2014-06-06

余り

anond:20140603175840

(右京と紅つばさについて)

いただいたコメントを参考にしていますありがとうございます。大変嬉しかった。

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右京は、登場こそ遅くて、良牙、シャンプームースときてその次だろうか、九能兄妹は外様という感じがするんで数えないけど。だけど相当に重要キャラクターで、キャラクターとしての彼女竜之介の子なのはやっぱり間違いなくて、ああ、思い入れ深い人たくさんいるだろうから釈迦に説法するはめになるところ多々あるじゃろうと思うと恥ずかしいが続けるけど、しか竜之介が背負っていた因業を下ろして軽やかになってる感じする。竜之介社会的な知識が無かったから親父と暮らさざるを得なかったと言えないことない。常に親父と組み合わされていて、そうじゃなければキャラクターとして駆動しづらいがためにその状況に作者によって留め置かれたようなところきっとある。それに対して右京は手に職を持っていて、親父の影もなくて子供の頃を回想する場面に出てきたきりだったろう。

その親父というのがそもそもまだ未就学児らしき右京を、あるいは葛藤の末かもわからん、のっぴきならんかったのかもわからん、描かれてないから知らんが、乱馬の嫁として乱馬の親父に渡さんとするような人物で、しかし許嫁という、なんだろう、制度と言うんだろうか、を駆使する物語である以上はそうした人物も出て来ざるを得んし、こうした状況に自身の人生投影する人は必ずいるだろうしそうじゃない人は遠くのこととして可笑しみ感じるなり同 情するなりすれば済むんで文学娯楽どちらとしても間違っていないと思うが、ともかくそうした娘への癒着の弱い父であってその点竜之介の親父とは真逆に設定されてるんではある。やっぱり竜之介の不幸は親父からの支配によってのものもの竜之介への償いを果たそうとして右京を造形するならばそうなるのだなと、てめえの勝手な思い込みなれど合点のいくところ。

とは言え、父からの支配を右京が受けてないかといえばそうじゃないかもしれん。右京は乱馬に執着があるからこそこの物語に登場する。初めに持っていた憎しみと、それをネガティブとしたら転じてポジティブしかし恋情とかと一口に表わせん感じする思いとをひっくるめて、執着って言い方してる。その乱馬への執着っていうのは親父から与えられたものだと思えなくもなく、それっていうのは右京自身の能動性みたいなものをなめた見方だとは思うけどとりあえずそうとして、だとしたら竜之介が背負っていたものからまるっきり軽やかになってはないのかもしれない。

しかし、乱馬への執着は断たざるを得ないのだ。この漫画はやはり乱馬とあかねが結ばれて終わるしかないんで、右京はキャラクターとして作られた初めから宿命として乱馬と結ばれない。でもそれは同時に親父から与えられたものから解かれる、背負っていたもの下ろして軽やかになるってことでもあるんで、竜之介から右京へと受け継がれた不幸をこの物語の結末において返上できるように作者によって仕組まれていたんじゃないだろうか。返上を受けたのは他ならぬ作者だ。

それを裏として、竜之介のもうひとりの子であるあかねが乱馬と結ばれるのを表としたら、竜之介に有り得たふたつの道はふたりの子孫が完遂したぜみたいな言い方ができる、かも。

ただこの話から抜け落ちてるのはあかねと結ばれた乱馬を右京が思い続けるのではないかという想像で、しかし話が進まなくなるから無しにしてしまった。

ところで竜之介自身はどうだったのだったか。巻が尽きんとする頃に親の決めたフィアンセである渚という自身とは対称的な女装男の子が出てきて、仲たがいして仲直りして何か落ち着きどころという感を読者は与えられる。ただ行く末はほのめかされたとすら言えないんで、それは読者それぞれの想像を豊かにするためでもあろうがあるいは作者自身決めかねたのかもしれない。竜之介が幼少から好きになるのは女の子ばかりだったと描いてもいるのだしさ。だから恋人や伴侶とも親友理解者とも好敵手ともなり得る可能性を持った渚の造形はすげえ見事なんだって今思った。

そうだ、おれは、渚の話からつばさの話に転びたかったのだ。

つばさ、あの、右京の通ってた高校同級生で、右京を追っかけて来る子、ポスト自販機の扮装して「突撃ーっ!」って叫んではどこやらにぶつかってる子。種を明かせば女装した男の子で、高校っていうのは男子校だったのだけど男装して通っていた右京が女だということには気づいていて、あくまで女の子として好きだったということで、やはり異性愛者だ。ただ読者がどう思わされるかは二転三転するんで、順に、女性異性愛者、女性同性愛者、男性異性愛者、という具合、何か明かす度に変態とか変態野郎とかオカマとかとあかねや乱馬の言で発されるのは、彼がへこたれないふうだからそう見えないが気の毒なんだぜ。ただ、そうした呼ばれ方する人物があの明るく楽しい話 に出てることはやっぱりきっとすごくいい面があったろうし、まだこれからしばらくもあるかもしれない。いや、どうだろう。 さて、それで、その彼は乱馬と共に渚の子孫だと言えるかと思う。乱馬はこの際はどうでもよいのだけど。では紅つばさと右京とが結ばれるのでもよかっただろうか。いや、その結び付きが果たす役割は乱馬とあかねが果たすだろう。右京には右京の役割があるのだから、紅つばさはそれを守るためにどうなるべきか。

この漫画キャラクターはおしなべて一途だ。おもな人物はもちろん、九能ですらあかねと女の乱馬というふたりに対してだけど一途なのだし、パンスト太郎も八宝斉に一途と言える。一途でなければキャラクターとして力を失ってしま補填が要るようになりその如何は書き手読み手どちらにとっても難しく子供向けではないはずで、知識としてか思考の結果かおそらくどちらもあってのことと思うけど作者はそれを分かっているのでしっかりと倣う。

右京への一途な思い、強い執着を持って登場したかに見えた紅つばさは、早々に女の乱馬に惚れあかねに惚れキャラクターとして死にその後はもう登場しない。その死はしかし先に書いた右京のキャラクターとしての出自や来たるべき解放を思えば無ければならないものだ。しかし誰なら殺してもよいかと選択した結果があのように造形された紅つばさであることはあるいは差別意識の発露と言って言えんことはないだろうが、おのれをよく省みてからそのようなこと強く言える人どれだけいるのかと言えばわずかだろうし、その時代特に少年誌の内にいる者としてまっとうなバランス感覚だったんだろうとも思われ、現在から裁くのはおそらくよくない。でも話し合いはしたい。

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    • anond:20140603175840 ooo

    • anond:20140603175840 (右京と紅つばさについて) いただいたコメントを参考にしています。ありがとうございます。大変嬉しかった。 ------------ 右京は、登場こそ遅くて、良牙、シャンプ...

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