彼女のことが忘れられない。自分には彼女もいる、何不自由ない生活をしているのに、彼女と過ごしたあの日々がどうしても忘れらないのだ。
大学3年の秋、友人からマッチングアプリを紹介され始めた。友人はかなりのプレイボーイで、マッチした人と会ってはセックスをするような人だった。当時の自分はまだ素人童貞で、マッチングアプリを始める数ヶ月前に風俗で初めてセックスをして童貞を捨てたばかりだった。そんな友人を自分は羨ましく思っていた。
SNSでの会話には慣れていたので、友人からのアドバイスを受けながら自分も複数の人と会い、素人童貞も捨て、経験人数は一気に増えていった。しかし自分のセックスは毎回初めて会う人としかしなかったため、上手くなかった。だからか、もう一度同じ人としたくても切られてしまっていた。
セックスが上手くなるためにバイト先で彼女を作った。特に好きでも無く、やがて彼女には飽きるようになった。マッチングアプリをしていた頃よりも刺激が無かったのだ。
以前よりセックスには自信がつき、何人かと会い、セックスしたが、それでも固定のセフレができることは無かった。
そんなある日、アプリでマッチした一人の女性からメッセージが届いた。その内容は、自分を知っているかのような内容だった。驚いてすぐに返事をすると、そのメッセージを自分の友人が送っていたことが判明した。その女性は、自分の友人ともマッチしていて、すでに家に行き、セックスをしていたらしいのだ。
最初は面白半分で、「自分もこの女性とセックスしたら、穴兄妹になって話のネタになる」と思った。彼女はアプリをヤリモクで使っていたので話は早かった。
むしろ早すぎるくらいでこちらが戸惑った。自分の写真も確認せずに家に上げてくれるというのだから。それでも自分の性欲と好奇心があって、すぐに家に行く約束をした。
そして当日。プリンが欲しいと言うので、近くのコンビニでプリンを2人分買い、そこに車を停め、少し歩いて家に向かった。
彼女はアパートで一人暮らしをしていた。越してきたのはごく最近だと言うのに、まだ3回ほどしか1人で寝てないというぐらい、男をひっきりなしに連れ込んでいたらしい。自分も友人も、その中の一人だったのだ。
2人でプリンを食べ、ゲームをした。女の子なのにゲームが上手くて、自分が手加減無く異性とゲーム出来るのが新鮮で嬉しかった。
しかし、自分の頭の中はセックスのことしか考えていなかった。どのタイミングでセックスをしようか、そう考えているうちに時間は過ぎていった。何かのタイミングでベッドに入ることができた。彼女は少し散歩しようと言うが、1秒でも早くセックスがしたかった自分は、反対側を向いていた彼女を自分の方に向けさせ、キスをした。すると彼女にもスイッチが入ったのか、何度もキスをし、そしてセックスをした。
部屋の電気を消して、暗い部屋で彼女を見た時、大学2年の時に付き合っていた彼女を思い出した。似ていたのだ。その元カノとはキスまでしかしておらず、セックスをする前に振られてしまっていたのだが、本当に好きで半年間忘れられないくらいだった。そんな元カノとセックスしているような感覚に陥り、何故か妙に興奮した。
朝、目覚めてもう一度セックスした。その後シャワーを借りて、帰ることにした。
いつも通り、社交辞令のようなLINEのやり取りをし、今回もこれで終わりだと思っていた。
もちろん自分は続けばいいなと思っていたが、いつも相手にされていなかった。
しかし彼女はLINEを続けてくれた。そそれから徐々にプライベートのことを話すようになり、何度も彼女の家を訪れるようになった。
彼女の家に行く時はいつも決まってゲームをして、セックスをする流れだった。彼女はいい匂いがした。キスをすると唇は甘く、顔からもいい匂いがした。
そんな彼女とは、たまに外に買い物に行ったり、一緒にご飯を作ったり、たまに贅沢したりもした。
本当に幸せな日々だった。
彼女と何度も会うようになって、アプリも開かないようになっていた。彼女ももうアプリが必要ないと言ってくれていた。嬉しかった。初めて自分を認めてくれるような、受け入れてくれるような、そんな存在の彼女がいてくれることが本当に嬉しかった。
彼女は年下なのに真面目に働いていた。彼女の家に泊まると、自分よりも早起きし、弁当を作り、そして仕事へ行く。いつも寝たフリをしてそんな彼女を見ていた。ベッドに寝ながら朝の準備をしている彼女を見るのが好きだった。
彼女は自分のことをとても褒めてくれるし、とても尽くしてくれていた。そんな彼女の優しさに甘えていたし、申し訳ないといつも思っていた。自分には無い優しさ、真面目さを彼女は持っていた。
彼女とは、お互いに恋人ができたら、この関係も終わりだね、と常々話していた。
そんなこと、当分先の話だと思っていた。
ある日バイトをしていると、声をかけられた。その女性と何度かデートを重ね、告白をされ付き合った。もちろん嬉しい出来事だった。可愛かったし、いい子だった。
ただ、付き合うということはセフレの関係を終わりにしなくてはいけなかった。
告白されて付き合った次の日に、僕は喜んでセフレに報告した。セフレもそれを祝ってくれた。
僕はセフレが心配だった。セフレが自分に好意を寄せていたのは感じていたからだ。なんなら自分もセフレが好きだった。けど、この2人の先に恐らく未来は無かった。アプリで出会った関係、セフレから始まった関係、幸せだけど、今が楽しければ良い、という感じがお互い分かっていたのだと思う。
自分が急にセフレとの関係を切ってしまったのだ。なんの前触れも無く。
セフレはなんと思っているだろう、悲しんでいるだろうか、ちゃんと会社へ行けているだろうか、それともすぐにアプリで新しい男とセックスしているだろうか、そんなことばかり考えていた。
離れて初めて自分がセフレのことばかり考えているのが分かった。ああ、好きだったんだ。けどもう遅い。それに2人に未来は無かったんだ。そう思うけれど、忘れられなかった。
あの幸せな日々を失ってしまったことが自分の中で本当に辛かった。
彼女を裏切ってしまった気持ちでいっぱいで、彼女にもう一度だけ会って、謝りたかった。
自分は今また彼女に連絡しようとしている。付き合っている人がいるにも関わらず、彼女に連絡することはもちろん許されることではない。けど、もう2度と会えなくなる前にもう一度だけ会いたい。
彼女を忘れてこの先ちゃんと生きていけるだろうか、好きな人ができるだろうか。
あわよくば彼女にこの記事を読んで欲しい、いつか見つけて欲しい、そんな気持ちで書いてしまった。見つけてどうなる、それも分からないが、今の気持ちをここに書いておきたかった。少しは落ち着いたので、やはり書いてよかった。
セフレを愛おしいと思ってはいけないというあの言葉が今になって染みる。
好きだったなあ。
終わり。