2013-08-24

超音速のMS少女から20

月刊"Model Graphix"誌上で、もっとエクスキューズの少ない(というか皆無の)ページは明貴美加の『MS少女である

ミリタリーやオート・モデリングはいわゆる"大人のホビー"としての正当性を主張し、

キャラクターモデリングは"メディアミックスがどうたら……"と詭弁をたれることが可能(僕のことだ)でも、

MS少女』だけは説明が難しい。

「キャッ♡♡」の前には、どんな言い訳も成り立たない。一網打尽。万事窮す。


ということはすなわち、『MS少女』が、模型雑誌といういわゆる"病気"の世界の、

そして僕らの欲望の、もっとも"生"な部分であるということだ。

MS少女にの生理的拒否反応を示す"良識的な"ミリタリー・ファン(じゃあ自衛隊にでも入ればいいのに…)が多いのも、

明貴美加の『MS少女』がその部分を、無邪気に暴露してしまうからに違いない。

(そして明貴美加の『MS少女』の存在の真の凶暴性とは、

社会派でもある宮崎駿御大と同じ雑誌に連載されているという事実なのである。)


この8年の間に、もともとの『ガンダム』というブランドも、あの手この手で消費され続け、

TVアニメーションとその周辺のトレンド自体も二転三転している。

それどころか、ビデオアニメゲームソフトメディア自体が拡散しつつある。


しかし、メディアバリエーションは数々あれども、

その内容はつまるところは"メカコスチュームつけたキレーなネーちゃん"に尽きてしまうのである

とくに最近は、後者さえあれば、前者は"魔法"や"スポーツ"でも代用できる。

前述したとおり、明貴美加方法はあまりに"生"なので、

世代にかかわらず「ファンである」と口にするのが気恥ずかしい。

だが、一見大人向け…とかシリアステーマ(もし、あれば…だが)の作品も、

それを抜いてしまえば、つまるところ残るのは、『MS少女』と同じなのだ

いや、それどころか、ヤマトと森雪、ガンタンク死語)とセイラさん、

ガンシップナウシカナイト・オブ・ゴールドラキシス…、

過去の名作/ヒット作も実はこの鉄則を守り続けているのであった。

まり、『MS少女』の存在は、一見TVアニメ副産物のように見えて、

明貴美加自身が知ると知らずとにかかわらず、

この8年間のアニメーションというジャンクカルチャーの、

実はかなり正確な批評として機能していたことに気がつかなくてはならない。

MS少女』を貧しいと批判する者は、

実は(量的にはともかく精神的に)かなり貧しい我々のアニメ文化を、

知らず知らずのうちに語っているのである

そして、その文化の本当の名は"特筆することのなさ"という文化であり、

そこに童話の『裸の王様』の中の聡明な少年のように君臨しているのが

明貴美加と『MS少女』だという印象なのである

最終的に笑われているのは僕のような

"特筆することのなさ"にまぎれもなく属しながら、

"特筆することのなさ"すなわちストレートさの意味と力を

理解出来ない者なのかもしれない。



村雨ケンジ「"特筆することのなさ"の普遍性

超音速のMS少女 明貴美加ファーストイラストレーションズ』(大日本絵画、1994)より

http://www.amazon.co.jp/dp/449922635X

(ただし、ブラウザ上での可読性を考え、引用者が適宜改行を加え、

段落間にスペースを挿入した)


ストパン」「ガルパン」「艦これ」とミリタリー美少女ものが大流行で、

ラノベでも「IS」分校が毎月のように刊行され、

あるいは宮崎御大妄想だだもれな「風立ちぬ」が絶賛公開中の現在に、

この文章を読むと、なんかいろいろ感慨深く思えたので引用

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