2020-07-08

[] #86-13「シオリの為に頁は巡る」

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センセイに言わせると、これは「いずれ起こりうる問題」だったという。

この一件は非常に突発的なもののように思えたが、水面下ではフツフツと沸きあがっていた問題だった。

その沸点突破したのが偶然あの日で、それに巻き込まれたのが俺というだけ。

結局、この一件が決定打となって栞サービスは終了を余儀なくされた。

店が繁盛してハイになっていたマスターも、さすがに暴力沙汰が起きたとあっては目を覚ますしかない。

「店の雰囲気も悪くなる一方でしたし、対処せざるを得えんでしょう。電車には座席と空調を、ホームには自販機立ち食い蕎麦を、トラブルにはルールマナーを。それが無理なら運営なんてしない方がいい。場末のサ店にも同じことは言えるでしょう」

サービスがなくなると客足は自然と遠のき、店には古参常連けが残った。

こうして、このブックカフェは以前の穏やかな雰囲気を取り戻したんだ。

個人的にはホッとしたけど、バカバカやったせいで台無しになるってのも気の毒な話ですね。もしサービス利用者健全人間ばかりなら、終わるにしても“こんな形”ではなかったでしょうに」

「散々オレらが忠告した結果の“案の定”だから同情はしないけどな」

「あのサービスは人々の漠然とした発露欲をくすぐり、悪意の種を蒔く播種機だった。その側面があった以上、ああなることは必然だったといえる。マスターにとっては不本意な話かもしれませんが?」

タケモトさんは悪態をつき、温厚なセンセイも心なしか当たりが強い。

そうはいっても、未だ常連を続けているから情は残っているのだろうけれど。

少なくとも、この件で素っ気なくなった奴らよりはマシだ。

しかし、パタリといなくなりましたね、あいつら。サービスやめたら文句つけてくると思ったけど」

「別ん所でよろしくやってるようだぜ。隣町のネットカフェで、似たようなサービスやってるみたいで」

「はあ、懲りないなあ」

あのサービスが悪意を育てる手助けをしたのは確かだけど、種そのものは彼らが元から持っていたものだ。

土壌があれば根付き、そこで実となり花となる。

そこから更に種をばらまき、花粉は風に乗って飛んでいくんだ。

それは超自然摂理であり、今回たまたまマスターの店が狙われたってだけなんだろう。

花粉症の人間には傍迷惑な話だが、これからも彼らは栞のためにページを捲り、巡らせていくのだろう。

ブリー☆ライダー

歌:端畑官氏


何もないな 誰もいないな 不愉快エントリ

階はただ延々続く 話しながら 謳いながら

スタートもゴール地点も ツブヤキましてやマトメなんて

いりませんNONON 僕ら

ジャンケンなら 志村いわくグー

主義主張を ノートに書き込んで

あの向こうの もっと向こうへ

僕らの栞を 僕らの言い分を

大げさに言うのならば きっとそういう事なんだろう

何もそんな 主語デカいこと 長々と書かれても

読めません 全然 だから 

気にしないゼ 自分語ろう

気を抜いたら ちらりと わいてくる

明後日の方向は ヤブヘビだって

僕らは熱さを 僕らは付け込みを

お気持ちの表明と けして枯れない舌先を

幅広い互助会を くだらない空目

まるで笑えぬダジャレを うまく逃げ抜くセイトーカを

憚らぬ思想を すべてを嘆く独白

大げさに言うのならば きっとそういう事なんだろう

誇らしげに言うのならば きっとそういう感じだろう。

(#86-おわり)
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