2016-11-17

私の祖母を知って欲しい

私の祖母はおばあちゃんというおばあちゃんだ

お団子頭にメガネ割烹着を着てかわいらしかった

穏やかで、誰に対しても優しく、誰からも好かれた

そんな人が居るだろうか?私の祖母がそうなのだ

である私が祖母を大好きになるのは必然

朝は祖母が作ったご飯を食べ、昼まで一緒に遊び、

徹子の部屋ごきげんようを観ながらたまに出前のそばを食べた

近くの公園駄菓子屋銀行スーパーへ。何処にでも手を繋いで

夕方祖母相撲タイムだ。私はおやつに買ってもらったグリコを食べる

ごはんは母の料理自分の家の風呂に入るが、寝床祖母の隣だ

寝つきが悪くしりとりをやり過ぎるとさすがに怒られた

学校忘れ物を届けてくれた。体調が悪いと心配して正露丸を持ってきた

朝ごはんが食べられない私の口許に祖母はご飯を運んだ

毎日祖母と一緒だ。幸せってこうゆうことだ

幸せが当たり前で、祖母存在が当たり前だった

成長につれ、あまり祖母に預けられなくなった

一人で風呂に入れるし、寝られる。晩ごはんだけ一緒に食べる

祖父介護もある祖母の手をあまり煩わせないようにするためだった

祖父が亡くなった。私は晩ごはんも一緒に食べなくなった

祖母と同居の伯母が一人暮らしを本格的に始めた

から知ったが、気丈な祖母は寂しいと一度だけ訴えたそうだった

たまの晩ごはん祖母の家に来たら味噌汁がしょっぱかった

伯母が言うには最近鍋を火にかけたままなこともあるらしい

同じことを何度も何度も言うようになった

伯母が物を盗むと私に怒りを訴えるようになった

人のことを悪く言う祖母を私は始めて見た

一人で夜家を出てしまうようになった

伯母と喧嘩する声が絶えなくなった

喧嘩するたび、施設にいくたび、祖母が遠くなった

笑ってくれない。怒鳴り、殴り、怒りを見せる

私を私と分からなくなっていく祖母から私は逃げた

泣くことしか思い付かなかった。10年近く私は逃げた

ある日から少し祖母が笑うようになった

誰のことも覚えてなくてもそれだけで救われたのに

認知症は進み、デイケアで他の人から離されるようになった

すぐに笑うどころか言葉も失った

伯母は施設に入れたくないと必死だった

夜は私も手伝うが、日中は伯母一人で介護

歩けなくなった祖母を自宅介護するには限界だった

言葉も発しない、表情も変えられない、食べることさえままならなくなって

退院を繰り返し、起きてる時間も減り

しょっぱい味噌汁から20年近く経った

ずっと昔の祖母を思い出さないようにしていた

写真も見なかった。声も思い出せなくなった

もう一人のおばあちゃんにご飯を食べさせている気持ちになっていた

から物が食べられなくなって一年病院にずっといる祖母

私は焦り始めた。認知症を知らないといけないと感じた

今の祖母と向き合わないと後悔するのではないかと思い始めるには遅かったのかもしれない。いや遅かった

認知症孤独不安否定されることで症状が進むことを始めて知った

物が盗られたと言われたら一緒に探してあげるのだそうだ

私は探してあげなかった

そんなこという祖母祖母ではない、病気のせいだと

病気祖母を受け入れなかった

病院で点滴をつける祖母に呼び掛けた。笑いかけた

祖母は前よりじっと目を見てくれた。体はどんどん弱っていった

いかけても涙が溢れるようになった

容態が悪いと言われて駆け付けたときは涙が止まらなかった

私だよ、分かる? と笑いかけたら

祖母は首を縦に振った。昔より薄い色の瞳で見つめながら

一週間後に祖母時間が止まった

私の祖母が、棺桶の中に消えていく瞬間

最後に見た顔が、私の隣で眠る顔を思い出した

認知症自分がなくなっていく祖母苦痛から解放されたはずだ

でも割りきれない私がいた

祖母の部屋で祖母を探した

祖母勝手に開けてはいけないと言っていた棚

何回も何回も糸に通して遊んだビーズがあった

祖母の好きな皇室の本もあった

祖母のおしろい、ファンデーション手鏡

なくなったと思ったメガネケース

台所に貼ってあるうすちゃけた祖母メモ書き

生まれたての私と抱き抱える祖母写真

道端に並ぶ祖母と私

祖母匂い、優しい声、丸い背中

私の祖母は働き者で、誰にだって優しい

働きながら母と伯母を育てたキャリアウーマン

生命保険営業の話だって優しく聞いてあげるのだ

私や姉がいじめられたら何処からか助けに来てくれる

近所の子供たちのお世話を喜んでしていたほど子供好きで

通りすがり赤ちゃん祖母を見るとにっこり微笑んだ

私の祖母を誰かに少しでも知ってもらいたい

祖母存在していたことを知ってもらいたい

私の愚かさ、過ちを知ってもらいたい

私の自慢の祖母を知って欲しい

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