運動会の競技は基本的にローカルルールが採用されることが前提となっているので、
しっかりとルールを確認したうえで、使えそうならぜひオススメしたい。
これは俺が中学2年のときの話だ。大玉送りの攻略法を発見した。
例年接戦だったこの競技において、俺の軍は圧倒的な成績を収めた。
まず、大玉送りをご存知だろうか。知らない人もいるかもしれない。
1チームの人数は数人ではない、大勢だ。
大勢であればあるほど安定感が失われ、ランダム要素の強い競技となる。
クラス単位なら30人くらいから、全学年でやるなら100人くらいになるが問題ないだろう。
その頭上に大きなボール、大玉だ、を投げ入れ、列の前方から後方まで手で送っていく。
途中で列からこぼれたら、近くにいるやつがこぼれた位置にスローインして再スタート。
これが基本だ。大玉を送るから大玉送り。シンプルなネーミングだ。
その最後尾にいる二人が大玉を転がし、また最前列まで持っていき、再び送っていく。
これを数周繰り返す。うちの学校では5周ほどだったように記憶しているが、
大玉を送るスピードだけでなく、その後の運ぶスピードも重要なファクターとなる。
俺はここに目を付けた。
別に転がさなければいけないというルールはない。(俺の中学の運動会では、だ。他の学校でどうかはわからない)
おそらく大玉転がしという別の競技とネーミングが似ているから、それに引っ張られたのだろう。
例年どの軍も、なんの疑いもなく大玉を転がして運んでいた。
二人で大玉を転がすのはなかなか骨で、
息が合わないとあっちへ行ったりこっちへ行ったりと、右往左往するはめになる。
だが、転がさなければいけないという決まりは無い。であれば、転がさなければいい。
最後尾の運搬組に配置されていた俺は、一緒に運ぶ相手にこう伝えた。
「持てばよくね?」
持って運ぶ。これだけでいい。これをするだけで大玉を運ぶ作業は一気に短縮される。
持って運ぶと、右往左往せず直線的に運ぶことができるうえに、ほぼ全力疾走に近いスピードで運べる。
転がす場合だと転がす動きと走る動きが違いすぎて5割程度のスピードしか出せないため、これはかなりのメリットだ。
この方法を編み出し、運動会本番まで隠した俺の軍は、他の軍を圧倒した。
他の軍のメンバーは、まるで鳩が豆鉄砲を食ったようような顔をしていた。何が起きたかわからないと。
それも無理はない。競技中に他の軍を見ている余裕はそうそうあろうはずもない。
また、人の列が壁となることで運ぶ姿をある程度隠すこともできるからな。
そうは言っても、完全に隠し通せるわけではない。
徐々に「あいつら持って走ってたぞ」「マジ?ずるくね?」という声が出始める。
しかしこれは大玉送りであって、大玉転がしではない。運営委員会の判断は「問題なし」だった。
今風に言えば異世界転生ものの主人公になったような気分だった。
まあ、もてはやされたのは5分ほどだが。
あるいはイノベーションと言われるものはあっという間に広まるのが世の常だ。
iPhoneが流行ることで急速にスマートフォンが普及していったように。
翌年、大玉を運ぶ攻略法は他の軍もこぞって真似するようになった。
それも、後発ならではの応用をされて。
俺が発明した大玉を運ぶ手法は、最後尾組である二人が大玉を持って走るという方法だ。
しかし、持てるのならば二人である必要はない。それに気付いた天才がいた。
大玉はその名の通り大きい。二人で持つのはごく自然なことだった。
だが、軽いのである。当たり前だ。人の頭上を送るものなのだから、重くては怪我人や死人が出てしまう。
二人で走るより一人で走ったほうが、加減がいらないので速い。
ごく単純な話だが、これに気付いた天才は一人だけだった。
その年、その天才が率いる敵軍に、我が軍を含む他のすべての軍は惜敗した。
「一人で持っていいの?」「もう片方、後ろ付いていってるだけじゃん」と。
実質一人で転がしているということはよくある話だった。
ただ単に仕事をするのが面倒なだけなのではなかろうか。
この年、俺は3年生。卒業した翌年にどうなったのかはわからない。
この調子なら翌年はほぼ全軍が一人で持って運ぶ手法を取ったことだろう。
大玉に穴を開けてズボッとかぶるようにして、もうひとりが手を取って走るのはどうだろう。 頭の上で送るときに、手はボールが落ちないようにするだけで、推進力は頭で与える。 頭を...
並んでるとこで適度に背の高いやつ(バレー部員)配置してにトスまかせればええやで