒業した。カーテンを閉めきった部屋にいる高1の私には全部できなかったことだ。
相変わらず通学路だった道を歩くとドキドキするし、今度また同じようなことが起きたらどうしようと不安になる日もある。
だけど私は何度でも立ち上がり歩くことができることを私の人生をもって証明したい。だから私は今歩いていけるのか試している途中だ。太陽のあたる場所を目指して