私が5歳になる頃には完全に家庭は崩壊していて、父には複数の愛人がいたし、母も家庭の外に恋人がいた。俗にいう仮面夫婦というやつである。そんな環境で暮らしているうちに、私は人が人を愛するということが分からなくなってしまい、何度か男性と交際をするもうっすらとした男性への嫌悪感から関係を進展させることができずに破局を繰り返し、気づけば大学を卒業。25歳になっていた。
この頃私は精神的に非常に不安定になっており、さらにコロナウイルスによる自粛・一人暮らしで自分の精神の安定を保てなくなっていた。そんな矢先に「話し相手が欲しいだけならこれをやれ」と勧められたのが、ヤリモクアプリと名高いTinderだった。不安定な時とは何にでもすがりたくなってしまうもので、23年ものの男嫌いのくせにまんまと登録してしまったのである。
数ラリー続けばセックスの打診が来てしまう猿の惑星であったが、そんな中にも普通にチャットができる相手はいるもので。ひとりの奇特な男性とたわいもない趣味の話をだらだらと続ける日々が続いた。
2週間ほどやりとりが続いたある日、Tinderをやめるのでラインを交換しようと彼から提案があった。自分のネットリテラシー的にはNGな提案だったのだが、彼とのやりとりができなくなる方が悲しいと思い、提案を承諾した。
それからも毎日何を食べたとか、今日はどこに行ったとか、そんな日常を報告し合うやりとりが続いた。
不思議なことに、これだけ今まで男性に対して不信感を持って接してきたというのに彼とのやりとりは嫌な感じを持つこともなく、むしろ返信が遅いと心配になってしまうくらいに自分にとって必要なものになっていた。顔も見たことがない、本当の名前も知らない相手に対して、人生で初めて人を好きという感覚を覚えていた。
ある日、電話で「あなたのことが好きだと思う」と伝えた。彼は「嬉しい」と言った。そして「自分のことを知ってほしいから顔を見せるよ」と言うので、「顔が悪くても好きだし、良ければもっと好きになってしまうから送らなくていい」と拒否したのだが、数分後に画像が送られてきて、そこで初めて彼の顔を見た。本名も知った。
それから数週間して、一世一代の決心で彼と初めて対面し、間も無く交際に発展した。過去の恋愛経験を聞かれた流れで、男性が苦手であることや好きな人と付き合うのは初めてで勝手がわからないこと、これまで男性経験もないことを伝えた。
彼はキスの仕方もわからない私を馬鹿にすることもなく、ゆっくりとスキンシップを教えてくれた。キスをすることが好きになった。
キスやハグと違って、体に触れられるのはかなり受け入れ難かった。胸を触られるのすら恥ずかしくて何度も拒んで、一晩かけて慣らされた。よくあんな面倒なことを根気強く続けてくれたと思う。
そうやって何度もチャレンジして初めて彼とセックスをした時、僅かな痛みと、びっくりするほどの幸福感があって、本当に素敵な人と出会えて、抱いてもらえてよかったなあと心の底から思った。暇つぶしで始めたことから、こんな出会いもあるものなのだなあとしみじみ感じた。
そこから1ヶ月ほどでまた二転三転この男性とは色々あったが、現在も交際は続いている。
交際経験が浅いために迷惑をかけることもあるけれど、それも彼はできうる限りで私を受け止めようとしてくれるので頭が上がらない。
自分が辛い思いをしたので、一生結婚はしないし、子供も作らないと決めていたけど、今は彼との子供が欲しいなあなんて考えたりもする。他人のことを愛してるなんて一生分からないと思っていたけど、彼に触れている時に感じる暖かさとか、彼のことを思い出すたびにこみ上げる愛しさとが、そういうの全部が愛なのかなと思う。
そう、それが愛だよ!おめでとう~!いい人に出会えてよかった! ただ愛を持続するのは、愛をはじめるのより100倍大変なので、今の気持ちを忘れないで~。
https://anond.hatelabo.jp/20210412004717 これと同じ人?