今回は少年ジャンプ+
全部の感想は書く気起きないけれども、読切フェアの作品どれも意欲的だな。
プロットはとても好みだ。
意外性はないけれども、設定とキャラクターの人格、関係性を丁寧にこつこつと積み上げて、カタルシスに持っていくストーリー構成は、絵と相まって作者の真面目なモノ作りの姿勢すら見えてくるようだ。
まあ、それを加味しても、のんびりとした構成だという印象はあるけれども。
絵のほうも頑張るなあ、というか頑張りすぎているともいえる。
たぶんアレを100%として、それを70%くらいの労力で描いても評価はほぼ変わらない気がする(逆にいえば、それ位には水準が高いともいえるが)。
アニメでいうなら、1話とかで大した演出意図もないのに作画枚数多いシーン見たときの気持ちに似ている。
無駄な努力だなんていうつもりはないけれども、演出意図の希薄な部分での努力は割に合わないっていうのかな。
デジタルなのか、小さい何気ないコマですらすっごい描き込んでいるんだよね。
その反動なのか、大ゴマの特定のシーンとかはむしろ物足りないとすら感じる箇所もある。
演出として機能させるべき描き込まれた絵が、逆に裏目になっているとすらいえる。
まあ、そんな粗探しをしつつも、今回の読みきりフェアでは間違いなくトップクラスだね。
余談だけれども、『中川いさみのマンガ家再入門』でデジタル作画をやっている先生が登場したとき、拡大して小さいものすら描き込めて、気軽にやり直して描けるから、結果的に時間や手間は結構かかっているみたいな話があったのを思い出す。
案外、客観的に物事を見れる人間もそれなりにいたが、それでなお共同幻想に付き合うっていうのが、現状の過酷さを物語っているともいえる。
割と端的に語っているのもポイント高い。
狂言回し的な役割を、でしゃばり過ぎない範囲でこなせているともいえる。
アグニが「人は死んだらどこに行くんだ?」と尋ねるのは、まあ様々な意味があるんだろうね。
自分の近しい人たちの死だとか、自分の行動で直接にしろ間接的にしろ死なせてしまった人に対して思うところがあるのだろう。
死んだ先が良い場所だといわれて笑みをこぼすのは、多少なりに罪悪感が和らいだのか、或いは自分自身に対する死についても考えているのかもしれない。
「読切フェアの作品どれも意欲的だな」って冒頭に書いたけれども、これは例外ね。
プロットも微妙だしギャグもセンスないしで、読んでいて真っ先に「ああ……キャラ漫画だ」と思った。
いや、勝手な俗称だけれども、「キャラ漫画」っていうのは「設定したキャラを、何の変哲もない舞台にそのまま置いただけの漫画」、「プロットもその他の要素も微妙なのに、キャラだけで何とか体裁を成そうとしている漫画」のことね。
2つ目のエピソードでは既にマンネリ感を覚えた(読み切りなのに)。
他の読み切りフェアの作品だと『弓塚さんは今日も的外れ』や『さぐりさん探検隊』もキャラ漫画の傾向はあるけれども、ネタを多彩にしたり設定を作りこんでキャラに深みを持たせたり、構成なり演出なりを工夫しているのに、この漫画にそれはほぼないに等しい。
「キャラを作ってみたはいいものの、実際に漫画にして動かしてみたら思ったほど面白くならなかった」といった失敗をしている漫画はいくつかあるけれども、これもその一つだね。
舞台やその中でキャラクターをどう動かすか、演出するかってことが大事なのであって、キャラクターだけ作れば漫画が面白くなるわけではないのだ。
まあ私はこの漫画に登場するキャラ自体、そこまで面白いとは思わないけれどもね。
ただ、この漫画のウリがどこにあるかって考えるなら、キャラクターくらいしかないなあって思ったから、こういう感想になっちゃったけれども。