2020-10-05

サン・ジュニペロ』ラストシーン凄さ

サン・ジュニペロ』はネットフリックスにあるブラックミラーっていうSF連作ドラマの一編なんだけど、終わり方というかラストシーンマジですごい。

以下巨大ネタバレ

 

主人公シャイ女の子ヨーキーと陽気な女の子ケリーの2人組。ディスコ出会った2人は(同性)恋愛関係になるが、価値観の相違からすれ違いが…っていうようなストーリーが展開するんだけど、中盤で舞台デジタル世界だったことが判明する。

シャイなヨーキー自動車事故植物状態になった婆さんで、陽気なケリーは夫と死別して終末ケア老人ホームで過ごす婆さん。

どうせ植物状態だし、もう死んで肉体を捨ててバーチャル世界移住するぞ!と思ってるヨーキーVSバーチャルな「天国」に行くことなく死んだ娘と夫に殉じてオールスタイルの死を望むケリーっていう対立軸で、2人の感情のぶつかりあいストーリーは最高潮を迎え……ないんですよね。

なんでかっていうとラストシーンがそれまでの話のドラマ性を1万倍とかにしたものをワンカットでぶち込んでくるからだ。

エンドロールでは、結局夫や娘に(すぐに)殉じることはせずバーチャル天国に行くことを選択したケリーがヨーキーと一緒にサン・ジュニペロの享楽的な街ではしゃぎ回る様子が映し出される。バックに流れるテーマソングは"The Heaven is a Place on Earth”、「天国は地上にある」ってのはなかなか内容とあった選曲ですね、と思ってるところで、サン・ジュニペロ、地上の天国提供しているテック企業の様子が突然出てくる。

豆粒くらいの大きさの、表面が明滅するチップ機械が運んでいる。このチップこそがバーチャル世界への移住の要で、これをこめかみにつけた状態死ぬことで意識チップに移動するという寸法。運ばれているのは他ならぬケリーとヨーキーチップだ。

ロボットアームが2人のチップを”San Junipero”と書かれたラックにはめ込む。チップの表面で明滅する光は、電子天国ではしゃいでいる2人の表情にも重なって見える。

指先くらいの大きさの電子機器に閉じ込められて、偽物の「天国」で暮らすのか、ゾッとしないけどまあそれも幸せなのかな?というような思考が渦巻く。

そこでカメラがグッと引くんですよ!

そしたらね、もうバカみてえな数のチップあんの。1万とか2万とか、そういう数この部屋にあって、たぶん他所もっともっとあるんだろうと思わされる。そして全部チカチカ光っててさ、もうどれがケリーとヨーキーかなんか分かんねえわけ。

そこで"The Heaven is a Place on Earth”ですよ。サンジュニペロは天国みたい、ええとこよ〜ってくらいの温度感で受け止めてた歌が、ここで一気にまた違う意味に聞こえてくるわけだ。

人類テクノロジーを使って天国をこの世に築いてやったぞ、ここが俺たちの天国だ、文句あっか!そういう、生命賛歌であり人類賛歌であり、不気味とかい矮小感想は瞬間的に吹き飛ばされる。

サーバールームの点滅なんていう無機質なもの代表みたいなものが、これまでのエピソードによって圧倒的な生命賛歌に見えちゃうわけですよ。

俺は生命賛歌なんて嫌いなんだけど、あのワンカットを見たときちょっと涙ぐんでしまった。そういうパワーがあるんだよな。

だいたい、構造としてズルいんですよ、サンジュニペロは。

1のドラマを60分くらいにわたって見せた後、ラストのワンカットハイ×10000でーす!お前らがここまで観てきたものと同じものが何万とここにありまーす!っていうのをぶっ込んで終わる。そんなんアリか?

マジで凄いと思うんですよね。

俺はドラマ部分そのものは言うてそこまで好きじゃなかったんだが、ラストシーンの倍率でやられたよ。アレはずるいよ。

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